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第11話女神の記憶

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 異世界に転生してから数日、必ず夢を見る。異世界に転生してくる時に出会った女神の夢を見る。その女神は、何かを言っているが、よく聞き取れない。早く子供を作れとか、作らないと世界が滅ぶとか言っている。何やらその子供が重要なのだという。

「なあ、愛美。女神の夢を見たことあるか?」

「ん、そんなの毎日見てるわよ。子供を作ってその子が世界を救うんでしょ? だから毎日頑張ってるんじゃない」

「そうか。なら、子供の作り方を女神様に教わっておいてくれ」

「そんなの知ってるわよ。まあ、一応聞いてみてあげる」

 キスで子供が出来ると思ってる奴が何を言うか。ツッコミたかったが、やめておいた。癌を治してくれる貴重な相棒だからな。言い争いは極力避けたい。

 宿屋の外が騒がしい。マケナイル国とカッツルール国の戦争はまだ続いているらしい。この町は国境が近いらしく、戦場と近くなる事が多い。戦争前はマケナイル国の兵士や旅行客や商人が多く出入りしていたが、戦争が始まってからはさっぱり来なくなってしまったらしい。カッツルール国も奪われたり奪い返したりのこの町をほぼ見捨てている感じになっており、町の住人もマケナイルとカッツルール双方に友人がいる状態になっている。

「今日は暇ね。ねえ、あなた。ドラゴンの肉も残り半分になってきたし、そろそろ次の獲物獲ってきた方が良くない?」

「そうだな。また向こうからカモネギ状態でやって来ないかな」

 俺は強くドラゴンやって来いやと願ってみた。すると、強い羽ばたき音がした。

「大変だ。ドラゴンが来たぞ!」

 うわーマジで来たかー!

「今度は2匹だー!」

 とりあえず、俺は窓から飛び出した。

「あなた頑張ってー! 女神に言われた通り私があなたの癌を治すから」

 女子高生の応援で何となく力が出た。町の外ではドラゴン2匹が戦っていた。かなり一方的な戦いで、ピンクのドラゴンが黒いドラゴンにやられている。

「弱いものイジメ、ダメ、絶対」

 俺は光の光線をイメージしてみた。すると、何か本当に出た。黒いドラゴンを一刀両断した。黒いドラゴンは断末魔の叫びを上げて空中から落下し、地面に叩きつけられた。

「おお、また奇跡の魔法使い様がドラゴンを倒して下さったぞ!」

 ピンクのドラゴンは空中で一回りすると、ゆっくりと地面に降りた。段々と小さくなって行き、人の形になっていく。白いワンピースを着たピンクの髪の毛の少女になってしまった。

「先ほどは危ない所をありがとうございました。邪悪な龍を光魔法で倒すとはやりますね。他の魔法なら無効化されていたでしょう」

 何となく黒だから光だと思ってラッキーだったようだ。相変わらず何でもありだな俺って。我ながらカッコ悪い。もっと手に汗を握る激戦とか、お互い傷を受けながらも果敢に攻めるとか、そういう熱い何かはないのだろうか。

「いや、いいさ。戦ってた相手は相当悪いのか?」

「ええ、ツイテナイ村を全滅させたり、マケナイル国で暴れ回っておりました」

 黒いドラゴンは村を全滅させたりしていたらしい。悪いドラゴンなら罪悪感を持たずに済みそうだ。

「あ、申し遅れました。私は竜族のリリナと申します。以後お見知りおきを」

「ご丁寧にどうも。俺は杉田源十郎。何やらとても運がいいが、とても弱くてカッコ悪い男だ。こんなんだが、宜しく頼む」

 俺は挨拶を終えて、宿屋で酒をおごった。金は女子高生と山分けでまだまだ沢山ある。

「ぷはー! 人間の酒も中々おいしいですなー」

 竜人リリナは酒豪だった。次々と飲んでいく。樽ひとつ飲み終えてようやく潰れた。金貨1枚酒をおごる事になってしまった。

「お母様もう食べれませんよ。むにゃむにゃ」

 俺は宿屋の親父に部屋の代金を払い、竜人を抱き上げ空き部屋に連れて行った。ドラゴンにも色々いるんだな。今後はむやみやたらに殺すのはよそう。先ずは話し合いからだ。
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