上 下
168 / 179
へっぽこ姫の仲良し作戦⑨ 九章 恋愛編

ヒーローとヒロインの恋の行方

しおりを挟む
今日は久しぶりにオーロラ嬢の手作りマシュマロお菓子が食べられる日だと楽しみにしていたティータイムなのに、何故か私の隣に優雅に紅茶を飲んでいるハウライト兄様と、ニコニコと私に沢山のマシュマロお菓子をくれるオーロラ嬢の間に挟まれている私…。

…気まずい。非常に気まずい!

鈍感な私でもわかる。この二人何かあったのかな?とても冷たい空気が漂っております…。何度も言うけれど、本来原作では主人公の二人は甘い空気を漂わせる筈なのに、甘い空気はマシュマロとお菓子の匂いのみ!

「あの、ハウライト兄様…今日のお仕事は」

「うん?午前中に終わらせたよ。午後からはガーネットはまたレモン姫のところに行ってるし、久々にエメラルドとゆっくりお茶をしたかったから…迷惑だったかな?」

キュルンと悲しげな表情を見せつつ笑顔のハウライト兄様…普通の令嬢ならこんな表情みたら、イチコロだわ!!我が兄ながらカッコいい!私もなんやかんや、ブラコンだと思う。うん。

「私はエメラルド姫様と《二人》でのお茶会楽しみにしてましたけど、ふふ、残念です」

可愛らしい笑顔のオーロラ嬢よ、ハウライト兄様に遠回しに邪魔と言ってる?言ってますよね?
あれ、二人ってこんなに仲が悪かったかな。子供の頃見ていた時とまた随分違う印象で…私はとても気まずい…けど、マシュマロは食べますよ?二人の前にあるマシュマロも食べても気づかないくらい、二人は見つめあ…ではなく笑顔だけど睨み合ってる。

ハウライト兄様はオーロラ嬢に話しかけた。

「医療術師見習いとしてもっとやるべきことがあるんじゃない?そうやって、スキを見せるから他の貴族の男性に言い寄られるだよ」

「…あら、ハウライト王子様こそ。お姉様達から聞きましたけど、この前スリラン家の御令嬢主催パーティーに出席された時、お二人共、とーっても良い雰囲気だったと聞きましたわ。令嬢主催のパーティーに参加する王子様ってお暇なんですね」

「…あれはスリランカ家の当主に挨拶がてらと…いや、君だって、昨日医療術師見習いの男性達とお酒を飲みに行ったらしいね?未婚の女性なのに、誘う彼らの品格を疑うよ。もちろん君が一番だけど」

「…っ!アレはお酒の席ではありません!お食事です!みんなジュースを飲んでました!医療を心掛ける者としてお酒は飲みません!さっきからなんなんですか!?他の令嬢達と仲良くしてればよいじゃないですか!」

「僕はエメラルドに会いに来たんだ。君こそ、いつものように医療術師の男性達と仲良くしてればいいじゃないか」

…とまあ、二人はこんな感じで顔を合わせるたびに口喧嘩をしている。甘い雰囲気ではなく、今にでも戦争が始まるんじゃないかというただ寄らぬ雰囲気…。そんな時、チョコレートを沢山籠に持ってきたプリちゃんが現れた。

「あ、エメッ!ここにいたんだね。オーロラ嬢とティータイムしていると、アンに聞いてチョコレート持ってきたよ」

「プリちゃんっ!…ティータイムどころじゃない!」

プリちゃんは首を傾げながら、ハウライト兄様とオーロラ嬢二人の睨み合いを見て察して苦笑いしていた。


オーロラ嬢はキッとハウライト兄様を睨みつけて席から立ち上がる。

「…もういいですっ!姫様、私はこれにて失礼します!プリムラ王子様もせっかく来てくださったのに、申し訳ありません」

「え?いや、僕はただチョコレートをみんなに…」

顔を真っ赤にしながら、オーロラ嬢はサッと立ち去った。私とプリちゃんは、顔を見合わせてからハウライト兄様に声をかけた。


「「…オーロラ嬢に謝った方がいいよ?」」

「…どうして僕が…」

いや、ハウライト兄様よ…少し動揺してそれティーカップじゃなくてポットだよ…オーロラ嬢に言い過ぎたと思っているはず…。

私はハウライト兄様に声をかけた。

「……ハウライト兄様……あの……ずっと気になってたんだけど、オーロラ嬢の事好きよね?」

そう私が話すと、ハウライト兄様は固まっていた!ビンゴか!!私は固まっている、ハウライト兄様を立たせて「早く謝ってきた方よいよ」と説得してこの場から追い出した。

フウとため息を出す私を見たプリちゃんはクスクス笑っていた。

「プリちゃん、どうしたの?」

「いや、ワタワタしているエメの姿が可愛いらしいなあって」

サラッとそんな事言うプリちゃんに私は耳まで赤くなってしまった。いや、これぐらい小さい時から、似たような事言われてるから大丈夫!なんだけど…プリちゃんに言われると、ちょっぴりむず痒いというか、恥ずかしいかも…。

「…プリちゃん、あの」

「プリムラね」

「ん?何が」

「プリちゃんもいいけど、エメには《プリムラ》と呼んで欲しいかな」

「…え、と。プリ…ムラ」

「うん、さあ、僕達はもう少しだけ一緒にお茶しようか」

そうプリちゃんはニッコリ微笑みながら、私の手首をそっと引っ張り椅子に座らせて、持ってきたマシュマロチョコレートを食べさせてくれた。

……ちょっぴり甘い雰囲気に私は顔を真っ赤にしながら黙ってお菓子を食べていた。なんだか、顔が見れない、そんな日でした。





一方その頃、ハウライトは怒っているオーロラを追いかけて声をかけた。

「オーロラ嬢!」

そうハウライトに呼ばれてピタリと止まり振り返るオーロラは、ハウライトをキッと睨む。そんなオーロラにハウライトは少し深呼吸をして、オーロラを見つめた。

「…どうやら僕は君が気になるらしい」

「はい?」

「最初はエメラルドに《ヒーロー》と《ヒロイン》だからとか言われて、頭の中ではそれは異なる事だし気にしないようにしていたけど…オーロラ嬢…君の前向きな姿勢と自分の夢に向かってる姿が羨ましいという気持ちと尊敬もしてたんだ…」

ハウライトの話に首を傾げるオーロラにハウライトは、申し訳ない顔をした。

「…まずはごめん。君に嫌味を言って。さっきのはただのヤキモチなんだ、君と親しくしている男性を見て嫉妬をしていた」

あまりにも突然態度が変わるハウライトにオーロラは戸惑っていた。

「あ、あの…熱でもあるんですか?」

「え?ないよ」

「……私に謝るなんて…おかしいですよ」

「うん、そう思われてもしょうがないから、今度からは気をつけることにするよ」

ニッコリ微笑みをオーロラに向けるハウライトにオーロラは少しだけ頰を赤らめた。

「…い、今更…なんだかハウライト王子変です!とにかく、もう怒ってなどありませんので!失礼します!」

プイッと赤い顔をしたままオーロラはハウライトの前から立ち去った。



夕食の時間ーー

久しぶりに家族四人との時間だ。私は隣に座っているハウライト兄様に声をかけた。

「ハウライト兄様、オーロラ姉様と仲直りできた?」

私がそう質問をしていると、ガーネット兄様は少し呆れた顔をしていた。

「……またくだらない喧嘩か?」

あー、やっぱりガーネット兄様もハウライト兄様とオーロラ姉様のやりとりみて呆れてたみたい。ハウライト兄様はワインを飲みながらクスッと笑って答えた。

「まあ、あんな風に逃げられると…また追いかけたくなるよね」

そう優雅にワインを飲んでいた…。いや、意味がわからないけど、なんだか更に二人の関係はおかしな事になっているのかなあと感じたよ。そしてパパは「ハウライトも……恋か…」とかなんとか肩を落としていた。

さて、これから先のお二人はどうなることやら…?

私は生ハムサラダをペロリと食べて、その夜は深い眠りについた。





しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】公女が死んだ、その後のこと

杜野秋人
恋愛
【第17回恋愛小説大賞 奨励賞受賞しました!】 「お母様……」 冷たく薄暗く、不潔で不快な地下の罪人牢で、彼女は独り、亡き母に語りかける。その掌の中には、ひと粒の小さな白い錠剤。 古ぼけた簡易寝台に座り、彼女はそのままゆっくりと、覚悟を決めたように横たわる。 「言いつけを、守ります」 最期にそう呟いて、彼女は震える手で錠剤を口に含み、そのまま飲み下した。 こうして、第二王子ボアネルジェスの婚約者でありカストリア公爵家の次期女公爵でもある公女オフィーリアは、獄中にて自ら命を断った。 そして彼女の死後、その影響はマケダニア王国の王宮内外の至るところで噴出した。 「ええい、公務が回らん!オフィーリアは何をやっている!?」 「殿下は何を仰せか!すでに公女は儚くなられたでしょうが!」 「くっ……、な、ならば蘇生させ」 「あれから何日経つとお思いで!?お気は確かか!」 「何故だ!何故この私が裁かれねばならん!」 「そうよ!お父様も私も何も悪くないわ!悪いのは全部お義姉さまよ!」 「…………申し開きがあるのなら、今ここではなく取り調べと裁判の場で存分に申すがよいわ。⸺連れて行け」 「まっ、待て!話を」 「嫌ぁ〜!」 「今さら何しに戻ってきたかね先々代様。わしらはもう、公女さま以外にお仕えする気も従う気もないんじゃがな?」 「なっ……貴様!領主たる儂の言うことが聞けんと」 「領主だったのは亡くなった女公さまとその娘の公女さまじゃ。あの方らはあんたと違って、わしら領民を第一に考えて下さった。あんたと違ってな!」 「くっ……!」 「なっ、譲位せよだと!?」 「本国の決定にございます。これ以上の混迷は連邦友邦にまで悪影響を与えかねないと。⸺潔く観念なさいませ。さあ、ご署名を」 「おのれ、謀りおったか!」 「…………父上が悪いのですよ。あの時止めてさえいれば、彼女は死なずに済んだのに」 ◆人が亡くなる描写、及びベッドシーンがあるのでR15で。生々しい表現は避けています。 ◆公女が亡くなってからが本番。なので最初の方、恋愛要素はほぼありません。最後はちゃんとジャンル:恋愛です。 ◆ドアマットヒロインを書こうとしたはずが。どうしてこうなった? ◆作中の演出として自死のシーンがありますが、決して推奨し助長するものではありません。早まっちゃう前に然るべき窓口に一言相談を。 ◆作者の作品は特に断りなき場合、基本的に同一の世界観に基づいています。が、他作品とリンクする予定は特にありません。本作単品でお楽しみ頂けます。 ◆この作品は小説家になろうでも公開します。 ◆24/2/17、HOTランキング女性向け1位!?1位は初ですありがとうございます!

余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめることにしました

結城芙由奈 
恋愛
【余命半年―未練を残さず生きようと決めた。】 私には血の繋がらない父と母に妹、そして婚約者がいる。しかしあの人達は私の存在を無視し、空気の様に扱う。唯一の希望であるはずの婚約者も愛らしい妹と恋愛関係にあった。皆に気に入られる為に努力し続けたが、誰も私を気に掛けてはくれない。そんな時、突然下された余命宣告。全てを諦めた私は穏やかな死を迎える為に、家族と婚約者に執着するのをやめる事にした―。 2021年9月26日:小説部門、HOTランキング部門1位になりました。ありがとうございます *「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています ※2023年8月 書籍化

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

婚約破棄の後始末 ~息子よ、貴様何をしてくれってんだ! 

タヌキ汁
ファンタジー
 国一番の権勢を誇る公爵家の令嬢と政略結婚が決められていた王子。だが政略結婚を嫌がり、自分の好き相手と結婚する為に取り巻き達と共に、公爵令嬢に冤罪をかけ婚約破棄をしてしまう、それが国を揺るがすことになるとも思わずに。  これは馬鹿なことをやらかした息子を持つ父親達の嘆きの物語である。

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

転生したらチートすぎて逆に怖い

至宝里清
ファンタジー
前世は苦労性のお姉ちゃん 愛されることを望んでいた… 神様のミスで刺されて転生! 運命の番と出会って…? 貰った能力は努力次第でスーパーチート! 番と幸せになるために無双します! 溺愛する家族もだいすき! 恋愛です! 無事1章完結しました!

異世界から日本に帰ってきたら魔法学院に入学 パーティーメンバーが順調に強くなっていくのは嬉しいんだが、妹の暴走だけがどうにも止まらない!

枕崎 削節
ファンタジー
〔小説家になろうローファンタジーランキング日間ベストテン入り作品〕 タイトルを変更しました。旧タイトル【異世界から帰ったらなぜか魔法学院に入学。この際遠慮なく能力を発揮したろ】 3年間の異世界生活を経て日本に戻ってきた楢崎聡史と桜の兄妹。二人は生活の一部分に組み込まれてしまった冒険が忘れられなくてここ数年日本にも発生したダンジョンアタックを目論むが、年齢制限に壁に撥ね返されて入場を断られてしまう。ガックリと項垂れる二人に救いの手を差し伸べたのは魔法学院の学院長と名乗る人物。喜び勇んで入学したはいいものの、この学院長はとにかく無茶振りが過ぎる。異世界でも経験したことがないとんでもないミッションに次々と駆り出される兄妹。さらに二人を取り巻く周囲にも奇妙な縁で繋がった生徒がどんどん現れては学院での日常と冒険という非日常が繰り返されていく。大勢の学院生との交流の中ではぐくまれていく人間模様とバトルアクションをどうぞお楽しみください!

残り一日で破滅フラグ全部へし折ります ざまぁRTA記録24Hr.

福留しゅん
恋愛
ヒロインに婚約者の王太子の心を奪われて嫉妬のあまりにいじめという名の悪意を振り撒きまくった公爵令嬢は突然ここが乙女ゲー『どきエデ』の世界だと思い出す。既にヒロインは全攻略対象者を虜にした逆ハーレムルート突入中で大団円まであと少し。婚約破棄まで残り二十四時間、『どきエデ』だったらとっくに詰みの状態じゃないですかやだも~! だったら残り一日で全部の破滅フラグへし折って逃げ切ってやる! あわよくば脳内ピンク色のヒロインと王太子に最大級のざまぁを……! ※Season 1,2:書籍版のみ公開中、Interlude 1:完結済(Season 1読了が前提)

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。