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第7節 過去編 人魔大戦 キールとマサキ
第129話 無明を切り裂く閃火の一刀【兆し】
しおりを挟むキール「……アタシは…」
オーレリアに視線を向け、瞳を揺らす。途端にキールの肌に青白い光を帯びた幾何学紋様が浮かび上がる。
すると浅黒い肌色は黒い光の帯となり紋様に吸収され雰囲気も、緊張を帯びた張り詰めたものではあるが通常のキールのものに戻る。
キール「っ~…世話をかけるね、オーレリア。
…わかった、アンタのフォローは任せて」
リーゼ「なんだ、もうお終いかぃ?せっかく少しは骨のあるものを感じたとぃうのに。
正気を取り戻したのは頭の封印式のおかげ……いや、オーレリア君の存在かな? 」
キール「ちっ!!」
いつの間にか近くで封印式を見物するリーゼに向けて思いっきり袈裟斬りをかけるも、難なく躱す。
リーゼ「ならさぁ…その大切な存在を失えば、君はどうなってしまうんだろうねぇ、キール=ゴールドウィン。」
また霧が霧散するように姿が消えると大技の溜めを行うオーレリアの前に現れ、右腕で彼女の首元を掴みあげるとそのまま吊り上げて強烈な力で締め上げる。
ミシミシ…と彼女の首元から骨が軋み、気管が塞がる音が漏れ始め、やがて彼女の愛剣が手から零れ落ちる。
キール「リーゼ!!…お前ぇえ!!」
怒りの声を挙げ、渾身の一撃を叩き込むが蒼の大剣は彼女の左腕1本に止められてしまい全く攻撃は届かず、そのまま強烈な蹴りを腹に叩き込まれ壁に叩きつけられ、その衝撃で崩れた木材が降り注ぐ。
キール「かひゅ……!!っく、はっ…!」
リーゼ「今の君じゃあ、100年経っても私に1太刀でも入れることなんて、できやしないよぉ。そこで黙って部下が魔王の城を飾り着ける素材になるのを眺めているとぃい。
…あぁ、ほったらかして済まないねぇ、オーレリア君。君は将来さぞや名のある遣い手になるだろう……だけど残念。私はせっかちなタチでねぇ。
未熟な君の成長を待つ気は無いし、潜在脅威なら排除することに越したことはないだろぅ?
え、なに?締め付けが足りない?
ははっ♪そんな潰された蛙みたいな声じゃ、聞こえないよ聞こえない、さあ。もっと大きな声でぇ♪」
アタシの中に湧き上がるのが実感できた。
強烈な怒りが。
このままじゃ、オーレリアが居なくなる…!嫌だ…そんなのは絶対に……!!
どうしてアイツは、アタシの最愛の人を痛ぶり殺そうとして、あんなにも楽しげに笑えるのか。
まるで家畜を見るような冷酷な瞳で、アタシたちを嬲ることができるのか。
リュネだけじゃ、飽き足らずオーレリアまで…私の大切なものを奪うのか。
ふざけるな…!ふざけるな、ふざけるな!!
キール「お前ごときに…くれてやるかぁ!!」
黒い閃光が走ったかと思うと、オーレリアの首を締め上げていたリーゼの腕は地面に力なく落ちる。
支えを失ったことでオーレリアの身体は地面に放り出され、ガシャンと鎧の音が響き力なく投げ出された。
リーゼ「おー♪なんだぁ、やれば出来るじゃあないか。これでようやく楽しくなってきたってもんだ」
失った片腕に見向きもせず、血液を流すことも無く眼前の敵を不敵に嗤う。
先ほどまでの青銅色の髪は鳴りを潜め、額に真紅の逆十字紋様が浮かび髪が黒く染まる。
青白い輝きを放つマサキの封印式が進行を抑えているのか瞳は青銅色のまま、肌の色も特に変化はない。
しかし明らかに彼女の雰囲気は冷たくも暗い重たさを宿す。
キール「……図に乗るなよ、転写の魔術師。余より下等な存在でありながら、余の女へ弓を構えるその行い…覚悟した上での行動だろうな…!
その身を八つ裂きにして、家畜の餌にしてくれる…!!」
リーゼ「ははっ♪こいつは傑作だぁ、魔王として覚醒しつつ有るにも関わらずオーレリア君が大事?
まだまだ中途半端だねぇ、君に半端な優しさは不要だ。冷酷さが足りないと言わざるを得ない。
そんなんじゃあ、私たち魔族を率いるにはダメダメだ。やれやれ…手がかかる魔王様だ。
めんどくさいけど、目を覚ましてあげようかねぇ」
2人の攻撃の応酬は流麗さを保ちながらも、荒々しい激しさを持つもので、ぶつかり合う度に衝撃が伝わる。
しかし……実力差は明らかだった。
リーゼ「はっはー♪…流石は魔王様の器。覚醒途中だと言うのにここまで押されるなんてねぇ、これは私も本気で行かなきゃヤバいってとこかぁ」
傷こそないものの煙管を強く噛み締め、普段は崩さない糸目を見開き楽しげに嗤う。
キール「……その耳障りな減らず口、次の一撃を持って二度と開かないようにしてやる。喰らえ我が闇の1振り。全てを呑み込む黒の一撃
続きは地の底で独りでに呟いてろ……っ!?っぐ、っあ!!い、た………っ!!」
更に莫大な闇の魔力を蒼の剣に込めようとした途端、
キールの腕の封印式がひときわ大きな光を放ち、蒼白い蛇がキールを強烈に締め付ける。
激痛に顔を顰め、膝を付き、倒れ伏すものの徐々に髪の毛先から黒色に変色していた髪がもとの青銅色に戻り始める。
リーゼ「なんだ、やっぱりつまらない……もぅいいや、君は。マサキ=ジェイド=サーティナーごときの封印で抑え込まれるようじゃ、贋作。魔王の失敗作は処分だ、処分……それじゃ黄泉の旅路…楽しんでおいで♪」
倒れ伏したキールの頭を踏みつけ、そして召還した剣を思い切り振りかぶると彼女の心臓目掛けて振り下ろした。
ーーーー
オーレリア「ふふ…気にするな。むしろいつでも頼ってくれ。」
私が想ったことを伝えただけだが…だが隊長の支えにされたのならよかった…。
軽く私はキール隊長へ微笑み…大剣に魔力を溜めながら 魔力操作を続けて。
オーレリア「なっーーぐぅ! っ…あっ…ぐ…ぉ…あぁあ…!」
かろうじて反応するも躱せず、私はリーゼの手に掴まれ…
簡単に足がつかないところまで吊られ、みしみしっと首の骨が軋むほど締め上げられて…。
な、なんて力だ…振りほどけない…! くそ…息ができな…っ…しま…剣を…落として…。
オーレリア「っ…ぉ…かひゅ…た、たい…ち…ょ…かは…っ~~!!」
リーゼの手を自身の両手で掴み 振りほどこうともがくも、次第に力が入らなくなって腕がだらんと垂れ、朦朧する私の瞳から光が失い。
キール隊長…! っ…だめ…だ…意識が…沈む…く…そ…私はまだこんなところで…キール隊長を守れず死ぬわけには……。
オーレリア「ーーっ…けふ…ごほっ! はっー! えふ! はっー! キー…ル…たい…ちょ…。」
意識が飛び 気がつくと地面に倒れていて…
私は咳き込みながら呼吸をし、力の入らなくなった身体をびくびく震わせ。
激痛などで霞のかかった瞳を前に向けると、キール隊長が闇を纏ってリーゼと戦っているのが見えて…
私の…私のせいで…キール隊長を闇に…あんな顔をさせて……っ…く…そ…。
っ…! た、隊長の姿が元に戻って…くっ…立て…私の身体…!
キール隊長は…死んでもやらせるものか…!
オーレリア「……私のこと忘れてやしないか?」
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瀕死のなか魔力と心を乗せた…シリウスやフォウの技であるはずの魔法剣を繰り出し、私の全身全霊の一振りがリーゼのお腹へと直撃…潜在的魔力を引き出し 剣に乗せ 振り抜いた。
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