上 下
91 / 100
アデライト  逆行復讐編

心臓の真実

しおりを挟む
‥‥早く返り血を拭かなきゃいけない。着替えなきゃ。美しく身なりを整えて‥それから‥‥それから‥‥頭が真っ白だわ。

なのに‥‥私は体が動けなかった。そんな私をヒューゴ王子はそっと私の頬に軽くキスした後、満足げな顔をして笑った。

「あははっ!ほら!その顔!素敵だよ~!
やっぱり君は血がとても似合うよ。うんうん」

‥‥ルカの心臓は‥‥私が?お母様は‥‥最初からその目的だったから?確かに適合する心臓が必要だった。
でも今はルカが作ってくれた薬を飲んで、心臓の負担が抑えられている。

回帰前ルカが亡くなったあの日から、私の体調は良くなっていた‥

ならば‥‥私はずっと‥‥

「‥‥ウッ!!!」


気持ち悪い‥気持ち悪い‥‥知らなかった自分が一番‥‥気持ち悪い‥!!!

「アデライト大丈夫?吐き気かなー?ハッ!まさか、悪阻かな!?俺とのーー」

「‥‥‥貴方は何が目的なのよ!」

「声を荒げちゃう君もまたいいね。言っただろ?俺と君は似てるんだ。なのに‥‥」

「‥‥カハッ!」

ヒューゴ王子は私の首を締めた。私と貴方が似てる?ふざけないで‥不愉快だわ。

‥‥あぁ、以前私がアメリーに向けた言葉だわ。
あの子も私に似てると言われ、こんな不愉快な気持ちだったのでしょうね。

とは言え謝りはしないけれど。

「俺が聞きたいよ。君はあの軟弱な人間といるべきじゃない」

「‥‥ルカに手を出したら、誰であろうと許さないわ。全員殺すわよ」

「本当変わってるようで、変わってないねえ~。アデライト、君のそのあの軟弱な人間に対する気持ちは、ただの執着に過ぎない。愛でもなんでもない。でもさー、笑えるよねえー。心臓を探してたのに、実は君の体の中にいましたって!君が彼を殺したようなもんじゃないかなー?」

「‥‥っ!」

私はヒューゴ王子の手を振り払い、鞭を持ち顔に叩いた。ヒューゴ王子の頬から血が流れてもヒューゴ王子はただ笑うだけだった。

「君が殺したんだよ」

「‥‥ちが‥」

「君が、殺したんだよー?」

「五月蝿い!!!‥‥ゲホゲホッ!‥‥うっ」

私とヒューゴ王子が言い争っていた時、フォース国の旗を掲げた騎士達数人とフレデリック王子がやってきた。

「ヒューゴ!友好国となった国で一体何をしてくれたんだ!ここにいるやつ、全員殺したのか!!お前の罪はもう十分証拠が揃った!父上とも話し合いお前は王族ではなくなった!」

「‥‥あーあ。兄上は本当に、【前回】も邪魔するな。やっぱり早く殺すべきだった」

そうヒューゴ王子がパチンと指を鳴らした瞬間、ヒューゴ王子側についている衛兵達が出てきた。

ワァアとヒューゴ王子派とフレデリック王子派との戦いが始まる中、ルチータ王子達もやってきたところでヒューゴ王子は舌打ちをした。

「あのメンバーじゃ、勝てないなあ。アイラ嬢、少し時間稼いでねえー。あ、アデライト。また迎えにくるから」

「‥‥ゲホゲホッ、まちなーー」

アイラとオスカーはヒューゴ王子の側に側についているのを見たソフィアは眉を顰めた。

「オスカー様‥!我が国を裏切るつもりですか!」

「五月蝿い!お前は黙っててくれ!」

「ソフィアさん、五月蝿い女性は嫌われちゃいますよぉ?さあさあ、私のしもべたちは、あの人達を殺してねー。あ、ルチータ王子様は駄目よ。私のだから」

「‥‥いや、私は君の物じゃないけれどね」

そうアイラが薬漬け状態の男性達が、ソフィア達を襲いにかかるものの、ソフィア、アルフレッド、ジェイコブの三人があっというまに倒していった。その隙にヒューゴ王子とアイラは消えていき、オスカーだけは残ってアデライトの方へと近寄っていく。


