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へっぽこ姫の仲良し作戦⑤ 五章 ペラルゴニウム国編

パパの恋

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ピーター国王はかつて王妃が使っていた部屋へきていた。沢山の薔薇と綺麗なアクセサリーが並ぶのを眺めてベッドへ横たわる。

「ローズ…お前に会いたいものだな…」


薔薇の香りをいつもつけている愛しいローズ。この国の聖女だった女性…いつだったろうか。彼女に惹かれていたのは…

「ピーター王子って…次期国王だよな?それなのにいつも黙ってばっかでよくわからない人だよな…」

違う。今凄く緊張をし、お腹がきりきりして痛いだけだ…。

「そっとしときましょう?お一人が好きなのよ」

一人が好きというわけではない。むしろ沢山の人と話をしたいのに…あぁ、まただ。父のように優しく朗らかになりたいのにいつも眉間にシワを寄せてしまう。

一人で学園の裏庭でこっそりと本を読んでいたら…

「あぶない!どいてぇえ!!」

「…??」

声がする方へ上を向くと金髪で瞳は緑色の……綺麗な天使が空から降ってきた…。そう本当に思ってしまったんだ。

フワッと魔力を使い彼女を受け止めて助けてあげると彼女は笑顔で

「ふふ、びっくりしたわよね。木から落ちてきたところを助けてくれてありがとうっ!」

「……」

そう元気よく挨拶をしてくれた。どういたしまして、と言うべきなのだろうか?なんと声をかけるべきだ?怪我はないかと聞くべきなのだろうか。

彼女は私を見てから少し考えて
「ピーター王子、お詫びとして私の好きなお菓子をあげるわ」

「……菓子など食べないが…」

「お詫びですわっ、さあ手をだして」

そっと手のひらを広げ、彼女の綺麗な手が私の手と重なった。

「………先程君は菓子といったな」

「えぇ!そうよ!お詫びに私のお菓子をあげるわ。これも縁だもの、お友達の印よ」

「………キノコだが…」

「キノコね!栄養たっぷり!」

可愛いらしい笑顔だった。これが彼女との最初の出会いだ。彼女と関わってから、沢山の人達と出会った。友人もできた。彼女は本当に太陽のようにキラキラとしている。

夕方になり、帰る頃彼女は夕陽を眺めていた。とても悲しい顔をしていたような……何処か遠くへ行きそうな…そんな感じが少しした。
ローズは不思議な歌を歌っていた。

「夕やけ♪小やけの 赤とんぼ♪
負われて見たのは いつの日か♩

山の畑の 桑の実を
小篭に摘んだは まぼろしか♪

十五で姐やは 嫁に行き
お里のたよりも 絶えはてた♩

夕やけ♪小やけの 赤とんぼ♪
とまっているよ ♪竿の先♪」


とても綺麗な歌声でだけど悲しそうな君の背中がどこか…どこか守ってあげたくなる。

「…ローズ…その歌はなんだ?」

パッと振り返るローズは私の顔を見てクスッと笑いながら

「…ふふ、夕焼けをみたら子供の頃歌うものよ…私の故郷の歌かしら」

「不思議な歌だな」
故郷?故郷はここなのに、何を言っているんだろうと首を傾げた。

「…ねえピーターはもし、もしここではない世界があると信じてる?」

「……?そんなものないだろう…世界はたった一つ。ここだけだ」

そう言うと彼女はただ笑って、一緒に綺麗な夕焼けを眺めていた。

薔薇とキノコが好きな君にもう一度会えたらどんなにいいことだろう。君がいたら、どんなに良かったか…

「会いたい……」


そっと現実に戻ろうと目を開けると

「おや?私もピーター国王に会いたかったですよ。さて、夕方まで何ゴロゴロ怠けてるんです」

「………レピドライト…いつからいたんだ」

「そうですねぇ。かれこれ貴方が思い出に浸っているところからです」

「……最初からだな…」


窓から歌声が聞こえてきた。レピドライトはクスクス笑いながら

「おやおや、姫様が可愛いらしい自作の歌を歌ってますね」


窓から娘と息子達の様子を眺めた。


「ゆうやぁ~♩けこやけえ~の赤とんぼぉ~♪」

「あはは、エメラルドその歌何?」

「夕焼けときたら、このお歌よ!」

クスクスと笑うハウライトと黙って見守るガーネット…

不思議な懐かしい歌を娘が歌っていた。…何故だ??


《ねえピーターはもし、もし…ここではない世界があると信じてる?》



「…そうだな…あるかもしれないな…」


もし…願うとすれば…違う世界があるとすれば…また君に出会えるだろうか。また君に恋していいだろうか。




「あるかもしれないとは何がです?早く書類にサインして下さい」

「………ベッドに押し倒すのをやめろ…レピドライト」
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