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王位継承権をもつ少年
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パチリと目覚めると、私はベッドで寝ていた。ユキちゃんは横で本を読んで私が目を開けた事に気づいたのかニッコリと微笑みながら私のおデコをそっと触る。
「…師匠、寝て汗だくのようですから私がお体を拭いて着替えさせてあげましょうか?」
「や、それは大丈夫よ。ユキちゃん、そしてなんか近いわ」
「気のせいでしょう」
なんだろう、私を心配して好意で言ってるだけなのに、一瞬身の危険を感じたわ。殺気とかそういうのではないんだけど。
コンコン、とドアを叩く音がした。その時何故かユキちゃんは舌打ちをしていた。
「…入っていーか?」
「マルセク、どうぞ」
マルセクは少し気まずそうに部屋へ入ってきた。
何故か重たい空気となっている…。
「……シリウスは亡くなったんだね」
「…あぁ。そうだ。ユリウス達に殺されたんだ」
マルセクの一言で私は体が強張る。…殺された?誰に?まさか、あのユリウスに?
「……いくらアホでも実の弟を殺さないわよ。冗談はやめて!」
ドン!と壁を叩きながら、今にでも泣きそうで悔しそうな顔をするマルセクは私に話す。
「冗談じゃねーよ!お前がドラゴンに殺されたと第二王子、つまりシリウス派の貴族達はユリウス派に次々と汚名を着せられ…反論した者は殺され、家族を殺されそうになる者はただ従うしか…シリウスと俺達は状況を見計らって城から逃げて身を潜めていた。だけど……シリウスが二十歳の時見つかってしまい殺されてしまった。シリウス派はバラバラになったよ。……俺は…シリウス王子を守れなかった…守れなかったんだよ!」
「マルセク……」
私がドラゴンにやられてしまった時、みんなは逃げた。反論するものは、反乱だと言われ殺されて…シリウスは…どんな気持ちでユリウスに対抗しようとしていたのだろう…きっと苦しかった筈だよ…実の兄と対峙しようと…。私がドラゴンを倒して、魔力もあったら……彼を助けられたかもしれないのに。
「…ごめん…」
私がポロポロと涙を流すと、そばにいたユキちゃんは素早く涙を拭いてくれた。
「師匠が謝る必要はありません…ですから泣かないで下さい」
マルセクは私をジッと見つめていた。
「………お前が帰ってきたんだ。買い物にいってる間俺考えてた。もしかしたら……今あのユリウス達をやっつけれるんじゃねーかって」
「マルセク。…でもシリウスはいないから無理よ。あのね、私は確かにユリウスをボコボコにはするつもりよ。でもそれは次期国王をシリウスにしようとも考えていたからよ。私がいたところで、誰もついてこないわ。国民が期待しているのは、魔術師の私でもなんでもないわ。
次なる新しい王よ」
そう私が話すとマルセクは
「ボコボコしたその後とか考えてたんだな!」となんか失礼な事を言ったので私は手元にある枕を彼に投げつけてやった。魔力があったら、ブッ倒してたわね。
「…師匠、いますよ。唯一王位継承権を持つものがいます」
「え、ユリウスに子供いるの?あのエルという女との?それはそれで大丈夫かなあ」
そう私が話すと、マルセクはポケットにしまっているお酒を飲みながら否定した。
「いや、違う。ユリウス達には子供がいない。……シリウスだ。シリウスとリリアの間でできた息子がいる」
シリウスの子供…今の状況から考えて、今一番の王位継承権をもつ子供だわ。そして、ユリウス達はその子の存在を知っているのか…まだわからないけれど、もし存在を知られれば危ない!
「ねえ、リリア嬢は…生きて元気にしてるんだね!?」
「あぁ、リリア嬢がお腹に子供がいることを知っていたから俺達が逃げるように手伝いをした」
まったく魔力がなく、最初は魔力のない令嬢が王子との婚約者に相応しくないと言われていたけれど、基本的に魔力以外はパーフェクトだった。リリア嬢…彼女は生きている。
「リリア嬢と…その子供に会ってみようと思う」
そうマルセクに話すとマルセクは少し困っている様子だった。
「別にいいけど、多分歓迎はされないぞ?」
「あはは。そうだね、彼女は私を嫌ってたものね!でも会いに行こう!ユキちゃん、場所わかる?」
「……師匠の頼みならば」
ユキちゃんにお願いをして、私とマルセク、ユキちゃんは、リリア嬢達の元へと足を運んだ。
また別な町へと辿り着くけど……ここは町というか…隣国のアルフォース国だわ!
「…隣国まで逃げてたの?」
「まあ、ここならまだ安全だと判断した。アルフォースは敵対してる国だし。前はエルフランド国にもいて世話にもなったな」
「…そうなんだ…って、あのユキちゃん…何故また、お姫様抱っこなのかな」
「師匠はまだ病みがりな故、可憐な体を少しでも休む必要があるかと」
「いや、私は元気よ?」
「…師匠、あそこの小さなパン屋ですよ。探してる方達は」
無視かい!?ユキちゃんよ!?
そんな私達のやりとりに、マルセクは笑いながら呆れていた。私達はパン屋の前に着いたけど、お店は、開いていなかった。マルセクはパン屋の右側にある扉の方へと向かう。
コンコンとドアを叩いて何やら合言葉みたいなのを声に出す。
「パンはパンでも食べられないパンはなーんだ!
ハイ!フライパーン!」
そうマルセクが声を出すとドアが勝手に開いた…。いや、それどんな合言葉なの!?
ドアの向こうにいたのは、緑色の髪の女性だった。
「リリア嬢!?」
「……あら…まあまあまあ」
シリウスの婚約者であるリリア嬢だ!私は彼女の方へと抱きつこうとしたが、バタン!とまたドアを閉められた…。
「え、ちょ。リリア嬢!?私よ!ドロシー!」
「そんな方存じません」
「えー!?昔貴族のいじめっ子から助けてあげたじゃない!?」
「昔から私はパン屋で働いてましたわ」
とまあ、拒否られてます。ユキちゃんは今にでも店ごと吹き飛ばそうとしていて、マルセクは慌てて止めていた。
「リリアちゃん!いや、リリアさん!?話だけでもー」
「あなたと関わるとロクな事ないわ!」
「あ、覚えてくれてるのね!」
そう私達が話している時
「……母さんのお客さま?」
そう声をかけられた方を振り向くと、そこには金髪で青い瞳色の少年がいた……少し幼いけれど…まるで……まるで…昔の……
「……シリウス…」
彼が目の前にいるように感じるほど、とても似ていた。
「やはり、私がこの店ごとあの者を亡き者に」
「だあー!ユキ!馬鹿!何嫉妬してんだ!落ちつけ!」
「…師匠、寝て汗だくのようですから私がお体を拭いて着替えさせてあげましょうか?」
「や、それは大丈夫よ。ユキちゃん、そしてなんか近いわ」
「気のせいでしょう」
なんだろう、私を心配して好意で言ってるだけなのに、一瞬身の危険を感じたわ。殺気とかそういうのではないんだけど。
コンコン、とドアを叩く音がした。その時何故かユキちゃんは舌打ちをしていた。
「…入っていーか?」
「マルセク、どうぞ」
マルセクは少し気まずそうに部屋へ入ってきた。
何故か重たい空気となっている…。
「……シリウスは亡くなったんだね」
「…あぁ。そうだ。ユリウス達に殺されたんだ」
マルセクの一言で私は体が強張る。…殺された?誰に?まさか、あのユリウスに?
「……いくらアホでも実の弟を殺さないわよ。冗談はやめて!」
ドン!と壁を叩きながら、今にでも泣きそうで悔しそうな顔をするマルセクは私に話す。
「冗談じゃねーよ!お前がドラゴンに殺されたと第二王子、つまりシリウス派の貴族達はユリウス派に次々と汚名を着せられ…反論した者は殺され、家族を殺されそうになる者はただ従うしか…シリウスと俺達は状況を見計らって城から逃げて身を潜めていた。だけど……シリウスが二十歳の時見つかってしまい殺されてしまった。シリウス派はバラバラになったよ。……俺は…シリウス王子を守れなかった…守れなかったんだよ!」
「マルセク……」
私がドラゴンにやられてしまった時、みんなは逃げた。反論するものは、反乱だと言われ殺されて…シリウスは…どんな気持ちでユリウスに対抗しようとしていたのだろう…きっと苦しかった筈だよ…実の兄と対峙しようと…。私がドラゴンを倒して、魔力もあったら……彼を助けられたかもしれないのに。
「…ごめん…」
私がポロポロと涙を流すと、そばにいたユキちゃんは素早く涙を拭いてくれた。
「師匠が謝る必要はありません…ですから泣かないで下さい」
マルセクは私をジッと見つめていた。
「………お前が帰ってきたんだ。買い物にいってる間俺考えてた。もしかしたら……今あのユリウス達をやっつけれるんじゃねーかって」
「マルセク。…でもシリウスはいないから無理よ。あのね、私は確かにユリウスをボコボコにはするつもりよ。でもそれは次期国王をシリウスにしようとも考えていたからよ。私がいたところで、誰もついてこないわ。国民が期待しているのは、魔術師の私でもなんでもないわ。
次なる新しい王よ」
そう私が話すとマルセクは
「ボコボコしたその後とか考えてたんだな!」となんか失礼な事を言ったので私は手元にある枕を彼に投げつけてやった。魔力があったら、ブッ倒してたわね。
「…師匠、いますよ。唯一王位継承権を持つものがいます」
「え、ユリウスに子供いるの?あのエルという女との?それはそれで大丈夫かなあ」
そう私が話すと、マルセクはポケットにしまっているお酒を飲みながら否定した。
「いや、違う。ユリウス達には子供がいない。……シリウスだ。シリウスとリリアの間でできた息子がいる」
シリウスの子供…今の状況から考えて、今一番の王位継承権をもつ子供だわ。そして、ユリウス達はその子の存在を知っているのか…まだわからないけれど、もし存在を知られれば危ない!
