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第7節 過去編 人魔大戦 キールとマサキ

第121話 涙

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オフェリアの渾身の一撃を受けた人形は凄まじい衝撃を受けて地に叩き付けられる。

その威力は地面に人形の身体がめり込むほどで土煙が立ち昇る。攻撃を受けた後だが、全身に闇魔法『再生』の効力が発動するものの。

血の色をした核には傷1つなく、人形はゆっくり立ち上がる。


「今の被弾ハ、想定の300%でス。身体の、ガガッ…し、身体の……ののの………!!!………っはーっ……!!…はぁー……っ!!」

しかし、立ち上がった瞬間に血の色をした結晶に大きな亀裂が入り、やがて大きな音響かせ結晶が砕け散る。

制御されていた代理人格の崩壊で解放された身体が地面に倒れ、反動と副作用に苦しげに瞳を見開き、大きく息を何度も吸う。


パラドックス「ほう……戻ったかね、マサキ君。しかし……」

白衣の男の先には、空中で力を出し尽くしたのだろう。真祖を包んでいた魔力がしぼみ、精霊獣は光を帯びて消失。…やがて彼女は落下を始める。


マサキ「お、フェ、リア………っ!!」

身体に力が入らず地面に這いつくばり、魔力制御がぶれる中、風魔力を足下に掻き集め瞬発的に破裂させることで地面スレスレのところで自分をクッションにして彼女を受け止める。


マサキ「オフェリア………っ。こんなに……待ってろ…!」

いくら不死とは言え普通の人間なら致命傷のはず。痛みも強烈なものがあるはずだ。膝枕をするように彼女の頭を自分の足にのせる。

サクヤ『たち』以外、治癒魔法を使える人間はいない……

それに闇の魔力『再生』は他人に作用させることは出来ない。

だが…今、開発中の術の1つ。

闇の魔力性質を治癒魔法のものに極限まで近づける。

必要とされる莫大なエネルギー源を…生涯に渡って生み出される魔力の1部を『前借り』ことで、擬似的治癒魔法を使うことはできる。

オフェリアの身体を白色の魔力…治癒魔法と同じ魔力光が包み、傷を癒していく。


マサキ「貴方は…馬鹿だ。……ここまでして、俺なんかの…ために……っ……」

感情が、湧き上がる。

自分に尽くし、命を賭け、止めてくれた彼女への感謝と嬉しさ。

こんな俺を信じてくれた嬉しさ。

そして…そんな彼女をここまで傷つけてしまった罪悪感。

マサキの目元から頬をつたい水滴が、オフェリアのボロボロに破損した踊り子衣装に落ちる。


マサキ「あ………え……?なんで…俺、泣いて……」

パラドックス「それは君が、真に寄り添い『本当の意味』で心から信頼できる相手を得たからだよ」

1部始終を見ていた白衣の中年男性は僅かに微笑みながらも、彼女の疑問に答えた。


パラドックス「君はこれまで、その身1つで『孤独』を生きてきた。手も血に染まりきっていることだろう。

任務の性質上、そして自分以外を守りきるために自ら孤独と闇を選んだ君を…本当の意味で理解するには、他者からの強引とも言える歩み寄りが必要だったのだがね。

しかし、誰でも良かったわけではない。禁忌の魔女を打ち倒すほどの実力……境遇を理解できる人生の経験値、そして何よりマサキ君を想う心。

図らずも、マサキ君。君は孤独と闇を自ら選んだことで。

かけがえのない『繋がり』を得たのだよ」

白衣の中年男性は『新しい観測ができた。せいぜい頑張りたまえ』と言い残し姿を消した。

ーーーー

オフェリア「……っ…あぁああああ!? かは…ごほ…はぁはぁ…マ…サキ…?

よ…かった…戻った…よう…ね…っ…が…ぁああ…! げほごほ…はぁはぁ…ほ、ほっときなさ…い…はぁはぁ…何時間かしたら…っああ…勝手に元の状態に戻るか…ら…。」

どうやら意識が飛んでいたようだ…気がついたらマサキが元に戻って…よかったわ…本当に…

凍てつき吹き飛んだ左手はもちろん、下半身にも感覚はない…
ああ これはきっと…今の私は相当 ひどい姿になっているのだろうな…

ほぼ上半身しか残されていないはず…
それなのに全身…そしてないはずの箇所まで、意識の覚醒と同時に激痛が走り…
マサキに心配をかけたくないが 激痛から、私は情けなくも悲鳴が漏れるのを抑えられなく…

こんな痛み 何百年と生きてきたけど体験したことないわね…
死にそうなほど痛い…いや死なないんだけど…それでも心は壊れそうなほどだ…
でも…激痛と同時にマサキを救えた安堵もある…だからこれくらいなんともない…わ…。


オフェリア「ぅ…あぁあ! はぁ…ぐぅ…はぁ…ぁあ…あああ! かは…はぁはぁ…っ…痛みが…和らいで…マサキ…何をして…?」

激痛で身悶えていると突然痛みが和らぎ、マサキが何か魔法を使用してるのが見え…
疲労などからどんな魔法か思考を巡らせることもできないが、この包まれてる光が温かく優しいものだけはわかる…
こんな心地いい温もり…生まれて初めて…。


オフェリア「マサキ あなた……ふふ…あなたには心を救ってもらったからね…その恩を少しでも返せたならよかったわ…。

ふぅ…まったくあの男は…見たいもの見たらすぐに消えちゃって…まぁ役にはたったけど…あいつにも借りができちゃったわね…。

……んっ…あのさマサキ…私ちょっとまだ動けそうにないの…だから…その…よ、よかったら手を握っててくれない…かしら…?」

マサキの涙を見て少し驚くも…私は穏やかに微笑み、彼女に優しく話しかけて…

そしてパラドックスが消え、私はジト目になりながら軽く息を吐き…
マサキを救えたこと、そして彼女の疑問に答えてくれたところだけは感謝を…

膝枕から感じるマサキの温もりが心地よく、もっとそれを感じたいと…私は初めて誰かに甘えてみせて…。
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