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第7節 過去編 人魔大戦 キールとマサキ
第90話 シリウス=ブライト
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『4名負傷!』『スタイルズがやられた!』『衛生兵!はやく来てくれ!』『押されてるぞお!!』『かましたれ!!』
喧騒に血の匂いと鉄の匂い、様々な怒声が飛び交う。銀色の細剣を振るいながら、負傷した部下を庇うため前に出る。
アイリス「くっ……!(数が多すぎるっ!)」
通り過ぎ様に悪魔属のガーゴイルを一瞬で切り裂きながら、身体を回転させ力を込めた一撃で、オークを切り裂く。
倒れた教え子の剣を拾いそれを渾身の力で投擲し止めをさされかけている部下を救い、同時に背後の敵を刺し貫く。そのまま剣を引き抜くと、禍々しい紫色の返り血液が彼女の頬を汚す。
アイリス「はぁあ……!我が剣に宿りて眼前の敵を食らえ!貫け、白光の槍っ!!」
銀色の剣が発光し、4本の光の魔力槍が前方の敵を凪ぎ払う。
1人の女騎士が敵を切り伏せながら駆けてくる。
『先生!リネット副長から報告!右翼部隊、壊滅的打撃っ!陣形機能せず!凄まじい強さの敵に圧倒されています!』
アイリス「私が右翼に回るから、残像右翼部隊は後退!態勢を立て直し、左翼部隊に合流し、援護っ!くっ!
(やられた……!やっぱり、スタイルズ部隊を挑発したのも、私たち本隊を引っ張りだすための布石……!)」
銀色の剣が伝令の騎士の背後のオークを刺し貫く。すぐに伝令役の騎士について右翼に回ると、1人の女騎士が赤鬼のような魔族に首もとを掴まれ力なく吊るされている。
『そ、そんな……り、リネット副長……っ!』
アイリス「危ないっ!」
相手がリネットを放り投げ伝令役の女騎士へ攻撃に移るのを見逃さず、彼女を庇い前に出て、すかさず凄まじいスピードで切り結ぶ。
アイリス「うぁっ!!痛っ……!!やっぱり……魔王軍幹部の…!お前は私がやる……!」
ブシュッ!と音を立てて鎧の胸元が破壊され、鮮血が吹き出て痛みに顔を歪めながらも、殺意を持った冷たい瞳をぶつけ、振り向き剣を構えなおす。
「教え子がやられて目が覚めたか?人間……♪」
ーーーー
オーレリア「ふぅ…そうか…だが私が命惜しさにおとなしくしてる奴だと思うか?
私は自分の命より…キール隊長やマサキ隊長…若い者らの命の方が、王国の未来にとって大事だと思ってる。
そのうち聞ける時があったら聞くさ、心配は感謝しておく。」
警告は素直に感謝するも、私は聞ける雰囲気があった時は聞けたらいいなと思っていて。
自分より若い者らの方が未来をよりよい方向に持っていけると考え、キール隊長を何からか分からないが救えるなら危険なんて気にしなくて。
オーレリア「うぐ…確かにキール隊長を放ってはおけないが……そうか…それでは間に合わない…か…。
あいつ…? そのあいつというのはそれほど強いのか…?」
キール隊長の側を離れるわけにはいかなく、そして2日かかると言われ諦めかけ…自分一人では相変わらず何も変えられていなくて。
実際にまだ会ったことはないが、私より強いとされるアイリスが苦戦する相手に心当たりがあるのかと聞いて。
ーーーー
「……南方の新興国、『魔術』ではなく、われわれがたどり着いていない『化学』を保持すると言われる機械族の王。」
オブライエンの声が響く中、彼女が吐いた白煙にほんの少しではあるが映像がぼんやりと浮かび上がる。
アイリスの白銀の剣が敵の片腕を奪うも、切断面からバチバチと音と火花が走るのみで敵の表情は変わらず、むしろ笑みを浮かべたまま手のひらから強力な一筋の閃光を発する。
「『機族王』エルメス。私らには未知の技術の数々を披露してくれるだろうねぇ……何しろ、奴らは特殊だ。そりゃあ、アイリス君は強いよ?伊達に王国剣術指南役を勤めちゃいない。だけど」
光が晴れると、鎧ごとアイリスの身体を貫いたのか細い円柱上の風穴がいくつか空き口から辛そうに血を吐き、それを片腕で拭う。
対しているエルメスも身体の様々な箇所が切断され、深々とダメージをおっているものの、アイリスとは対象的に痛覚がないのか表情は涼しげ。
「……私の予想じゃあ、相討ち。かな」
ーーーー
アイリス「……はぁ、はぁ……くっ、魔力核を……あはは…一難去ってまた一難…だね。敵の将軍を破壊したから、戦意喪失……とはならないか」
胸元を押さえながら苦しげに白銀の剣を杖になんとか立ち上がる。
渾身の一撃で敵の幹部をバラバラに破壊して退けたものの、魔力を生み出す自身の魔力コアを破壊され、魔力の流出…身体の数々の負傷と合わせ、疲労に顔を歪める。
自分の部隊は総崩れと言っていい、敵の将軍をバラバラにしたのに悲鳴しか聞こえないのはその証拠だ。帰ってダメージレポート(部隊損耗状況)を聞くのが恐ろしい。
そもそも、急いで撤退命令の合図を出したいが、そうさせてくれるほど敵の軍勢は少なくない。
アイリス「……私もここまで……ってことかな。悔しいけど…」
ーーーー
オーレリア「科学に…機械…? っ…!?」
あまり聞きなれない言葉に私は首を傾げ、浮かび上がる映像に驚いて。
オーレリア「なる…ほど…確かにこれは…脅威だな…。
(どんなに傷つけても こたえない…そんな奴らが戦場に…。)」
