80 / 349
第6節 過去編 エリシアとマリスミゼル②
第79話 ギランバルトとお付きの女性
しおりを挟む騎士学園戦闘訓練場。
開けた大きなグラウンドには、学生同士の模擬戦闘訓練が始まっているため、ほとんどの生徒が集まっていた。
中でもアイリス……それにリュネメイアとか言ったか。末の後輩たちは粒揃いが多いようだ。見事な剣技に魔法の応酬であった。
マリスミゼル「やはり、全学生と教官が一同に会するというものは壮観です。そうは思いませんか、エリシア?」
本日の自分の対戦相手となる彼女に話をふる。
私としてはエリシアなら心置きなく戦に興じることができるため、下手な相手よりは気楽なものだ。
マリスミゼル「ご覧なさい。王国騎士団に…教会騎士団、それに…ふふ、皇太子殿下に姫殿下までお見えですね。
まあ、この試合は私たち学生の卒業後のスカウトの役目も兼ねている…と言ったところでしょう。あら、緊張しているのですか?♪」
一段高く備えられた来賓席には、各機関の団長や王族が軒並み身を連ね、御前試合という形になる模擬戦闘戦を前に彼女に笑いかける。
ーーーー
エリシア「あ、ああ そうだな…後輩たちの練度も高い…特にあの2人はすごいな…あの頃の私だとあの域には達していなかった。」
マリスに話をふられ、私は緊張した様子で答えていく。
アイリスとリュネメイアという後輩を見て、あの歳の私より強いなと口にして…なぜなら"今の戦闘スタイル"になる前だからで。
エリシア「それは…うん 少し…いや かなり…かな…。
依頼とかで騎士の仕事とかしたりしたことはあるけど、今までこんな大勢が見てる中で戦ったことないからね…
マリスは緊張してないのか? 普段と同じ…いや 少しテンションが高いか?」
笑みを見せてくれたマリスに、私は緊張しているとこくりと頷き。
でもマリスと会話していると少し緊張が和らぎ、私も笑みを浮かべながら会話を続けて。
ーーーー
マリスミゼル「いえいえ……私も緊張はしています。ただそれ以上に…貴女とこのような大舞台で剣と杖を交わらせることが出来るのが楽しみなのです♪」
ご機嫌な様子で杖を見つめ、エリシアに笑いかける。そのまま時計を見つめると、開始時間が迫っていることに気付く。
マリスミゼル「とにかく。せっかくの機会です……緊張するなんてもったいない。私と貴女だけの時間ですよ?楽しみましょうね♪」
『それでは』と手を軽く振ると、ゲートに向かって彼女は小走り気味に一方のゲートに向かう。
彼女の姿は人混みに紛れ、すぐに見えなくなると入れ替わりにエリシアに気付いたのか、初老の男性が通り掛かる。
初老の男性「おぉ?君は…エリシア君じゃないかね!聞いておるぞ、この前の護送任務では勇敢な活躍を上げたそうではないか。いやー!学生だというのに見事な働き、将来有望なことだ、がっはっはっは♪」
両側に、美女と呼んで差し支えないほどの二人の女騎士を控えさせ、大柄で豪快に笑う初老の男性の胸には、騎士団長のみが着用を許される3本の剣が交差したエンブレムが掲げられている。
初老の男性「どうかね?卒業後は我が王国騎士団に入団せんか?我が王国騎士団は完全実力主義。実力さえあれば、2、3年で幹部に就任もできるぞ。
先ほども、有望な学生……キール君といったか。彼女もスカウトしてきたところでな♪」
明るく豪快な様子を見せ、エリシアに対して卒業後の進路のスカウトをかける。
ーーーー
エリシア「マリス…そうだな…私も君と本気で戦えることが楽しみだ…ふふ 手加減なんかしないからな?
二人だけの…ああ もちろんだ、存分に楽しむことにする。
だが君も知っての通り私は負けず嫌いだ…やるからには勝たせてもらいからな…♪」
マリスの私と戦えると言う言葉を聞き、緊張が解け 私は嬉しそうに微笑みをみせて。
楽しみましょうと言われそれに同意し、そしてやる気に満ちた目をさせて。
エリシア「ん? あなたは…? っ…そのエンブレムは…!
お、お初にお目にかかります…王国騎士団長であるギランバルト殿にそう言っていただき 光栄です…。」
私がマリスが走っていくのを見送っていると、男性に声をかけられて…
しかもそれが王国騎士団長だと気づき、私は姿勢を正し 緊張した様子をみせて。
エリシア「私を…ですか…? それは光栄な話です…そのお話 この後の試合が終わったのち 前向きに検討させていただきます。
(この人が王国騎士団のトップ…そういえばマリスがなんか嫌ってたようだったけ…?)」
普段 あまり丁寧な言葉遣いをしていない自覚があり、しかし騎士団長と話しているので言葉を選びながら 会話をして。
ーーーー
ギランバルト「あー、そう固くならんでくれ♪だが…なるほど、確かに試合前に勧誘とは、ちと不作法だったか。次は君の試合だとか、期待しているぞ。頑張ってくれたまえ♪」
そう言いながら背を向けヒラヒラと手を振りながら、謁見席に向かう。
お付きの騎士も従うが、その内の1人がじっ…と、エリシアを見て佇み厚ぼったい唇に人差し指を当てて小さく呟き、笑いかける。
お付きの女性「…ふふ…♪なるほど…今年は豊作ね。貴女も『候補』よ♪」
ギランバルト「おい、早く来んかリリス!エリシア君が困るだろう」
お付きの女性「……ちゅっ♪ふふ……それじゃ、頑張って♪」
目にも止まらぬスピードでエリシアの背後に立ち、後ろから彼女の頬に軽くキスをすると、妖艶な笑みをエリシアに向け、ギランバルトのもとへ駆けていく。
『次の試合開始時刻まで、五分を切りました。出場選手は至急ゲートまで。繰り返します……次の試合開始時刻まで……』
拡声魔法を使った審判の場内アナウンスが流れる。マリスミゼルが向かったことを考えると、エリシアにゲートに向かうよう促すアナウンスなのは間違いなく。
ーーーー
エリシア「はい ありがとうございます。」
頑張ってくれたまえと言われ、私は頭を下げて 頑張りますと答えて。
エリシア「? えっと…私の顔に何かついてますか…?
えっーーっ!?
(い、いつのまに背後へ…油断してたとはいえ反応すらできなかった…。)」
お付きの女性がこちらを見ていたので、私は首を傾げて尋ねて。
急に視界から消えたと思うと背後からキスをされ、私はその妖艶な笑みを見つめながら驚きを隠せなくて。
エリシア「あれが王国騎士団 騎士団長のお付きか…すごい実力者揃いというのは確かなようだ…しかし…私が候補とはいったい…?
とと、時間か…マリスを待たせるのもあれだ、気合を入れていこうか。」
騎士団長のお付きの女性の実力に関心するも、彼女が言った 候補 とは何か気になって。
気になるが気持ちを切り替え、私はマリスとの大事な試合へと向かって……。
0
お気に入りに追加
104
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子
ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。
Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。
(R18)ふたなりお嬢様の性活
HIIRAGI
恋愛
生まれつきふたなりの体で生活するお嬢様・白石結衣(しらいしゆい)はある日、買い物の帰り道で親に捨てられた松成汐里という少女を拾い自らの使用人として住み込みで雇い入れる。
順調に新たな生活が始まったように見えた2人だったが………。
お嬢様、お仕置の時間です。
moa
恋愛
私は御門 凛(みかど りん)、御門財閥の長女として産まれた。
両親は跡継ぎの息子が欲しかったようで女として産まれた私のことをよく思っていなかった。
私の世話は執事とメイド達がしてくれていた。
私が2歳になったとき、弟の御門 新(みかど あらた)が産まれた。
両親は念願の息子が産まれたことで私を執事とメイド達に渡し、新を連れて家を出ていってしまった。
新しい屋敷を建ててそこで暮らしているそうだが、必要な費用を送ってくれている以外は何も教えてくれてくれなかった。
私が小さい頃から執事としてずっと一緒にいる氷川 海(ひかわ かい)が身の回りの世話や勉強など色々してくれていた。
海は普段は優しくなんでもこなしてしまう完璧な執事。
しかし厳しいときは厳しくて怒らせるとすごく怖い。
海は執事としてずっと一緒にいると思っていたのにある日、私の中で何か特別な感情がある事に気付く。
しかし、愛を知らずに育ってきた私が愛と知るのは、まだ先の話。
社長の奴隷
星野しずく
恋愛
セクシー系の商品を販売するネットショップを経営する若手イケメン社長、茂手木寛成のもとで、大のイケメン好き藤巻美緒は仕事と称して、毎日エッチな人体実験をされていた。そんな二人だけの空間にある日、こちらもイケメン大学生である信楽誠之助がアルバイトとして入社する。ただでさえ異常な空間だった社内は、信楽が入ったことでさらに混乱を極めていくことに・・・。(途中、ごくごく軽いBL要素が入ります。念のため)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる