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第2章 ちびっこ怪獣三匹、事の次第を知る

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 白く染まった視界が戻ると、光太は石の板に宿やどる小さな光のひとつになっていた。

 自分自身が宿ったからか、その他の理由か。不思議と、石の板に刻まれているのが文字で、いろんな単語の羅列られつであることが理解できた。
 意味のある文章ではなくただ、能力ちからの種類がたくさんたくさん並べられているだけ。

 光太が宿っているのは、『神速しんそく』を意味する単語だ。
 ユーゴは『知性ちせい』。
 ケースケは『屈強くっきょう』。
 他のみんなも、それぞれがそれぞれの個性にあった単語に宿っている。

 宿った単語の能力ちからを取り込み、光太はふわりと落下する。

 うんと高い場所からどこまでもどこまでも落ちる感覚は、魔方陣らしきモノに引きずり込まれた直後の、真っ青な空の真ん中でひとりきりで落ちてゆく感覚と同じだった。
 ああ、アレはコレだったのかと、唐突とうとつに理解する。
 あの時光太は、光の渦に連れられて、この石の板の中を滑り降りていたのだ。
 そうして、石の板に刻まれた『単語』から、『能力ちから』を受け取っていた。

 いまの光太には、たくさんの『能力ちから』が与えられている。

 だって、『光』は石の板から『能力ちから』を受け取り落ちてゆく。
 行き着く先は--台座の上の水晶玉だ。
 するりと中に滑り込み、落下の勢いのまま、くるくるくるくる中で踊る。

  躍りながら光太は、『神速』だけでは足りないと考える。
 『神速』は、素早く動くというだけだ。
 素早く動くには、『頑丈』な体がいる。
 『頑丈』な体を『強化』すれば、もっと早く動けるようになる。
 何者にも邪魔をされることなく。
 速さに潰されることもなく。
 誰よりもなによりも素早く動ける『能力ちから』を。

 集める『能力ちから』を選ぶのは、空っぽになった水晶玉の中に、一番最初に滑り込んだ精霊の特権だ。
 たくさんある単語の中から、欲しい『能力ちから』に宿った仲間を呼んで、水晶玉の中を満たしてゆく。

 どんどんどんどん仲間を呼んで、ぐるぐるぐるぐる渦を巻く。
 
《もっともっと》

《たくさん、いっぱい、集まらないと……!》

 溢れるくらいの能力ちからを集め--……納める『器』を、迎えに行って、連れてこないといけないから。

 ぎゅうぎゅうぎゅうぎゅう押し合い圧し合い。
 もう無理! ってくらいの能力ちからを詰め込んで。
 溶けて混ざって一緒になって。
 それでもまだまだ足りなくて。
 水晶玉がはじけるくらいたくさんの仲間が集まりひとつになって--溢れてはじけ出ようとした、その直前。


『コウちゃん、危ないよ』
『コウちゃんはなにか見つけても、絶対ひとりで見に行っちゃダメだからね』


 光太の頭の中に、ケースケとユーゴの言葉が、ふいに浮かびあがってきた。

 いつもの調子の、いつもの声。
 でもそれは、いまにもはじけて水晶玉の中から飛び出そうとしていた光太を、ハッとさせるのにじゅうぶんな重みを持っていた。

 ああ、そうだった。
 ひとりで突っ走るのは危ないかもしれないんだった。

「ふたりを探して合流しなきゃ」

 そう思った途端光太は、はるか高みから、さっきまで溶け合っていた精霊を見下ろしていた。
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