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へっぽこ姫の仲良し作戦④四章 聖女編

ルビーの走馬灯

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「ステロイド家からはお前が必ず聖女となれ。わかったなルビーよ」

「聖女となれば、我が家はもっと位の高い貴族となるわ。それに聖女となれば、ピーター王子の次期王妃にもなれるわよ!貴女ならなれるわ!母を喜ばせて頂戴!ふふふ。でもルビー?貴女またローズって子に試験で負けたわよね?いつも二番二番二番!!!私を悲しませないでちょうだい!さあ!罰よ!」

「はい、お父様お母様」

成績は常に優秀であれ、容姿も常に綺麗であれ、何もかも完璧に。それが次期聖女となる私の役目。一番になれば、お父様もお母様も喜んでくれる。失敗は許されない。失敗をすると罰として痛い思いをする毎日。

「ルビー姉様…」

「サファイア?どうしたの?」

私の背中には鞭で叩かれた無数の跡がある。傷を自分の癒しの力で治していたとき、弟のサファイアは心配そうにタオルを持ってきてくれた。

「ふふ、ありがとう…私は大丈夫よ。絶対聖女になるから。そうしたら、お父様もお母様も怒ってばかりでなく、笑ってくれて私達を愛してくれるわ」

「う、うん……」


頑張った。常に嫌われないようにクラスメイトやまわりにも良い顔をしていた。ピーター王子との婚約者も狙っていた。

「ルビー様はやはり美しいですわ!絶対ルビー様が聖女ですから!」

「ふふ、ありがとう」

取り巻きからよく言われる言葉…美しいと言われるのが凄く嬉しかった。誰もが皆、次期聖女は私だと言ってくれた。試験の成績はいつも二番だけど圧倒的に力では私が上だもの!そう私が聖女になる存在、そうすればようやく認めてくれる!…それなのに…

「次期聖女は…ローズ嬢!!」

ワアアアと歓声がなる中私は一人になった。あの取り巻き達もいなくなり、みんな…そう…赤い薔薇がよく似合う金色の髪をした美しいと言われるローズ。

みんなが言う…

「とても優しいローズ様ですわ!」

私だって優しくしてあげたじゃない。何が違うの?

「ローズ様の癒しの力は頼りになる!」

力は私の方が強いはずなのに!

「美しいという言葉はローズ様の為ありますわ!あぁ、ご覧になって!ピーター王子と隣にいるわ!お二人共お似合いだわ!」

美しいのは私で、次期聖女は私でないの?!なんで?!何故!!ピーター王子もまわりにいる奴らも、ローズも私を馬鹿にして!!


「聖女なんてこの国に必要ないと思うわ。みんなで力を合わせていくべきなのよ」

ニッコリ微笑みながらみんなにそう語るローズ…。聖女の座がいらない?!私が欲しかったものを簡単に手にいれたあんたがそれを言ったら…私は!私はなんのために!!!

彼女のまわりにはいつも沢山の人がいて、沢山の人が笑っていた。

だから…王妃となった彼女が憎い。聖女となった栄光を簡単に捨てようとする彼女が憎い。

「ルビー様も一緒に楽しく過ごしましょう!」

笑顔でキノコチョコを渡す、貴女が本当憎い。消えて欲しい。悲しむ姿をみたい、悔しがる姿をみたい。モルガ様と出会い、こんな国はいらないと話あった。だから…私は…


「おぎゃー!!!おぎゃー!!」

「ふふふ…片方の王子…金髪ね…あの女の色だわ…この子にしましょう、そうしましょう」


生まれたばかりのハウライトを自分の子として育てた。この子は王子のくせに力がないみたいだから、もう少ししたら心臓をくり抜いて殺しましょう。

「モルガ様もそうしろと手紙がきてるものね」

そう思っていた。

次の日になったら殺そう。次の日になったらと、殺そうと思いながらも、時だけは過ぎた。
一緒に過ごせば過ごすほど、幸せだった。嘘の塊の生活だけど…とても幸せだった。

「おかあたま!ぼくね、つくったの!ロケットペンダント!みて!ほら!」

「ふふ、あら、ありがとう。綺麗な色ね」

「へへへ、おかあたまはもっとキレイだよ!!」

私はあの女と同じ金髪をしているハウライトの頭を撫でた。ここずっと、行方をくらませて、ひっそりとこの子と過ごしていた。ゆっくりと…穏やかに。

「ねぇ…ハウライト……このまま…私と逃げちゃう?」

キョトンとした顔をする可愛い私のハウライトはニッコリ笑いながら

「おかあたまとなら、どこでおいーよ!いこう!僕ねおかあたまの好きな青いバラのとこ行きたい!」

「うふふ、あら、じゃあ今度一緒にいきましょう」

「あいっ!」


今度なんてない。目の前にはあの女が現れたのだから。

スターダイオプサイト国の王妃であり、聖女であり、ハウライトの本当の母。


それはとても美しい人……真っ直ぐで綺麗な瞳をしている彼女が…とても羨ましかった。





「…さんっ」


あぁ…全身が痛いわ。あの子は大丈夫かしら…。

あの子は……今どこにいるかしら…。


…会いたいわね。坊やに会いたい。


「…おかあさんっ……!」


目の前には目を真っ赤にして涙を流す可愛い息子がいた。あんなに小さな赤ん坊がカッコ良く成長している。

そうか………私…。


聖女とかいらなかった。

ただ認めて欲しかった。

愛して欲しかった。


どこから?

この子だけは…この子が私の希望だったかもしれない。



「…………紳士…たるもの……泣いては…だめよ……」


「おかあ…さ…」



欲しかったのは…望んでいたのは…

『笑いあえる家族』が欲しかった……ただそれだけだったのに。


ねえ……何処で私は間違えたのかしら。


とにかく泣かないで。


「…ハウライト…」
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