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第7節 過去編 人魔大戦 キールとマサキ

第181話 どうしてあなたは私と共に

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ラン「ふぅ……!」

鯉口が小気味良く金属音を立て刀身を直す。

後ろには森林地帯に群生する植物系の魔物が幾重にも折り重なり倒れていた。

この程度の魔物なら、何ら問題はない。

肩慣らし程度だ。

それは相棒の方も同様のようで彼女も少々、息を切らしてはいるが私の視線に気付くと僅かに誇らしげな顔をする。


ラン「今日は、ここで野営。

魔物に邪魔されてばかりで、もう日も落ちかけてる。

…明日のお昼頃には、マーカーが示すポイントに到着できるはず」

相棒の了解を得て、やや開けた場所に道具を下ろし、馬を木々に繋ぐ。

薪を集め炎を灯す頃には辺りは真っ暗になり、辺りを見渡すのが難しくなっていた。

代わりに夜空はキャンプから離れたこともあり、明かりがないため満天の星空が支配する夜空がとても綺麗に2人に映る。

お互いに剣を傍らに、携帯した湯を注いだグラスを片手にゆっくりとした時間が流れる。


ラン「ねぇ、王国騎士さん……」

独りでに言葉が出る。

別に、沈黙を気にしたわけでもない。

そんなに繊細な心は私は持っていない。

ただ、何となくホントに気まぐれに近い心境なのかもしれない。


ラン「……うぅん。オーレリア。

純粋な疑問で、他意はない…誤解しないでほしい。

貴方は…」

しばしの沈黙が場を満たす。


ラン「貴方は、教会騎士団の私と共に戦うことに抵抗は感じないの?」

焚き火がパチパチと静かに炎を灯し続ける中、私は続ける。


ラン「この戦争が始まって以来……貴方たち、王国騎士団の損害は酷いもの。

公的に発表されていた被害分析報告も、最近は出されてもいない。

『居なくなった』同僚や先輩、後輩も…多いはず。

対して、私たち教会騎士団は無傷同然。

理由は単純明快。

戦ってすらいないから。

この国を守る二大騎士団と言われながら……

私たちは……

戦いを。

苦しみを。

怒りを。

憎しみを。

全て貴方たちに、放り投げた。

私たちの仕事じゃないと。

神の教義に背き、戦乱をもたらしてはならぬと。

そう声高に叫びながら。

王国騎士たちの怒りは最もだと、私も思う。

『あいつらは、腰抜けだ。同じ戦場で、一緒の空気を吸いたくねぇ』

『騎士団とは名ばかりの平和ボケした奴ら』

『犠牲は全て王国騎士団かよ、ギルドすら戦ってんのに……何考えてんだか』

……。

それなのに。

どうして、オーレリアは。

私と共に、来てくれたの?

何も感じないはず、ないよね……?」

恐怖はない。

何を言われようと当然だし、自分はレインさんたちのように破門を恐れることなく行動なんて、出来なかった。

彼女たちのようにも、行動できず、この白翼のエンブレムを身につけている以上、自分も同罪だ。

ただ、純粋に知りたいと感じた。

この人が何を考えているのか。

その答えを。

ーーーー

オーレリア「ふぅ…さすがはラン殿 お見事だ…だが私もそれに負けてはいないだろう?」

襲い来る魔物たちを切り捨て…汗をぬぐった私は軽く息を吐いて一息つく…

リーゼとの傷は完全に良くなっている…キール隊長に治してもらったおかげだな。

ラン殿がこちらを見ていたので、私は軽く微笑む…剣筋を見るに彼女は教会騎士でもトップクラスの実力者だろう…

そんな彼女と肩を並べて共に戦えているのだ…それを私は嬉しく思う。


オーレリア「そうか…まあさすがに夜通しは危険もあるからな…急いではいるが辿り着く前に怪我をしては元もこうもないからな…。

……ふむ…こうやってのんびりと夜空を見上げるのもいいものだな…。」

確かに言われるとすぐに夜がやってくるだろう…ラン殿の意見に私は賛成し、夜営の準備を始めた…。

そして腰を下ろして落ち着けた頃には…空には星々が綺麗に輝いていて…

綺麗…だな…そういえばこんなにゆったりするのは久しぶりだ…

せめて今だけは…いい…よな…

隣にいる相棒の温もりを感じながら…私は身体から力を抜いて星空を眺めて…。


オーレリア「うん? どうかしたのか。

……ふむ…なるほどな…まあ私も『失ってしまった』身からすれば思うことは…いや…彼女は戦争がなくとも…

あー…うん…彼女については脱線しそうだから話を戻そう…。」

ラン殿の問い掛けに…私は首を傾げながら 彼女の方を見つめて。

確かにラン殿の言う通り…私と同期らの騎士たちも戦争により被害を受けている…

まあキール隊長のことに関しては魔王のことが絡んでくるので置いておくことにする。


オーレリア「確かに教会が共に戦ってくれていたら もっと被害は減らせていたであろうな…そこについては憤りを感じないことはない…

だがそれとそなたのことは別であろう? 戦わない方針を示したのは教会幹部らであり…そなた自身ではない。

それに…これは私から見てなのだが…そなたは全てを放り投げてはいないだろう? こうして危険なことに首を突っ込み…魔紋とやらまで受けてしまっている…

もしかしたら何か理由があるのかもしれないが…本当に放り投げて…仕事ではないというのならそんなことはしない…

つまりはだ…そなたも心のどこかではその指示に納得してはいないということだ。

ついてきた理由については…それが民たちのためになると私が感じたからであり…

それに…私を励ましてくれた…そなたが悪い人には見えなかったからかな…

だから教会…まあ全員とは言えないが…そなたのことに関しては…私は信用し信頼している…これが答えではだめだろうか?」

指示した幹部らに憤りを感じているのであり、教会騎士たち全員に対して怒りを覚えてはいない…そもそも教会全員に怒るということは、友であるレインにもということ…怒っているというなら彼女の心配なんてしていない。

言葉にして相手に伝えていくこと自体 私としてはあまり得意ではないのだが…言葉にしないと伝わらないこともあるから…私は自分の言葉で紡いでいく…。
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