浮かび上がる映像からエルメスとアイリスの死闘を目の当たりにし、機械や科学というものがどのようなものかを理解して…。
………。
『七翼流 闇の型っーー連撃必殺 重力剣』
アイリスが諦めかけたその時…背後から複数回の轟音がなり響き、それと同時に大柄の男がアイリスの目の前に跳躍してきて。
大柄の男「ーーー奥義 光翼剣っ!」
大柄の男が大剣を構えると刀身部分が光輝き、鍔の部分には白き光の翼が現れて。
輝く大剣を振り降ろすと一筋の光が走り…その光の翼纏う一太刀で密集していた敵軍を切り裂き、粉々に吹き飛ばして。
大柄の男「がはは…キール殿から聞いておった通りのべっぴんさんようだ。
お主がアイリス殿であっておるか?」
目の前にいた敵たちを斬り伏せたのち、大柄の男はアイリスの方を向いて。
大柄の男はアイリスのことを知っているようで、その口からはキールの名前もでて。
大柄の男「さて…一から説明したいところだが、そうはいかぬようだな。
退路はすでに作ってある。こやつらはワシに任せて お主らは撤退するがいい。」
アイリスの怪我の容体をちらりと確認し、彼女に撤退するように促し、大柄の男はまだ残る敵軍の方へと向き直り。
最初に響いた爆音はこの大柄の男によるものらしく、大柄の男は光纏う大剣の切っ先を敵軍へと向けながら言い放ち…。
………。
ぼんやりと浮かび上がる映像に大柄の男が映るのを見ると…
オーレリア「あれは…まさかシリウス殿…!?」
私はその姿に驚いて…映る大柄の男とは面識があって。
シリウス=ブライト
男性
180cm
ギザギザした黒髪
大柄な体格に白と青の着物姿
ギルドのAランク冒険者
二つ名 光の剣聖
流派 七翼流剣術
ーーーー
アイリス「はぁ……はい、助かりましたシリウスお爺様♪お噂はかねがね聞き及んでいます……やっぱりダメか、私はもう魔法を……。それなら……!」
トスッとその場に座り込みながら、初対面にも関わらず茶目っ気のある疲れた笑顔を浮かべ口元の血を拭う。
そのまま詠唱をするが、魔力が沸かず魔法を使用不能になったことに気づき懐から緊急用の赤い信号弾(レイフィールド隊、総員撤退命令)を打ち上げる。
アイリス「よし……危ないところをありがとうございました……光の剣聖の戦いを拝見できないことを申し訳なく思います……う……」
左右の肩を部下の騎士に支えられ、力なく顔をうつむき意識が遠退いている様子をみせる。
そのとき更に土煙をあげ軍勢がこちらに駆けてくる。
リュネメイア「ものども!この一戦にてブリキの玩具をバラバラに破壊せよ!我がレムグラスト隊、妾に続くがよい!」
目元のみの仮面、豪華絢爛な着物を羽織る女性が命じると瞬く間に敵味方入り乱た戦いになる。
リュネメイア「無様よのアイリス……常日頃から本気で相手を殺そうとすれば、そのような手傷も負わないであろうに。
だからお主は甘いのだ……!はやく砦に連れ帰り衛生兵の処置を。
……主は相変わらずよシリウス」
気絶したアイリスを苛立ちながらも心配する様子を見せ、シリウスに向き直り呆れた表情をみせる。
ーーーー
シリウス「ワシはまだ38だが…まあいいか。
お主の強さも聞いておるぞ、いつか手合わせしてみたいところだが…ふむ……まあ笑えてるのならひとまずは大丈夫か。」
年齢を口にするも、お爺様 呼びを気にすることなく受け入れて。
強者であるアイリスと手合わせしてみたいと言い…彼女が魔法を使えなくなってる様子に気づくも、笑顔を浮かべれてるので一応は安心かと思って。
シリウス「礼ならキール殿に言うがいい、彼女からの依頼でワシはここへ来たのだからの。
…落ちたか…それではアイリス殿を頼むぞ……むっ…?」
お礼を言われるも キールの依頼でやって来たことを口にし、心配しているキールにお礼と無事だったと顔を見せて 安心させろ と気遣い。
アイリスが気を失ったのを見届けると部下に彼女を任せ、まだいる敵勢を倒そうと剣を構える…と、見覚えのある女性と軍勢がやってきて。
シリウス「がはは! リュネメイア殿も相変わらず素直ではないと思うがの。
しかし…まさかこんな大物まで来ているとは思わんかった…機族王…とか言ったか…?」
気を失ってるアイリスにいろいろと言うも 彼女を心配しているのがわかり、相変わらず素直ではないなと笑ってみせて。
アイリスがバラバラにした幹部らしい残骸を見て、これが魔力を使わずどうやって動いていたか構造もわからなく。
ーーーー
リュネメイア「ふっ……敵の正体など関係あるまいよ。ただ眼前のブリキをバラバラにしてしまえば終わる話。
この『魔剣公主』……敵に情けなど持ち合わせておらぬ。そこの甘ったれと違いの」
剣を振るい襲い来る魔族を両断し、小さく笑うと先陣を切って魔族の軍勢に突撃する。
シリウス「ふっ 確かにその通りだ! 奴らが敵であるなら斬る…至極 簡単なことだわい!」
先陣を切って突撃していく彼女を見ながら単純なことだなと笑い、シリウスも剣で敵を薙ぎ払いながら戦場を駆けていき…。
援軍に士気を上げたレイフィールド隊の残存兵力は、レムグラスト隊、シリウスと協力し、敵の侵攻を押し戻した。
こうして『人魔大戦』の幕は上がることになる……。
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