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第8節 フィリア騎士学園本校地下・世界の深奥編

第325話 7年の研鑽

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剣と斧で斬り結ぶ轟音が響き渡り、その衝撃で周囲の岩などは吹き飛ぶ…ぶつかり合いにより地面に大穴が次々と空き、お互いの技が闘気が相手を喰らおうと鬩ぎ合う。

私の手には『神剣・焔咲夜』が握られている…魔王となったあの人と戦うために、苦労して手に入れた愛剣だ。


「ぜえあ!」

オーレリア「ふっ!」

迫る斧を私はジャンプして躱し、そのまま空中で一回転して奴を斬る。

オーレリア「むっ」

しかし硬化された肉体によって、大剣の刃が通らなく止められる。

「ふん!」

奴はガードした腕を振り抜き、それにより私は後方に吹き飛ばされる。

オーレリア「っと」

「きえい!」

私は受け身をとり、すぐに体勢を立て直すが…奴は瞬時に間合いを詰め寄り、追撃の斧振り下ろしを繰り出す。

オーレリア「ぬっ」

それも私は避けるが…膨大な魔力を込められた一撃により大きなクレーターができ、その衝撃で私はまた後方へ吹き飛ばされる。


難なく体勢を整えて着地した私は、剣を構えながら奴を見て。

オーレリア「その図体でその俊敏な動き、脚力が…筋肉が異常に発達しているのか。それに加えてリーゼの硬質化…これが唸る獣か。」

「ははは!大口を叩いた割にはその程度か!」

コトリ「き、消えた!?」

ベアトリーチェ「今度は気体化ですね」

身長3メートルの奴は、闇色の霧となって消える…これもかつて見たリーゼの技だ。

「ぜえい!」

オーレリア「その技はすでに見た」

奴は背後に現れ、その大きな手で掴もうとしてくる…だから私は、それを払い退けようと大剣を振る。

オーレリア「!」

すると奴の手は簡単に切断でき、切断跡からはちりちりと闇色の霧がでて…そのまま手は空中を飛んで、私を握り潰そうと襲ってくる。


「捉えたぁ!」

アイリス「オーレリア!」

オーレリア「ふぅ…七翼流 水の型 真・水円陣」

それを防ぐため私は魔法剣を放つ。剣を横に薙ぎ、膜を張るように…円状に水魔法を発生させ、水流の流れで攻撃を受け流す。

コトリ「私のより遥かに進化した…剣技に昇華されてる…!」

「凌いだか…だがいつまでもつかな」

オーレリア「……。」

私は力を抜きリラックスし、ある『感情を爆発』させるために目を瞑って……。


オーレリア「貴様の力はもう把握した。結果、貴様はリーゼより怖くはない。」

「何…?」

オーレリア「リーゼは狡猾で効率厨で、結果が全てのリアリストだ。リーゼは単純な力押しだけではなく…2.3重にも罠や保険をかけて、勝ちを得るためにあらゆる手段を使ってくる。

それに対して貴様は、自身の能力に溺れる慢心の塊だ…そんな奴に私が負けるはずがない。」

ウンディーネ「……あの技は…まさか…。」

オーレリアが話している間も、彼女の魔力が『限界なく』高まっていく。

目を瞑るオーレリアの全身からは…膨大な『蒼天の魔力』が溢れ出て、それと同時に彼女の髪色が『蒼天』色に変化し…集約された『蒼天の魔力波』を彼女は身に纏った。


オーレリア「ーーー真なる想いの理」

オーレリアが瞳を見開くと…彼女の全身から溢れ出ていた、極大な魔力が突然消え、恐ろしい静寂さに変わる…しかし彼女の髪の色は変わったままで。

コトリ(え…技の失敗…? でも髪の色は変化したままだし……それに…魔力が溢れ出ていた時より強まるこの寒気がでるほどの威圧感はいったい…。)

