上 下
22 / 48
【1話目】

コイツら悪さするの!?

しおりを挟む
 どんどんどんどん寄り集まって。
 どんどんどんどん大きくなって。
 大きく大きくなりすぎた黒いモヤモヤは、『イキモノから追い出された悪い感情』ではなく、『悪意』と言う名の別の集まりになって、質が変化してしまう。
 そうなってしまうと、ただ『目』がいいだけの者には、ほとんど視えなくなってしまうらしい。

「オレ程度やと、そこにおる・・のがわかるくらいやな。視えとるモンは、こっちから関わりに行かなんだら害にもならんとソコに居るだけやけど、こそこそ隠れるようなモンは、こっちが関わらんでも悪さしてきよる。ちゅうか、悪さするために姿を隠しとるんやろな」

「えッ。コイツら悪さするの!?」

「するする。人を不幸にしたり、怒りっぽくしたり、好き放題しよる。んで、『嫌なヤツ』ができあがるっちゅうわけや。ウチの共同住宅アパートにおったらまあ、何が来てもたぶん大丈夫やけどなあ」

「ウチの共同住宅アパートってそんなすごいんだ?」

「そらそうや。廉太郎おまえ、この共同住宅アパートの名前言うてみ?」

「んーと、『フェアリーゴッドマザーハウス』……だったはず」

「せや。つまりは『妖精母さんの家』やで?」

「あー……」

 藤堂と話ながらも鏡を見てせっせと黒いモヤモヤをはたいていた廉太郎は、ぬっと現れた背後の影に、納得顔でうなづく。

 熊のように大きな体は、人間用の小さな姿見には収まりきらないのだろう。
 姿見の中に見えるのは、お腹の真っ白な毛並みのみだ。
 でも、この真っ白な毛並みを、廉太郎はよく知っている。
 廉太郎がこの共同住宅アパートで生まれて初めて出会った、不可思議ふかしぎな存在だ。

 背後を振り返ってみれば、思った通り。
 愛用の『しゃもじ』を構え、いまにも振り下ろそうとしているネコのダイフク・・・・・・・がいた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

平安学園〜春の寮〜 お兄ちゃん奮闘記

葉月百合
児童書・童話
 小学上級、中学から。十二歳まで離れて育った双子の兄妹、光(ひかる)と桃代(ももよ)。  舞台は未来の日本。最先端の科学の中で、科学より自然なくらしが身近だった古い時代たちひとつひとつのよいところを大切にしている平安学園。そんな全寮制の寄宿学校へ入学することになった二人。  兄の光が学校になれたころ、妹の桃代がいじめにあって・・・。  相部屋の先輩に振り回されちゃう妹思いのお兄ちゃんが奮闘する、ハートフル×美味しいものが織りなすグルメファンタジー和風学園寮物語。  小学上級、中学から。

GREATEST BOONS+

丹斗大巴
児童書・童話
 幼なじみの2人がグレイテストブーンズ(偉大なる恩恵)を生み出しつつ、異世界の7つの秘密を解き明かしながらほのぼの旅をする物語。  異世界に飛ばされて、小学生の年齢まで退行してしまった幼なじみの銀河と美怜。とつじょ不思議な力に目覚め、Greatest Boons(グレイテストブーンズ:偉大なる恩恵)をもたらす新しい生き物たちBoons(ブーンズ)を生みだし、規格外のインベントリ&ものづくりスキルを使いこなす! ユニークスキルのおかげでサバイバルもトラブルもなんのその! クリエイト系の2人が旅する、ほのぼの異世界珍道中。  便利な「しおり」機能、「お気に入り登録」して頂くと、最新更新のお知らせが届いて便利です!

世にも奇妙な日本昔話

佐野絹恵(サノキヌエ)
児童書・童話
昔々ある所に お爺さんと お婆さんが住んでいました お婆さんは川に洗濯物へ お爺さんは山へ竹取りへ 竹取り? お婆さんが川で 洗濯物をしていると 巨大な亀が泳いで来ました ??? ━━━━━━━━━━━━━━━ 貴方の知っている日本昔話とは 異なる話 ミステリーコメディ小説

猫のお菓子屋さん

水玉猫
絵本
クマのパン屋さんのおとなりに、猫のお菓子屋さんができました。 毎日、いろんな猫さんが、代わる代わるに、お店番。 お店番の猫さんが、それぞれ自慢のお菓子を用意します。 だから、毎日お菓子が変わります。 今日は、どんなお菓子があるのかな? 猫さんたちの美味しい掌編集。 ちょっぴり、シュールなお菓子が並ぶことも、ありますよ。 顔見知りの猫さんがお当番の日は、是非是非、のぞいてみてください!

エプロンパンダのおめがね屋

ヒノモト テルヲ
児童書・童話
目黒山の中ほどにできた「おめがね屋」というメガネ屋さんのお話。エプロン姿のパンダ店主と子供パンダのコパンの二人が、手作りでちょっと変わったメガネを売っています。店主がエプロンのポケットに手を入れてパンダネを作り、それをオーブンに入れて三分立てばお客様のご希望に合わせた、おめがねにかなったメガネの出来上がりです。

「 Little Ballerina 」

egakukokoro
児童書・童話
電車の通勤の際に小さなやさしさにふれた体験を振り返り ほっこり、じんわりした体験でしたので今回、執筆を試みました。 常日頃、日常生活を送る傍ら「助け合う」事から、離れてしまう今日この頃だとだと思いますが、 又、今はこういう時期ではありますが、束の間の間だけでも心にそっとやさしい灯火が灯りましたら幸いです。

雲のトイレ

すずもと
児童書・童話
「ねえママ、なんで雨が降るの?」 スズちゃんはまだ3歳。なんで雨が降るのか知りません。

釣りガールレッドブルマ(一般作)

ヒロイン小説研究所
児童書・童話
高校2年生の美咲は釣りが好きで、磯釣りでは、大会ユニホームのレーシングブルマをはいていく。ブルーブルマとホワイトブルマーと出会い、釣りを楽しんでいたある日、海の魔を狩る戦士になったのだ。海魔を人知れず退治していくが、弱点は自分の履いているブルマだった。レッドブルマを履いている時だけ、力を発揮出きるのだ!

処理中です...