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【2話目】

ダイフクは『人』じゃないけど

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「おしゃれじゃないよ! ウチの人に、『子犬は弱いから、汚れた服で行くな』って言われたから着替えてきたんだ!」

 ダイフクは『人』じゃないけど。
 正確には、「子犬は『邪気』に弱いから」だったけど。
 細かいことは気にしない。
 だって、陽翔の言葉は単なる言いがかりだから。
 廉太郎は、思ったことを飲み込むことなく口にする。

 共同住宅アパートに引っ越してくるまで、廉太郎は言葉を飲み込むことが多かった。
 いくら話しかけても両親からは生返事しか返ってこなかったし、相手をして欲しくて話しかければ話しかけるほど、うっとうしがられていたからだ。
 いつしか必要最低限しか話さなくなり、自己主張の仕方を忘れてしまっていた廉太郎だったけれど。
 共同住宅アパートにきて、黙っていたらなにも相手に伝わらないのだと教えられた。

 例えばご飯の量。
 たくさん食べたいなら大盛りで。
 ふつうがいいならふつう盛りで。
 少なめがいいなら小盛りで。
 はじめにちゃんと告げなければ、ダイフクの判断で、とんでもない量を盛られてしまう。
 小柄で痩せているからと、ダイフクも住人たちも、やたらと廉太郎に食べ物を与えたがる。
 ご飯は毎回てんこ盛り。
 おやつはたっぷりーーに、加え、会う人会う人、お菓子をくれる。
 はじめは頑張って全部食べていた廉太郎だったが、一週間もすれば胃が悲鳴をあげた。

 もう食べられない。
 そのひと言が言えなくて、ある日廉太郎は腹痛を起こして動けなくなった。
 あわてふためいたオジサンに病院へと運ばれ、病気でもなんでもなくただの食べ過ぎだと告げられた廉太郎はその時。
 事情を聞いたオジサンに呆れ半分、思ったことはちゃんと口にしなければ相手には伝わらないのだと教えられた。
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