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【2話目】

明日食べる物がない

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 レトルト食品や冷凍食品を温めただけの食事も。
 シャワーだけのお風呂も。
 夜、ひとりで眠るのが怖くても。
 廉太郎は全部我慢して、ひとりで頑張った。
 でも、世の中には廉太郎ひとりでは出来ないこともたくさんあって、困ることもいっぱいあった。
 例えば、掃除や洗濯なんかがそうだ。
 掃除機は重たくてきちんとかけられないし、洗濯機はそもそも、廉太郎では背が届かない。
 掃除機や洗濯機は危ないから触るなと両親に言われていたこともあって、家の中がどんどん薄汚れていっても、洗濯物が山積みになっていても、廉太郎はじっと我慢するしかなかった。
 食事だってそうだ。
 両親は、廉太郎にお小遣いすら渡してくれていなかった。
 だから、レトルト食品も冷凍食品も買い足されていなかったりすると、食べる物がなくなる。
 せめてお小遣いをもらえていたら、おやつくらいは買えたのに。
 ふたりとも、すでに廉太郎にさして興味がなくなっていたのだろう。
 お小遣いどころか、買い置きの補充ほじゅうさえも、しょっちゅう忘れられていて。
 廉太郎はそのたび、食事を抜くことになった。

 明日食べる物がない。
 そう伝えたくても、廉太郎が起きている時間帯には父親も母親も家には帰って来なくて。
 朝も、廉太郎が起きると同時くらいに、ふたりとも出ていってしまう。
 洗濯物がたまってしまって着替えがなくなっても、廉太郎はどうしようもなくて。
 家の中がホコリまみれになっても、廉太郎にはなにもできなくて。
 ただただ、両親が『仕事』を終えて帰って来るのを、じっと待っているしかなかった毎日。
 自分のことは自分でやらなければ、誰も助けてはくれず。
 誰かを頼るということすら、廉太郎はこの共同住宅アパートに来るまで忘れ去っていた。
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