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へっぽこ姫の仲良し作戦⑧ 八章 家族編
マートルの叫び
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マートルは杖を振りかざし、攻撃するものの圧倒的にプリムラの方が強かった。というより、マートルの様子がおかしくなりはじめた。体が自由に動かなくなり、プルプルと震えだした。
「…はあ!?俺が…こんなチビに負けるわけっ…!!うぐっ!まさか、俺の杖が…」
マートルの杖は粉々になり、さらに耳と口から血が出てきた。そんなマートルにプリムラは
「ねえ、もうやめようよ!こんな事…あのね、お師匠様が教えてくれたんだ。精霊さんとお友達になる子は本当はとてもいいこなんだって…君のね、そばにいるその火の精霊の子…凄く心配そうに君を見てるよ?」
「うるさい!!お前達みたいな奴に何が…っゲホゲホッ…」
口から血を吐き出すマートルを心配そうに見つめるプリムラに
《…奴を殺すか?アレはもうダメだ》
そう耳元で囁くクロだったがプリムラは首を横に振る。
「駄目だよ!クロ、めっ!」
《……ふん、つまらん…》
ブラッドとユーディアライトはマートルとプリムラが闘わない様子を見て
「おい!あの反乱軍の奴、様子おかしくねぇか?」
「以前ハウライトの育て親だったルビーもアレを飲んで自滅してましたよね」
「え、急にまた化け物になるのか!?」
「いや、様子を見る限りですが…多分…あの黒い液体を飲んだせいで逆に弱まってるんですかね??適合してなかったとか…」
「え、俺すっげー前に飲まされて実験されてたけど…体に合わないとあんなんなるのかよ…」
「ある意味ブラッド君は適合者だったのかもしれませんね!」
「…ねぇ、もうやめようよ?みんなにごめんなさいしようよ…」
プリムラはジッとマートルを見つめると、マートルは血を吐きながら
「……その……《目》…やめっ…ゲホッ…近寄るな。ムカつく…ムカつくんだよ…」
マートルがフラフラとしながら、プリムラに攻撃しようとした時、マートルの内ポケットから何かが落ちた。
ポスン…
「きゃっ」
「え?何?」
私が目を閉じていたらオーロラと私の上から何やら落ちてきた。
なんだか静かになったような気がしたので目を開けると、私の前にボロボロの小さなウサギの人形が落ちてきたみたい?
「ウサギさんのお人形?」
そっと拾うと上からマートルが
「っそれに触るなあぁぁあぁあああ!!!」
そう叫び私の元へ来たけど、ブラッドとユー君、プリちゃんはすかさず私の前に立ち守ってくれた。マートルは血だらけでもうボロボロの状態で息を切らしながら地面に倒れてしまった。精霊の力を借りても飛ぶことも力も出ず、ただ這いつくばって私に
「…か…せ…。ウーと…スーのものだ……しね…ぜんい…」
虚ろな目でウサギの人形を必死に取り返そうと頑張っていた。このウサギの人形は…とても大事なものなのかな??私はもう立てないマートルのそばへと近寄った。
「お、おい!エメ!危ねーぞ!」
「姫様!そいつ血だらけで、今度何をするかわかりませんよ!」
「…大丈夫だよ。ウサギさん、返さなきゃいけない」
プリちゃんは黙って私の手をギュッと握ってくれて、一緒に倒れているマートルの元へと歩いてくれた。私はそっとマートルにウサギの人形を返しあげた。
ギュッとウサギを握りしめるマートルはエメラルドとプリムラを見て呟いていた。
「………ムカつく…その目…
ー…俺は間違ってなどない。みんな悪いんだ。みんな……
ウー…………スー………」
「にーちゃん!にーちゃん!きょうね、沢山、とむぎころし貰えたよ!」
「にーちゃん!にーちゃん!あたちたちはね、畑のね、お手伝いをしたらね、おばたんにね、お礼に一本もらえたよ!ウサギさんもてつだいしたもんねー?」
「おっ、ウー!スー!ウサギさんも偉いな!今日は焼きとうもろこしだな」
「「とむぎころしー♪♪」」
俺と同じ青い髪の毛でやんちゃで小さな可愛い弟ウートンと、ウサギの人形が大好きな最近おませな可愛い妹スートンと三人で、どこの国にも属さない辺境のこの小さな村に俺達は身を寄せていた。
……親はもういない。俺達を捨てたんだから。ウーとスーはまだ捨てた親達を信じて待っていた。もう戻ってこないのにずっと信じている。でも傷つくのを見たくないから、まだ何も言わない。俺がこの子達を守るって決めてたから。
「マートル君、今日も助かったよ!火をおこせるなんて、珍しいもんなあー精霊様に好かれてるとは!将来大物だな!明後日もよろしくな。はいよ、今日のお駄賃!」
「おじさん、ありがとう!これで明日のご飯食べれそうだよ」
「おや、マートルご苦労様。ウチで売れ残ったパンの耳でもいるかい?」
「パン屋のおばちゃん!いいの?すっごい助かる!ありがとう!またなんか困ったら俺手伝いいくよ!」
「しっかし、おまえさんもまだ子供なのに大変だなあー。あぁ、そうだ、今日は近くのペラルゴニウム国で新しい女王が決まったみたいだ。まあ、俺達みたいな貧乏人には関係ねえが、親戚の奴がお祝いだと芋と酒を貰ったが少し持っていくか?あ、酒じゃなくて芋な。ウートンとスートンにもってけや」
「おじさん!ありがとう!」
「女王が新しくなったためか、今少し治安悪いみたいだからお前達兄妹気をつけろな?」
「あらあら、なんだい、大丈夫さ!ここの村まで誰も来やしないさ!」
村のおじさんとおばさん達に頭を下げて俺はウーとスーが待つ家に向かった。
「沢山のサツマイモを貰った!このサツマイモを沢山茹でてサツマイモケーキを作ろうかな?ウーとスーはサツマイモ大好物だし。お前も食べるか?」
小さな火の精霊はニコニコしながら俺の周りを飛び回っていた。
俺は小さい頃から火の精霊とは仲良くなれた。火の精霊の力を借りて、村の手伝いをしたり、少し出稼ぎをしたりして助かっている。火の精霊に俺は
「お前もいつもありがとうな!ウーとスー喜ぶよな!」
火の精霊もニッコリ微笑み、一緒に家に帰るとウサギの人形を大事そうに持っているスーがパタパタと走り目をキラキラしながら満面な笑みで
「にーちゃん!おかーり!うわわわあ!芋だ!スー!!きーてー!にーちゃんがお芋さん沢山もらったよおお!パン耳もあるう!!」
「うわあ!!沢山だね!たっくさーん!」
「はは、ほらやっぱり喜んでいる」
サツマイモを蒸して、潰して丸い入れ物に詰めこんで形を整えて作った。ケーキとやらは食べたことがないけれど、多分ケーキっぽくはなったかな?
「お芋のケーキ!?」
「いっも♪いっも♪今日はすっごーく豪華だねえ!にーちゃん!早く一緒に食べよう!」
「兄ちゃんは、さっき沢山食べたからウーとスーが食べていいよっ」
ボロボロで穴だらけの家だけど、とても楽しく生活をしていたんだ。ウーとスーが笑って、お腹いっぱい食べれて幸せなら良かったんだ。
なのに……大人なんて信じてたのが間違いだったんだ。
ウーとスーと一緒に寝ていると、夜中に村のみんなの叫び声が聞こえてきた。
「ヒィィ!た、助けてくれ!!盗賊だ!!にげっ…」
「ギャァアアアアアアアアア!」
パッと起きて外に出ると、村の方から火が見えた。沢山の村人が襲われている!
「んー…にーちゃん?どうたの?おねしょ?」
「にーちゃん?」
固まっていた俺はハッとウーとスーのほうを振り向いて二人に
「いいか!絶対外にでるな!兄ちゃんの言うこと聞けるな?」
「え?う、うん?」
俺はいつもお世話になっている村人達を助けようと走った。沢山の人が倒れていた。誰か、いないのか!?燃えている家の前を通り過ぎると、村人数人が盗賊に捕まっていた。
「ギャハハ!こりゃ、奴隷市場に売れるな!」
「親分!子供もいまっせ!」
「ヒィ!俺の娘は勘弁してくれっ!」
「わ、私の息子は病気がちなんだ!金になりません!」
盗賊何人かは大人達を殺して笑っていた。俺が村人達を見つけた時、パン屋のおばさんは俺の存在に気付いた。
「……っ…そ、そこにいる子!!私は知ってるよ!そこに立ってる子は精霊様に好かれてんだ!私の息子より売れます!」
……え?おばさん…?
「あ、あぁ!そうだ!あの子!あの子は特別な力持ってる!奴隷にするなら、あの子だ!それと小さな妹とお、弟もいる!」
「そ、そーだ!だから私達を見逃してくれ!殺さないでくれ!」
村の大人達は我先と言わんばかりに、俺の方に指をさしていた。盗賊達はニヤニヤ笑いながら、俺のお腹を蹴り
「…ガハッ!!」
「よーし!なんか向こうの方にも子供いるみたいだ!探せ!」
まだ何も言ってないのに、盗賊達は俺の顔を何度も何度も殴った。…なんで?
悪い事していないのに?なんで?殴られてるのに、村の人達は目を逸らすの??
「…やめっ…弟と妹には…」
「ギャハハ!黙れ!」
「…ウッ…!」
「にーちゃん!!にーちゃん!!」
「痛い痛い!うぁあああん!やだやだやだ!」
盗賊達はウーとスーを襲い捕まえてた。
「……やめっ…ぐはっ!」
止めようとしたけれど、また蹴りを入れられて動けなくなった俺に盗賊は
「奴隷は黙れ!!おい、そのちびっ子達は奴隷っつーより、あれかな??臓器売買が一番いいな!綺麗にしとけよ!」
やめて…。なんで…。俺の大事な家族なんだ。たった三人だけの…家族なんだ。
「俺幼女趣味なんだよなあー♪臓器売買する前に可愛がるかあー!」
「うわあ、きたよ!お前の悪いとこ!ギャハハ」
やめてくれ。…大事な弟と妹なんだ…
「に、にーちゃん!助けて!」
「うああん!やだよ!やだよ!…ギャァアアアアアア!!!」
……俺に力がないから。
「「にーちゃん…!!」」
……俺が弱いから……駄目な兄ちゃんだから………大人達のせいで、、、弟と妹が目の前で襲われて…殺されてしまったんだ。弱いから。
ウサギの人形だけが…俺の手元に残った。
結局村人の大人も全員殺され、生き残った子供何人かと俺は奴隷市場へと売りだされていた。
生きる気力もない時に、精霊士テスラ…後の師匠と呼べるそいつに会ったけれど…大人なんて信用できない。すぐに人は裏切るんだ。利用するだけして、力を使いこなせるようになった時俺はテスラの元から去り……盗みや殺しをして生活をフラフラしていた時、モルガ様に声をかけられて、そして
リビアングラス様に出会った。
彼が俺の救世主だ。全て壊してくれる人だ。
俺は間違えてない。みんなが悪いんだ。
みんな死ね。こんな世界なんていらない。
それなのに……なんで…あのチビ二人の目は、
似ているんだろうか。
真っ直ぐにみんなを信じているあの《目》は……
「ウー……スー……いま…にいちゃん…そっち…」
マートルは私とプリちゃんのほっぺたを優しく触り、そう呟いた後一瞬で灰になった。
「……マートル…プリちゃんと私を誰かと間違えてたのかな…」
「うん、多分」
よくわからないけど、私はポロポロ泣いた。
マートルの悲痛な叫びが聞こえたようだった。
小さなウサギの人形だけが、ただ寂しく地面に残っていた。
「…はあ!?俺が…こんなチビに負けるわけっ…!!うぐっ!まさか、俺の杖が…」
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「ねえ、もうやめようよ!こんな事…あのね、お師匠様が教えてくれたんだ。精霊さんとお友達になる子は本当はとてもいいこなんだって…君のね、そばにいるその火の精霊の子…凄く心配そうに君を見てるよ?」
「うるさい!!お前達みたいな奴に何が…っゲホゲホッ…」
口から血を吐き出すマートルを心配そうに見つめるプリムラに
《…奴を殺すか?アレはもうダメだ》
そう耳元で囁くクロだったがプリムラは首を横に振る。
「駄目だよ!クロ、めっ!」
《……ふん、つまらん…》
ブラッドとユーディアライトはマートルとプリムラが闘わない様子を見て
「おい!あの反乱軍の奴、様子おかしくねぇか?」
「以前ハウライトの育て親だったルビーもアレを飲んで自滅してましたよね」
「え、急にまた化け物になるのか!?」
「いや、様子を見る限りですが…多分…あの黒い液体を飲んだせいで逆に弱まってるんですかね??適合してなかったとか…」
「え、俺すっげー前に飲まされて実験されてたけど…体に合わないとあんなんなるのかよ…」
「ある意味ブラッド君は適合者だったのかもしれませんね!」
「…ねぇ、もうやめようよ?みんなにごめんなさいしようよ…」
プリムラはジッとマートルを見つめると、マートルは血を吐きながら
「……その……《目》…やめっ…ゲホッ…近寄るな。ムカつく…ムカつくんだよ…」
マートルがフラフラとしながら、プリムラに攻撃しようとした時、マートルの内ポケットから何かが落ちた。
ポスン…
「きゃっ」
「え?何?」
私が目を閉じていたらオーロラと私の上から何やら落ちてきた。
なんだか静かになったような気がしたので目を開けると、私の前にボロボロの小さなウサギの人形が落ちてきたみたい?
