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第1章 ちびっこ怪獣三匹、異世界に降り立つ

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 案の定、パッと振り返ってダッと走って行こうとした光太を、ケースケは無言でグッと押さえる。

 まずは危なくないか確かめてから。
 その当たり前のことが、光太の頭からはよくすっぽ抜ける。
 バカではないのになんで覚えてくれないんだろうと頭を悩ませるケースケとユーゴだったが、本当に危ないときにはふたりがちゃんと止めてくれるから、光太が心置きなく己の本能に従っていることを、彼らはまだ気づいていない。

 光太の無鉄砲むてっぽうイコール、仲間への信頼だ。
 とはいえ、振り回される側からしたら、そんな信頼は嬉しくもなんともないのだが。

「コウちゃん、待てだよ、待て」

「なんだよ、ユーゴ。オレは犬じゃないぞ!」

「犬の方がまだマシでしょ。なんでコウちゃんは考えるより先に動いちゃうの? ケースケが掴んでなかったら突撃してたくせして、文句言わない」

 ユーゴは、ケースケの示す先。
 大きな大きな石の板の、一番下。
 全体の大きさからすればほんのわずかせりだした部分。
 見ようによっては祭壇に見えなくもない台の上--を、ため息を吐きながら確認しようとして……嫌でも光太が走って行こうとした理由がわかってしまい、眉をしかめる。

 天高くそびえ立つ石の板は、黒地に細かな白とオレンジ--サビ色の模様もようがランダムに入った、よく磨いた大理石だいりせきのようだ。
 刻み込まれた文字っぽいものも、角度によっては地の色にまぎれてしまい、わからなくなってしまう。
 祭壇さいだんのようなモノも同じく。角度によっては、地柄にまぎれてしまい、見つけにくくなる。

 だが、一度目を留めると不思議な存在感でもって、見失うことはなくなる--のだが。
 残念ながら、高さは大人仕様でできているらしい。

 ケースケにはやや離れたこの位置からでも祭壇らしきモノの表面が見てとれたようだが、悲しいかな。
 ユーゴには、側面しか見ることができなかった。

 すなわち、光太にも、だ。

 光太は、クラスの中でも特に小さい。
 幼い頃に病気がちだったせいらしいが、健康になってからも、あまり背が伸びる気配がない。
 まだまだ成長期だし、この先まだ伸びると本人は主張しているけれども、あやしいものだ。

 ユーゴは、そんな光太より少しだけ背が高く、クラスの中ではごく平均的でも、ケースケと比れば、頭ひとつ分低い。

 つまるところ、ケースケの高身長がうらやまし--……じゃなくて。
 ケースケ並みに背が高くなければ、祭壇らしきモノの表面を見ることができないということだ。

 光太が、走り寄ろうとするはずである。

 そわそわそわそわ。ケースケに襟首を持たれたまま左右に揺れる光太を見て。
 後ろ側。愁嘆場しゅうたんばを演じている大内先生たちを見て。

「--……見るだけ見に行ってみようか」

 ユーゴはひとまず、祭壇っぽいモノの表面が見えるところまで近づいてみることにした。
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