「ねえ、リリア嬢は…生きて元気にしてるんだね!?」
「あぁ、リリア嬢がお腹に子供がいることを知っていたから俺達が逃げるように手伝いをした」
まったく魔力がなく、最初は魔力のない令嬢が王子との婚約者に相応しくないと言われていたけれど、基本的に魔力以外はパーフェクトだった。リリア嬢…彼女は生きている。
「リリア嬢と…その子供に会ってみようと思う」
そうマルセクに話すとマルセクは少し困っている様子だった。
「別にいいけど、多分歓迎はされないぞ?」
「あはは。そうだね、彼女は私を嫌ってたものね!でも会いに行こう!ユキちゃん、場所わかる?」
「……師匠の頼みならば」
ユキちゃんにお願いをして、私とマルセク、ユキちゃんは、リリア嬢達の元へと足を運んだ。
また別な町へと辿り着くけど……ここは町というか…隣国のアルフォース国だわ!
「…隣国まで逃げてたの?」
「まあ、ここならまだ安全だと判断した。アルフォースは敵対してる国だし。前はエルフランド国にもいて世話にもなったな」
「…そうなんだ…って、あのユキちゃん…何故また、お姫様抱っこなのかな」
「師匠はまだ病みがりな故、可憐な体を少しでも休む必要があるかと」
「いや、私は元気よ?」
「…師匠、あそこの小さなパン屋ですよ。探してる方達は」
無視かい!?ユキちゃんよ!?
そんな私達のやりとりに、マルセクは笑いながら呆れていた。私達はパン屋の前に着いたけど、お店は、開いていなかった。マルセクはパン屋の右側にある扉の方へと向かう。
コンコンとドアを叩いて何やら合言葉みたいなのを声に出す。
「パンはパンでも食べられないパンはなーんだ!
ハイ!フライパーン!」
そうマルセクが声を出すとドアが勝手に開いた…。いや、それどんな合言葉なの!?
ドアの向こうにいたのは、緑色の髪の女性だった。
「リリア嬢!?」
「……あら…まあまあまあ」
シリウスの婚約者であるリリア嬢だ!私は彼女の方へと抱きつこうとしたが、バタン!とまたドアを閉められた…。
「え、ちょ。リリア嬢!?私よ!ドロシー!」
「そんな方存じません」
「えー!?昔貴族のいじめっ子から助けてあげたじゃない!?」
「昔から私はパン屋で働いてましたわ」
とまあ、拒否られてます。ユキちゃんは今にでも店ごと吹き飛ばそうとしていて、マルセクは慌てて止めていた。
「リリアちゃん!いや、リリアさん!?話だけでもー」
「あなたと関わるとロクな事ないわ!」
「あ、覚えてくれてるのね!」
そう私達が話している時
「……母さんのお客さま?」
そう声をかけられた方を振り向くと、そこには金髪で青い瞳色の少年がいた……少し幼いけれど…まるで……まるで…昔の……
「……シリウス…」
彼が目の前にいるように感じるほど、とても似ていた。
「やはり、私がこの店ごとあの者を亡き者に」
「だあー!ユキ!馬鹿!何嫉妬してんだ!落ちつけ!」
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