「ウサギさんのお人形?」
そっと拾うと上からマートルが
「っそれに触るなあぁぁあぁあああ!!!」
そう叫び私の元へ来たけど、ブラッドとユー君、プリちゃんはすかさず私の前に立ち守ってくれた。マートルは血だらけでもうボロボロの状態で息を切らしながら地面に倒れてしまった。精霊の力を借りても飛ぶことも力も出ず、ただ這いつくばって私に
「…か…せ…。ウーと…スーのものだ……しね…ぜんい…」
虚ろな目でウサギの人形を必死に取り返そうと頑張っていた。このウサギの人形は…とても大事なものなのかな??私はもう立てないマートルのそばへと近寄った。
「お、おい!エメ!危ねーぞ!」
「姫様!そいつ血だらけで、今度何をするかわかりませんよ!」
「…大丈夫だよ。ウサギさん、返さなきゃいけない」
プリちゃんは黙って私の手をギュッと握ってくれて、一緒に倒れているマートルの元へと歩いてくれた。私はそっとマートルにウサギの人形を返しあげた。
ギュッとウサギを握りしめるマートルはエメラルドとプリムラを見て呟いていた。
「………ムカつく…その目…
ー…俺は間違ってなどない。みんな悪いんだ。みんな……
ウー…………スー………」
「にーちゃん!にーちゃん!きょうね、沢山、とむぎころし貰えたよ!」
「にーちゃん!にーちゃん!あたちたちはね、畑のね、お手伝いをしたらね、おばたんにね、お礼に一本もらえたよ!ウサギさんもてつだいしたもんねー?」
「おっ、ウー!スー!ウサギさんも偉いな!今日は焼きとうもろこしだな」
「「とむぎころしー♪♪」」
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……親はもういない。俺達を捨てたんだから。ウーとスーはまだ捨てた親達を信じて待っていた。もう戻ってこないのにずっと信じている。でも傷つくのを見たくないから、まだ何も言わない。俺がこの子達を守るって決めてたから。
「マートル君、今日も助かったよ!火をおこせるなんて、珍しいもんなあー精霊様に好かれてるとは!将来大物だな!明後日もよろしくな。はいよ、今日のお駄賃!」
「おじさん、ありがとう!これで明日のご飯食べれそうだよ」
「おや、マートルご苦労様。ウチで売れ残ったパンの耳でもいるかい?」
「パン屋のおばちゃん!いいの?すっごい助かる!ありがとう!またなんか困ったら俺手伝いいくよ!」
「しっかし、おまえさんもまだ子供なのに大変だなあー。あぁ、そうだ、今日は近くのペラルゴニウム国で新しい女王が決まったみたいだ。まあ、俺達みたいな貧乏人には関係ねえが、親戚の奴がお祝いだと芋と酒を貰ったが少し持っていくか?あ、酒じゃなくて芋な。ウートンとスートンにもってけや」
「おじさん!ありがとう!」
「女王が新しくなったためか、今少し治安悪いみたいだからお前達兄妹気をつけろな?」
「あらあら、なんだい、大丈夫さ!ここの村まで誰も来やしないさ!」
村のおじさんとおばさん達に頭を下げて俺はウーとスーが待つ家に向かった。
「沢山のサツマイモを貰った!このサツマイモを沢山茹でてサツマイモケーキを作ろうかな?ウーとスーはサツマイモ大好物だし。お前も食べるか?」
小さな火の精霊はニコニコしながら俺の周りを飛び回っていた。
俺は小さい頃から火の精霊とは仲良くなれた。火の精霊の力を借りて、村の手伝いをしたり、少し出稼ぎをしたりして助かっている。火の精霊に俺は
「お前もいつもありがとうな!ウーとスー喜ぶよな!」
火の精霊もニッコリ微笑み、一緒に家に帰るとウサギの人形を大事そうに持っているスーがパタパタと走り目をキラキラしながら満面な笑みで
「にーちゃん!おかーり!うわわわあ!芋だ!スー!!きーてー!にーちゃんがお芋さん沢山もらったよおお!パン耳もあるう!!」
「うわあ!!沢山だね!たっくさーん!」
「はは、ほらやっぱり喜んでいる」
サツマイモを蒸して、潰して丸い入れ物に詰めこんで形を整えて作った。ケーキとやらは食べたことがないけれど、多分ケーキっぽくはなったかな?
「お芋のケーキ!?」
「いっも♪いっも♪今日はすっごーく豪華だねえ!にーちゃん!早く一緒に食べよう!」
「兄ちゃんは、さっき沢山食べたからウーとスーが食べていいよっ」
ボロボロで穴だらけの家だけど、とても楽しく生活をしていたんだ。ウーとスーが笑って、お腹いっぱい食べれて幸せなら良かったんだ。
なのに……大人なんて信じてたのが間違いだったんだ。
ウーとスーと一緒に寝ていると、夜中に村のみんなの叫び声が聞こえてきた。
「ヒィィ!た、助けてくれ!!盗賊だ!!にげっ…」
「ギャァアアアアアアアアア!」
パッと起きて外に出ると、村の方から火が見えた。沢山の村人が襲われている!
「んー…にーちゃん?どうたの?おねしょ?」
「にーちゃん?」
固まっていた俺はハッとウーとスーのほうを振り向いて二人に
「いいか!絶対外にでるな!兄ちゃんの言うこと聞けるな?」
「え?う、うん?」
俺はいつもお世話になっている村人達を助けようと走った。沢山の人が倒れていた。誰か、いないのか!?燃えている家の前を通り過ぎると、村人数人が盗賊に捕まっていた。
「ギャハハ!こりゃ、奴隷市場に売れるな!」
「親分!子供もいまっせ!」
「ヒィ!俺の娘は勘弁してくれっ!」
「わ、私の息子は病気がちなんだ!金になりません!」
盗賊何人かは大人達を殺して笑っていた。俺が村人達を見つけた時、パン屋のおばさんは俺の存在に気付いた。
「……っ…そ、そこにいる子!!私は知ってるよ!そこに立ってる子は精霊様に好かれてんだ!私の息子より売れます!」
……え?おばさん…?
「あ、あぁ!そうだ!あの子!あの子は特別な力持ってる!奴隷にするなら、あの子だ!それと小さな妹とお、弟もいる!」
「そ、そーだ!だから私達を見逃してくれ!殺さないでくれ!」
村の大人達は我先と言わんばかりに、俺の方に指をさしていた。盗賊達はニヤニヤ笑いながら、俺のお腹を蹴り
「…ガハッ!!」
「よーし!なんか向こうの方にも子供いるみたいだ!探せ!」
まだ何も言ってないのに、盗賊達は俺の顔を何度も何度も殴った。…なんで?
悪い事していないのに?なんで?殴られてるのに、村の人達は目を逸らすの??
「…やめっ…弟と妹には…」
「ギャハハ!黙れ!」
「…ウッ…!」
「にーちゃん!!にーちゃん!!」
「痛い痛い!うぁあああん!やだやだやだ!」
盗賊達はウーとスーを襲い捕まえてた。
「……やめっ…ぐはっ!」
止めようとしたけれど、また蹴りを入れられて動けなくなった俺に盗賊は
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「うわあ、きたよ!お前の悪いとこ!ギャハハ」
やめてくれ。…大事な弟と妹なんだ…
「に、にーちゃん!助けて!」
「うああん!やだよ!やだよ!…ギャァアアアアアア!!!」
……俺に力がないから。
「「にーちゃん…!!」」
……俺が弱いから……駄目な兄ちゃんだから………大人達のせいで、、、弟と妹が目の前で襲われて…殺されてしまったんだ。弱いから。
ウサギの人形だけが…俺の手元に残った。
結局村人の大人も全員殺され、生き残った子供何人かと俺は奴隷市場へと売りだされていた。
生きる気力もない時に、精霊士テスラ…後の師匠と呼べるそいつに会ったけれど…大人なんて信用できない。すぐに人は裏切るんだ。利用するだけして、力を使いこなせるようになった時俺はテスラの元から去り……盗みや殺しをして生活をフラフラしていた時、モルガ様に声をかけられて、そして
リビアングラス様に出会った。
彼が俺の救世主だ。全て壊してくれる人だ。
俺は間違えてない。みんなが悪いんだ。
みんな死ね。こんな世界なんていらない。
それなのに……なんで…あのチビ二人の目は、
似ているんだろうか。
真っ直ぐにみんなを信じているあの《目》は……
「ウー……スー……いま…にいちゃん…そっち…」
マートルは私とプリちゃんのほっぺたを優しく触り、そう呟いた後一瞬で灰になった。
「……マートル…プリちゃんと私を誰かと間違えてたのかな…」
「うん、多分」
よくわからないけど、私はポロポロ泣いた。
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