「アディー!!!!アディ!!」

「‥‥‥ルカ」


ダメ。

今は返り血を浴びている姿を見られたくないのに。

私が貴方を殺してしまった事実を認めたくないのに。

私と出会った事で、ルカは不幸になったのに。

私がルカの方へと向かおうとした時、ルカの大きな声が響いた。

「アディーに触るな!!!アディー!!」

「‥‥え」

私の目の前には、いつ火を持ってきたのかオスカー様がブツブツと独り言を言っていた。

「アデライト、君には魔女が取り憑いているんだ。だから僕が君を救うんだ」

「貴方は何をーー??ッ」

オスカー様は私に油らしきものをかけた後、もっていた火を私に投げつけた。

その瞬間ーー

真っ赤に燃えてしまう自分と、ソフィアやジェイコブお兄様達の声が聞こえた。

「オスカーを捕らえろ!」

「‥‥離せ!僕は間違えてない!」

「よくも僕の妹に酷いことを!!」

「ジェイコブ!ここに倒れている貴族達はアデライトが殺したんだ!僕は見たんだから!おかしくなったんだ!!」

ジェイコブお兄様がオスカーを捕らえているわ‥‥。

 


やはり私は死ぬのね。そう思った瞬間

誰かが、すぐに水をかけてくれて、冷たいタオルを私に巻いてくれるルカが震えた手で、私を抱き寄せた。

なんだか全身が痛くて、力が入らないわ。意識が遠のくばかり‥‥。

「アディー!アディー!」

「‥‥ふふ。今だに泣き虫ね」

あぁ‥‥ルカの泣き顔は可愛いらしいわね。可愛いくて愛おしいけれど‥‥あまり見たくないわ。

アデライトはそっとルカの涙を拭った。



















しおりを挟む
感想 724

あなたにおすすめの小説

妹と旦那様に子供ができたので、離縁して隣国に嫁ぎます

冬月光輝
恋愛
私がベルモンド公爵家に嫁いで3年の間、夫婦に子供は出来ませんでした。 そんな中、夫のファルマンは裏切り行為を働きます。 しかも相手は妹のレナ。 最初は夫を叱っていた義両親でしたが、レナに子供が出来たと知ると私を責めだしました。 夫も婚約中から私からの愛は感じていないと口にしており、あの頃に婚約破棄していればと謝罪すらしません。 最後には、二人と子供の幸せを害する権利はないと言われて離縁させられてしまいます。 それからまもなくして、隣国の王子であるレオン殿下が我が家に現れました。 「約束どおり、私の妻になってもらうぞ」 確かにそんな約束をした覚えがあるような気がしますが、殿下はまだ5歳だったような……。 言われるがままに、隣国へ向かった私。 その頃になって、子供が出来ない理由は元旦那にあることが発覚して――。 ベルモンド公爵家ではひと悶着起こりそうらしいのですが、もう私には関係ありません。 ※ざまぁパートは第16話〜です

王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!

gacchi
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ? 王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。 国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから! 12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。

