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ユリウスの悪夢

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「ユリウス陛下?まあ、どうしたの?ふふ、汗がびっしょりよ。具合でも悪いんですの?」

ベッドの隣りで、優しい声をかけてユリウス国王の背中をさするエル王妃にユリウスは彼女に微笑みかける。

「……いや、遠い昔の夢を見ていた。なんだか…とても大事な…?いや………大事だった」

「……まあ。私より?私の方が大事じゃなくて?私はいつも貴方様の味方よ?大切な人だもの、愛してる人だもの。ねぇ、《私》大事な事って本当にあるのかしら?」

エル王妃はそっとユリウス国王に口づけをする。

「………いや、君が大事だ」


「ふふ。そうね、いいこだわ…さあ、眠りましょう。明日からまた忙しくなりそうだもの」

「……あぁ、おやすみ…」


目を瞑ると、銀髪の少女が泣いていた。手を差し出すと彼女は笑ってくれた。隣りには……同じ金髪の少年も一緒に笑っていた。

……とても大事な人達だった気がする。

いや……俺を陥れようとしていた奴らだったんだ。

馬鹿にして。

見下して。

次期国王の器でないと嘆いてばかりで。

誰も味方などいなかった。


隣りにいてくれてたのは……いつも…優しく隣りにいてくれてたのは……

エル……君だ。君だけが特別な存在。

大事な存在。

愛しい存在。


だけど…何度夢を見ても、弟が…シリウスがこちらを見て、優しく微笑む……何故微笑む。

殺した筈なのに、弟はただ悲しそうに笑う…そんな夢がとても息苦しくて…眠れない。ずっとだ。

「……エル…頭が痛い」

「お可哀想に。愛しい人……私が隣りにいますわ。ゆっくり目を瞑ってくださいませ。大丈夫ですわ」


少しひんやりと冷たい手が心地よい…私はようやく眠る事ができた。毎晩悪夢を見るのはこりごりだ。

……だけど…この手以外で…確か温かく陽だまりのような優しい手を知っていた気がするけれど……もうわからない。ゆっくり…ただ眠りたい。

心の奥で誰かが叫んでいた。小さな金髪の少年…アレは私の小さい頃に似ているようだったきがする。

「早く愚かな俺を殺してくれ!」と。


そう叫んで私に言っていた気がする。



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