19 / 63
【六従兄弟姉妹(むいとこ)】
陸
しおりを挟むオレを置いてけぼりにして、ぽんぽんぽんと会話が進む。
そういや、虎蔵んところのお袋さんは、折に触れて『ウチの子、残念馬鹿でごめんなさいね。できれば見捨てないでずっと仲良くしてやってね』と苦笑いしていた気がしなくもない。
お袋さんが言っていたのはそうかコレかと腑に落ちた途端。ぐちゃぐちゃだった頭が、ストンと冷えた。
胸の奥でじくじくと存在を主張する小さなトゲは消えないままだが、虎蔵に何の含みもなかったのならしょうがない。どうやら、そう思える程度には、虎蔵との間に積み重ねてきたものがあったらしい。
ぎゃんぎゃんと賑やかしく知り合いらしき人物に噛みつきに行く虎蔵に、彼のお袋さんと同じような、残念なモノを見る目を向ける。
そうだよな。顔が良くて明るくて、なのにオレみたいなのが一番の仲良しだとかほざいて纏わりついてくるような奴だ。どこかしら抜けていても不思議ではない。
「だったらなんで、兄さんにどんな職場か聞かれてごまかした?」
「ごまかしてなんかいませんー。オレの職場て、一般人なリュウちゃんにどこまで話してもええんやろって考えとっただけですう。って。いつから盗み見しとった!」
「そんなもん。初めからに決まってんだろうよ。素人さんを投入するんだ。何事もねえよう配慮すんなあ当然だろうが」
スーツの懐から煙草を取り出して咥えた男の右肩に、何処からともなく現れた小鳥がふわりと留まる。
ちょんちょんと肩の上を歩き、男の首筋に頭を擦り付ける仕草も愛らしい、賢そうな顔をした紅色の小さな鳥だ。
赤い色をした小鳥なんて珍しいと思う反面。どこかで見た事があるような気もして小首を傾げる。
「おまえさんが横着して一階のロビーで寛いでる間に襲われかけた兄さんを、このベニがちゃあんと守ったんだ。盗み見だなんぞと人聞きの悪ィ事ぉ言われる筋合いはねえやな」
「襲われかけた……? 嘘つけや。あのおっさんは、急に出てきてびっくりさせるだけやったやないか。せやで、バイトのお人がいきなり出てきたおっさんにびっくりしてビルから逃げて行ったら、入れ替りでオレが処理しに入るて段取りやったやろ」
「不測の事態に備えろとも言っといただろうが。ベニが割り込まなけりゃ、この兄さん。今頃は魅入られて連れていかれてただろうぜ」
ああ。やはりあの手招きはそういう意味だったのかと思うのと同時。紅色の小鳥をどこで見たのかを思い出す。
廃ビルの廊下で、足が竦んで動けなくなっていた所に飛び込んできた小鳥だ。
どこにでもいそうな野鳥に見えるが、野鳥を飼育するには確か、特別な許可かなにかが必要だったはずだ。わざわざ許可を取ってまで野鳥に芸を仕込む手間を考えるに、あの小鳥はなにか特別なのだろう。
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
ゴーストバスター幽野怜
蜂峰 文助
ホラー
ゴーストバスターとは、霊を倒す者達を指す言葉である。
山奥の廃校舎に住む、おかしな男子高校生――幽野怜はゴーストバスターだった。
そんな彼の元に今日も依頼が舞い込む。
肝試しにて悪霊に取り憑かれた女性――
悲しい呪いをかけられている同級生――
一県全体を恐怖に陥れる、最凶の悪霊――
そして、その先に待ち受けているのは、十体の霊王!
ゴーストバスターVS悪霊達
笑いあり、涙あり、怒りありの、壮絶な戦いが幕を開ける!
現代ホラーバトル、いざ開幕!!
『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子
ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。
Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる