16 / 60
第2章 ちびっこ怪獣三匹、事の次第を知る
1
しおりを挟む
白く染まった視界が戻ると、光太は石の板に宿る小さな光のひとつになっていた。
自分自身が宿ったからか、その他の理由か。不思議と、石の板に刻まれているのが文字で、いろんな単語の羅列であることが理解できた。
意味のある文章ではなくただ、能力の種類がたくさんたくさん並べられているだけ。
光太が宿っているのは、『神速』を意味する単語だ。
ユーゴは『知性』。
ケースケは『屈強』。
他のみんなも、それぞれがそれぞれの個性にあった単語に宿っている。
宿った単語の能力を取り込み、光太はふわりと落下する。
うんと高い場所からどこまでもどこまでも落ちる感覚は、魔方陣らしきモノに引きずり込まれた直後の、真っ青な空の真ん中でひとりきりで落ちてゆく感覚と同じだった。
ああ、アレはコレだったのかと、唐突に理解する。
あの時光太は、光の渦に連れられて、この石の板の中を滑り降りていたのだ。
そうして、石の板に刻まれた『単語』から、『能力』を受け取っていた。
いまの光太には、たくさんの『能力』が与えられている。
だって、『光』は石の板から『能力』を受け取り落ちてゆく。
行き着く先は--台座の上の水晶玉だ。
するりと中に滑り込み、落下の勢いのまま、くるくるくるくる中で踊る。
躍りながら光は、『神速』だけでは足りないと考える。
『神速』は、素早く動くというだけだ。
素早く動くには、『頑丈』な体がいる。
『頑丈』な体を『強化』すれば、もっと早く動けるようになる。
何者にも邪魔をされることなく。
速さに潰されることもなく。
誰よりもなによりも素早く動ける『能力』を。
集める『能力』を選ぶのは、空っぽになった水晶玉の中に、一番最初に滑り込んだ光の特権だ。
たくさんある単語の中から、欲しい『能力』に宿った光を呼んで、水晶玉の中を満たしてゆく。
どんどんどんどん仲間を呼んで、ぐるぐるぐるぐる渦を巻く。
《もっともっと》
《たくさん、いっぱい、集まらないと……!》
溢れるくらいの能力を集め--……納める『器』を、迎えに行って、連れてこないといけないから。
ぎゅうぎゅうぎゅうぎゅう押し合い圧し合い。
もう無理! ってくらいの能力を詰め込んで。
溶けて混ざって一緒になって。
それでもまだまだ足りなくて。
水晶玉がはじけるくらいたくさんの仲間が集まりひとつになって--溢れてはじけ出ようとした、その直前。
『コウちゃん、危ないよ』
『コウちゃんはなにか見つけても、絶対ひとりで見に行っちゃダメだからね』
光太の頭の中に、ケースケとユーゴの言葉が、ふいに浮かびあがってきた。
いつもの調子の、いつもの声。
でもそれは、いまにもはじけて水晶玉の中から飛び出そうとしていた光太を、ハッとさせるのにじゅうぶんな重みを持っていた。
ああ、そうだった。
ひとりで突っ走るのは危ないかもしれないんだった。
「ふたりを探して合流しなきゃ」
そう思った途端光太は、はるか高みから、さっきまで溶け合っていた光を見下ろしていた。
自分自身が宿ったからか、その他の理由か。不思議と、石の板に刻まれているのが文字で、いろんな単語の羅列であることが理解できた。
意味のある文章ではなくただ、能力の種類がたくさんたくさん並べられているだけ。
光太が宿っているのは、『神速』を意味する単語だ。
ユーゴは『知性』。
ケースケは『屈強』。
他のみんなも、それぞれがそれぞれの個性にあった単語に宿っている。
宿った単語の能力を取り込み、光太はふわりと落下する。
うんと高い場所からどこまでもどこまでも落ちる感覚は、魔方陣らしきモノに引きずり込まれた直後の、真っ青な空の真ん中でひとりきりで落ちてゆく感覚と同じだった。
ああ、アレはコレだったのかと、唐突に理解する。
あの時光太は、光の渦に連れられて、この石の板の中を滑り降りていたのだ。
そうして、石の板に刻まれた『単語』から、『能力』を受け取っていた。
いまの光太には、たくさんの『能力』が与えられている。
だって、『光』は石の板から『能力』を受け取り落ちてゆく。
行き着く先は--台座の上の水晶玉だ。
するりと中に滑り込み、落下の勢いのまま、くるくるくるくる中で踊る。
躍りながら光は、『神速』だけでは足りないと考える。
『神速』は、素早く動くというだけだ。
素早く動くには、『頑丈』な体がいる。
『頑丈』な体を『強化』すれば、もっと早く動けるようになる。
何者にも邪魔をされることなく。
速さに潰されることもなく。
誰よりもなによりも素早く動ける『能力』を。
集める『能力』を選ぶのは、空っぽになった水晶玉の中に、一番最初に滑り込んだ光の特権だ。
たくさんある単語の中から、欲しい『能力』に宿った光を呼んで、水晶玉の中を満たしてゆく。
どんどんどんどん仲間を呼んで、ぐるぐるぐるぐる渦を巻く。
《もっともっと》
《たくさん、いっぱい、集まらないと……!》
溢れるくらいの能力を集め--……納める『器』を、迎えに行って、連れてこないといけないから。
ぎゅうぎゅうぎゅうぎゅう押し合い圧し合い。
もう無理! ってくらいの能力を詰め込んで。
溶けて混ざって一緒になって。
それでもまだまだ足りなくて。
水晶玉がはじけるくらいたくさんの仲間が集まりひとつになって--溢れてはじけ出ようとした、その直前。
『コウちゃん、危ないよ』
『コウちゃんはなにか見つけても、絶対ひとりで見に行っちゃダメだからね』
光太の頭の中に、ケースケとユーゴの言葉が、ふいに浮かびあがってきた。
いつもの調子の、いつもの声。
でもそれは、いまにもはじけて水晶玉の中から飛び出そうとしていた光太を、ハッとさせるのにじゅうぶんな重みを持っていた。
ああ、そうだった。
ひとりで突っ走るのは危ないかもしれないんだった。
「ふたりを探して合流しなきゃ」
そう思った途端光太は、はるか高みから、さっきまで溶け合っていた光を見下ろしていた。
0
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
裏切りの代償
志波 連
恋愛
伯爵令嬢であるキャンディは婚約者ニックの浮気を知り、婚約解消を願い出るが1年間の再教育を施すというニックの父親の言葉に願いを取り下げ、家出を決行した。
家庭教師という職を得て充実した日々を送るキャンディの前に父親が現れた。
連れ帰られ無理やりニックと結婚させられたキャンディだったが、子供もできてこれも人生だと思い直し、ニックの妻として人生を全うしようとする。
しかしある日ニックが浮気をしていることをしり、我慢の限界を迎えたキャンディは、友人の手を借りながら人生を切り開いていくのだった。
他サイトでも掲載しています。
R15を保険で追加しました。
表紙は写真AC様よりダウンロードしました。
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる