上 下
248 / 341
第7節 過去編 人魔大戦 キールとマサキ

第247話 人魔終結、そしてS計画の極み

しおりを挟む
王宮の最深部…王の間。

シンドバッドと白神聖者の戦いが終局したのと同時に…キールが入れられた透明な柩が、空間の裂け目の中へと吸い寄せられていく。


オーレリア「っ…キール隊長っ!!」

地面を蹴ってキールへと手を伸ばす…しかし、オーレリアの手は僅かに届かなかった。

棺は空間の裂け目へと消えていき、空間の裂け目は完全に閉じた。


マサキ「オーレリア! 無事か! っ…イーリス、この状況は…?」

オーレリア「……マサキ隊長…私は…また…この手が届かなかった…近くにいたのに…。」

イーリス「大丈夫だよ、オーレリアは無事だ…ただ、キール=ゴールドウィンは取り戻せなかっただけだ…。

……ん…?」

淡々と事実を語るイーリスだが、オーレリアを見て悲しそうな表情をさせ…

そうしていると、国王が目を覚まし立ち上がろうとしているのにみんな気がつき。


「ここ…は…? 私は確か……そうか…私は彼らに唆され…戦争を始めて…。」

黒騎士「へぇ…奴らに狂化洗脳され、悪魔に操られてたのにも関わらず、記憶を保っているなんて…王族の血のおかげかな…?

……! マサキさん、来るよ!」

マサキ「っ…!」

黒騎士の言葉とともに、部屋の外から甲冑の金属音が近づき、すぐに大勢の騎士たちが王の間に現れた。


アル「動くな! マサキ=ジェイド=サーティナ! お前には、魔族と手を結び陛下を洗脳し戦争を主導、反逆罪及び味方部隊及び、ゴールドウィン王国騎士団副長の殺害容疑がかかっている! 武器を捨てて今すぐ投降しろ!」

騎士たちをまとめるケーガンが大きく剣を構え、マサキに対して臨戦態勢をとるよう指示すると他の騎士たちも抜剣し…

その騎士たちの中心には、王国騎士団長ギランバルトにアル殿下…そして『白いローブ』を身に纏う小さき人物がいた。


オーレリア「ギラン…バルト…!」

オフェリア「なっ…!? あ、あなたたち何を馬鹿なことを言って!」

「アル…? お前…何を…っ…ま、まさかギランバルト…貴様、アルにまで…!」

ギランバルト「ふふ…陛下、あなたはまだ洗脳の影響で混乱していらっしゃるようだ…あとは、我々にお任せを。

……反逆者を捕らえよ、オリジナルをも超えし『我が娘よ』」

ギランバルトの命令を受けて、白いローブの小さな少女は前に出る…そして、その少女は『混じった極大の魔力』を全身から放出した。


「……了解しました。」

オーレリア「っ…なん…だと…!? これは…キール隊長の…魔力…!?」

オフェリア「う、うそ…あの子からマサキの魔力を感じる…しかも…それだけじゃない…『複数』の魔力反応を…放って…!?」

黒騎士「……だ、誰…この人…こんな人…私は知らない…そ、それに…この気配は…アイリス…教官や…リュネの…魔力…!?」

マサキ「……なるほどな…お前もあのリンゴと同じく、あの計画から生まれた者か…

しかも俺の魔力や細胞だけではなく…アイリスやキール、リュネメイアにサクヤ、その他にも色々と混じっているな…。

俺以外の魔力に細胞のサンプルは、白神聖者から提供されたか…? しかし…それだけの量の魔力や細胞を持ちながら、身体も人格も壊れずに保ってるとは…『神が如き器』だな…本人にとっては『地獄』だろうがな…。」

マサキの魔力だけではなく…キール、アイリス、リュネメイアなどの魔力や細胞を持ち…さらには剣技や本人たちが持っていた、あらゆる技能をも体得している白いローブの少女…

その身体に全ての力が集約され、混じり合った『器の少女』は…オリジナルであるマサキたちをも遥かに超えた、究極の人造人間だった。


イーリス「……マサキ、逃げるよ。はっきり言って、あの人と戦ったら『勝てない』よ。

私も驚愕してる…あれだけの複数の力を宿していることもだけど、それだけじゃない…気配しか感じ取れないけど、あの人は私や黒騎士と『同じ力』を隠し持っている…。」

オーレリア「マサキ…隊長…。」

マサキ「すまない…オーレリア…俺はっーー」

ギランバルト「ふん…逃したか…まあよい。それなら報告にあった黒騎士でも捕まえて…。」

イーリスの転移魔法により、マサキとオフェリアは王の間から消えた…それにより、ギランバルトの視線が黒騎士に移るが…。


黒騎士「ーーっ…! アイリス教官の魔力が急激に萎んでいってる…!? そうか…リュネと一緒にキメラと戦ってたから…オーレリアさん、ごめん…私は行くから…!」

その黒騎士も慌てた様子で、転移魔法を使って王の間から姿を消し…その場にはオーレリアと国王が残された。


「……対象たちロスト…追いますか?」

「いや、よい…奴が力を失い、戦争の続行が不可能な今、やることが沢山あるのでな。

いずれその時が来たときに、あの女共を俺の手中に納めればいいだけのこと…今は『奴がいない間』に戦力を万全とするぞ。」

白神聖者に含みを持つ言葉を口にし、野望を企む様子をみせながらその男は…睨みつけるオーレリアの方を見た。


ギランバルト「……一時的とはいえ奴がこの世界に顕現ができなくなった今、魔王の復活も遅れるだろう…だが、それは束の間の平穏に過ぎぬぞ。

奴か魔王のどちらかがこの世界に再度顕現を果たした時こそ、最後だ…覚悟しておくがよい。」

オーレリア「……いいや、違う…その時こそ、キール隊長をこの手に取り戻す時だ…!」

こうして、人魔大戦は終結を迎えた……。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

拝啓、婚約者様。ごきげんよう。そしてさようなら

みおな
恋愛
 子爵令嬢のクロエ・ルーベンスは今日も《おひとり様》で夜会に参加する。 公爵家を継ぐ予定の婚約者がいながら、だ。  クロエの婚約者、クライヴ・コンラッド公爵令息は、婚約が決まった時から一度も婚約者としての義務を果たしていない。  クライヴは、ずっと義妹のファンティーヌを優先するからだ。 「ファンティーヌが熱を出したから、出かけられない」 「ファンティーヌが行きたいと言っているから、エスコートは出来ない」 「ファンティーヌが」 「ファンティーヌが」  だからクロエは、学園卒業式のパーティーで顔を合わせたクライヴに、にっこりと微笑んで伝える。 「私のことはお気になさらず」

今から君を守るのに理由が必要ですか・・?(仮)

綾瑪 東暢
BL
 国が管理する学校『私立男高等学校』。この学校は男子学校である。小中高大が揃っていて保育園、幼稚園を卒業した後、男高難問入試を受け合格しないと入れない学校である。男高は秘密が多い。  男高は近年問題視されている『あること』を解決するための実験場、研究施設である。    男高に入試とは別で入った都瀬白斗、保育園を卒業した後入試を受け合格して入学した神瀬直也。思わぬ再会を果たした二人。男高の中で行われていることに戸惑い直也と距離を置きたい白斗。小さい頃から大好きだった白斗をもうこれ以上離したくない直也。直也は白斗を幸せにすると誓う。だが白斗は直也から・・逃げようとする・・・・二人は幸せになれるのか?  

幼馴染 女子大生 翔子 初めての絶頂

伊崎哲也
恋愛
過去のレイプにより、性的トラウマを持つ女子大生 翔子が、生まれて初めて歓びの絶頂を味わう、ある夏の日の物語。 [主な登場人物] 山下 翔子・・チア部の2年生で20歳。ミスキャンの候補で、清楚な女の娘。顔立ちに似合わず、気丈な一面も持つ。 山崎 哲也(俺)・・バド部で、翔子を想い続ける。 渡辺 崇・・青年の整形外科医。治療の名を借りて、女の娘を毒牙にかける。 吉澤 美佳・・渡辺のセフレで24歳の、妖艶な看護士。 レイプ・猥褻治療・レズ・・ 翔子の身体に襲い掛かる、指・舌・そして性具・・ 苦痛と快楽を懸命に耐える美少女・・ (注) 女の娘の体臭(特に腋窩と秘所)に拘った作品です。 赤裸々な性描写が多々有ります。

【完結】身売りした妖精姫は氷血公爵に溺愛される

鈴木かなえ
恋愛
第17回恋愛小説大賞にエントリーしています。 レティシア・マークスは、『妖精姫』と呼ばれる社交界随一の美少女だが、実際は亡くなった前妻の子として家族からは虐げられていて、過去に起きたある出来事により男嫌いになってしまっていた。 社交界デビューしたレティシアは、家族から逃げるために条件にあう男を必死で探していた。 そんな時に目についたのが、女嫌いで有名な『氷血公爵』ことテオドール・エデルマン公爵だった。 レティシアは、自分自身と生まれた時から一緒にいるメイドと護衛を救うため、テオドールに決死の覚悟で取引をもちかける。 R18シーンがある場合、サブタイトルに※がつけてあります。 ムーンライトで公開してあるものを、少しずつ改稿しながら投稿していきます。

ドン引きするくらいエッチなわたしに年下の彼ができました

中七七三
恋愛
わたしっておかしいの? 小さいころからエッチなことが大好きだった。 そして、小学校のときに起こしてしまった事件。 「アナタ! 女の子なのになにしてるの!」 その母親の言葉が大人になっても頭から離れない。 エッチじゃいけないの? でも、エッチは大好きなのに。 それでも…… わたしは、男の人と付き合えない―― だって、男の人がドン引きするぐらい エッチだったから。 嫌われるのが怖いから。

所詮は他人事と言われたので他人になります!婚約者も親友も見捨てることにした私は好きに生きます!

ユウ
恋愛
辺境伯爵令嬢のリーゼロッテは幼馴染と婚約者に悩まされてきた。 幼馴染で親友であるアグネスは侯爵令嬢であり王太子殿下の婚約者ということもあり幼少期から王命によりサポートを頼まれていた。 婚約者である伯爵家の令息は従妹であるアグネスを大事にするあまり、婚約者であるサリオンも優先するのはアグネスだった。 王太子妃になるアグネスを優先することを了承ていたし、大事な友人と婚約者を愛していたし、尊敬もしていた。 しかしその関係に亀裂が生じたのは一人の女子生徒によるものだった。 貴族でもない平民の少女が特待生としてに入り王太子殿下と懇意だったことでアグネスはきつく当たり、婚約者も同調したのだが、相手は平民の少女。 遠回しに二人を注意するも‥ 「所詮あなたは他人だもの!」 「部外者がしゃしゃりでるな!」 十年以上も尽くしてきた二人の心のない言葉に愛想を尽かしたのだ。 「所詮私は他人でしかないので本当の赤の他人になりましょう」 関係を断ったリーゼロッテは国を出て隣国で生きていくことを決めたのだが… 一方リーゼロッテが学園から姿を消したことで二人は王家からも責められ、孤立してしまうのだった。 なんとか学園に連れ戻そうと試みるのだが…

義兄に告白されて、承諾したらトロ甘な生活が待ってました。

アタナシア
恋愛
母の再婚をきっかけにできたイケメンで完璧な義兄、海斗。ひょんなことから、そんな海斗に告白をされる真名。 捨てられた子犬みたいな目で告白されたら断れないじゃん・・・!! 承諾してしまった真名に 「ーいいの・・・?ー ほんとに?ありがとう真名。大事にするね、ずっと・・・♡」熱い眼差を向けられて、そのままーーーー・・・♡。

料理好きわんこ君は食レポ語彙力Lv.100のお隣さんに食べさせたい!

街田あんぐる
BL
柘植野 文渡(つげの・あやと)28歳の住むマンションのお隣に越してきたのは猪突猛進わんこ系の大学生・柴田。ある日柴田がアッツアツのグラタンを持っておすそ分けに突撃してきて、柘植野は一瞬で胃袋を掴まれてしまう。 トラウマ持ちで「若者とは適切な距離を保ってよい導き手として接する」がモットーの柘植野は、柴田の「ご飯パトロン」になると提案して柴田との間に一線を引こうとするが、同じ釜の飯を食う2人は徐々にお互いを知っていく。 そして2人の間に生まれた淡い感情。しかし柘植野の秘密の職業や過去の奔放な性生活が足を引っ張る中、2人の関係は変わっていくのか……!?

処理中です...