「ははは!どうしたどうした!」

唸る獣は驚異的な脚力で詰め寄り、大斧を振るって攻めを再開し…オーレリアは凌いでいるが、防戦一方で追い込まれていく……。


オーレリア「……。」

奴の猛攻で、私は壁際まで詰められる。

ベアトリーチェ「これは加勢した方がよいでしょうか?」

アイリス「ううん…多分あれは…。」

「ははは!これでトドメだ!」

勝ちを確信した奴は斧を振りかぶる。

隙を見逃さず私は目にも止まらぬ速さで剣を振り抜き、斧を持っていた手を斬り飛ばす。腕は宙を舞って吹き飛び、斧は地面に落ちる。


「わ、我の腕がぁあああ!?」

奴が動揺していても高速再生が発動し、奴の腕が自動で元通りになる。

コトリ「け、剣筋が見えなかった…それに硬質化をものともせずに裂いて…。」

ベアトリーチェ「解説をお願いしても」

アイリス「おそらくわざと油断させておいて、隙ができた所を狙ったんだ…1発で切り返すために。多分あれが今の彼女の『戦闘スタイル』なんだと思う。」

オーレリア「なるほど、貴様も高速自動再生持ちか…まあ問題はない」

「っ!?」

奴は慌てて斧を拾い防御体勢をとるが、私は構わず剣を振るう。

私の剣閃の速さに奴は対応できず、そして硬質化をものともせずに切り裂き…奴の全身は切り刻まれ、そのたびに高速再生される。


私が攻撃や防御に動く瞬間のみ『身体から蒼天の魔力が溢れ出る』…その時の膨大な魔力を感じとったのか、奴は切り刻まれながら喋る。

「な、なぜ我がただの人間ごときに真正面からやられているのだ!? それに…なぜただの人間ごときがそれ程の魔力を有している!?」

オーレリア「私自身の魔力量などは全然だ、サクヤさまやオフェリアさんたちには遠く及ばない…私はただ『想いを魔力に変換している』だけだ」

「お、想い?」

オーレリア「そう、ただキール隊長への想いを魔力に変換している…燃え尽きることのない一点の揺るぎない想いをな。そして私のキール隊長への『想いに上限などない』」

「わ、訳のわからぬことを! それともう一つ理解できぬ…魔力を得たとして、ただの人間の肉体が、それ程の魔力を行使し続けれるはずがない! 肉体がぶっ壊れるはずだ!」

辿り着いた技の極地により、上限なく私の強さが増す。その極大の魔力により、私の肉体が滅びぬことを奴は疑問に思っているようだ……。


アイリス「力の制御が非常に的確だね。

普段は身体をリラックスさせ、攻撃の瞬間にのみ魔力などを一気に高める事で、身体への負担を軽減してる。

あれなら私たちみたいに、高めた魔力を常に維持し続ける事で伴う肉体への負担がなく、体力を温存させれる。

それに加えて、魔力強化による本来の身体の強さ以上の力を発揮しても、一瞬なら身体への負荷が殆どかからない…だからこそ、唸る獣の速さとパワーを遥かに上回ることができてる。

あの0からの攻撃は相手に動きを読まれず、大きい瞬発力を生む利点もあって、彼女自身の想いの力を無駄なく最大限に活かせてる…今のオーレリアの強さには、まるで隙がない。

あれがオーレリアが辿り着いた…大剣使いの1つの境地」

ベアトリーチェ(あの剣鬼にここまで言わせるとは…我が友マサキの人類最強の称号を継ぐのは、やはり…。)

ウンディーネ(適正も何一つ特別なものを持ってないただの人間だから気付くのが遅れたけど、あのオーレリアという女性…彼女の血縁みたいね…。)

かつてシンドバッドが白神聖者に見せた境地に辿り着いた彼女。

ただの人間であるオーレリアが、己の身体の限界を遥かに超えた…肉体の強さが魔族より劣るただの人間が、上限のない魔力を扱うための答えがこの戦い方だった。

オーレリアの努力、執念、想いが今ここに結実した……。


「ぐぐ! こ、こうなればその剣ごと飲み込む…防御不可能の一撃を放つまでだ!」

自身の身体の一部を気体化させ、魔力の黒い霧を大斧に纏わせ…ただの人間では不可能なくらい魔力によって武器が強化される。

「チリとなって消えるがいい!」

オーレリア「……。」

巨大な魔力を纏った大斧が振り下ろされ、私を飲み込もうと迫る。私はそれを静かに見つめ、片手で大剣を振るって一閃した。

「え」

私の一振りによって奴の魔法は『掻き消され』て、そして巨大な斧も粉々に砕いた。


オーレリア「これが神剣・焔咲夜の能力『バニシングアドベント/消失の到来』だ。

カウンターで技を繰り出すことによって、相手のあらゆる攻撃を消滅させる力だ…ただタイミングを間違えれば、敵の技をもろに受けてしまう諸刃の力だがな。」

私は片手で大剣を天に掲げる。剣に纏わせた魔力が魔法に変換し、それにより吹雪が吹き荒れ…大剣の鍔部分に氷の翼が作り出される。

「ま、待てやめっーー」

オーレリア「七翼流 氷の型 奥義・氷翼剣」

私は剣を振り下ろし、奴を一閃する。放った魔法剣によって奴は凍てつき、そして粉々となって消滅した……。


1人で唸る獣を圧倒したオーレリアさんを見て、私は驚愕する。

コトリ「……す、すごい…オーレリアさんってもしかして…アイリス教官より…。」

アイリス「ふふ…本当に強くなったね、オーレリア…キールも喜んでるよ。」
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