【完結】 私を忌み嫌って義妹を贔屓したいのなら、家を出て行くのでお好きにしてください

ゆうき@初書籍化作品発売中
恋愛
苦しむ民を救う使命を持つ、国のお抱えの聖女でありながら、悪魔の子と呼ばれて忌み嫌われている者が持つ、赤い目を持っているせいで、民に恐れられ、陰口を叩かれ、家族には忌み嫌われて劣悪な環境に置かれている少女、サーシャはある日、義妹が屋敷にやってきたことをきっかけに、聖女の座と婚約者を義妹に奪われてしまった。 義父は義妹を贔屓し、なにを言っても聞き入れてもらえない。これでは聖女としての使命も、幼い頃にとある男の子と交わした誓いも果たせない……そう思ったサーシャは、誰にも言わずに外の世界に飛び出した。 外の世界に出てから間もなく、サーシャも知っている、とある家からの捜索願が出されていたことを知ったサーシャは、急いでその家に向かうと、その家のご子息様に迎えられた。 彼とは何度か社交界で顔を合わせていたが、なぜかサーシャにだけは冷たかった。なのに、出会うなりサーシャのことを抱きしめて、衝撃の一言を口にする。 「おお、サーシャ! 我が愛しの人よ!」 ――これは一人の少女が、溺愛されながらも、聖女の使命と大切な人との誓いを果たすために奮闘しながら、愛を育む物語。 ⭐︎小説家になろう様にも投稿されています⭐︎

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

【完結】婚約者は自称サバサバ系の幼馴染に随分とご執心らしい

冬月光輝
恋愛
「ジーナとはそんな関係じゃないから、昔から男友達と同じ感覚で付き合ってるんだ」 婚約者で侯爵家の嫡男であるニッグには幼馴染のジーナがいる。 ジーナとニッグは私の前でも仲睦まじく、肩を組んだり、お互いにボディタッチをしたり、していたので私はそれに苦言を呈していた。 しかし、ニッグは彼女とは仲は良いがあくまでも友人で同性の友人と同じ感覚だと譲らない。 「あはは、私とニッグ? ないない、それはないわよ。私もこんな性格だから女として見られてなくて」 ジーナもジーナでニッグとの関係を否定しており、全ては私の邪推だと笑われてしまった。 しかし、ある日のこと見てしまう。 二人がキスをしているところを。 そのとき、私の中で何かが壊れた……。

私が死んで満足ですか?

マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。 ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。 全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。 書籍化にともない本編を引き下げいたしました

婚約破棄をされ、父に追放まで言われた私は、むしろ喜んで出て行きます! ~家を出る時に一緒に来てくれた執事の溺愛が始まりました~

ゆうき@初書籍化作品発売中
恋愛
男爵家の次女として生まれたシエルは、姉と妹に比べて平凡だからという理由で、父親や姉妹からバカにされ、虐げられる生活を送っていた。 そんな生活に嫌気がさしたシエルは、とある計画を考えつく。それは、婚約者に社交界で婚約を破棄してもらい、その責任を取って家を出て、自由を手に入れるというものだった。 シエルの専属の執事であるラルフや、幼い頃から実の兄のように親しくしてくれていた婚約者の協力の元、シエルは無事に婚約を破棄され、父親に見捨てられて家を出ることになった。 ラルフも一緒に来てくれることとなり、これで念願の自由を手に入れたシエル。しかし、シエルにはどこにも行くあてはなかった。 それをラルフに伝えると、隣の国にあるラルフの故郷に行こうと提案される。 それを承諾したシエルは、これからの自由で幸せな日々を手に入れられると胸を躍らせていたが、その幸せは家族によって邪魔をされてしまう。 なんと、家族はシエルとラルフを広大な湖に捨て、自らの手を汚さずに二人を亡き者にしようとしていた―― ☆誤字脱字が多いですが、見つけ次第直しますのでご了承ください☆ ☆全文字はだいたい14万文字になっています☆ ☆完結まで予約済みなので、エタることはありません!☆

記憶を失くした彼女の手紙 消えてしまった完璧な令嬢と、王子の遅すぎた後悔の話

甘糖むい
恋愛
婚約者であるシェルニア公爵令嬢が記憶喪失となった。 王子はひっそりと喜んだ。これで愛するクロエ男爵令嬢と堂々と結婚できると。 その時、王子の元に一通の手紙が届いた。 そこに書かれていたのは3つの願いと1つの真実。 王子は絶望感に苛まれ後悔をする。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。