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アデライト 逆行復讐編
聖女と呼ばれるご令嬢
しおりを挟むあれから三ヶ月後が過ぎ、ますます寒い季節になってきた。それと同時に、あの流行り病いが流行った。
皮膚が痒くなり段々と赤くなり熱がでてくる症状なのだけど‥‥‥。
まさかのルカのお母様がなってしまったわ。
ルカの家に行き、お母様の様子はだいぶよくなったようだけど。
「‥‥ルカ大丈夫よ」
「うん、母さんがこっちにくる前から薬を作ったおかげで、だいぶ楽になったみたいだしね。アディがそうしてと言ってたんだよね。なんでわかったの?」
「ふふ、秘密」
ルカは窓を開けて町を眺めて悲しそうな表情をしながら話す。
「‥‥母さんが作った薬草は少ししかないからみんなに与えてあげることができない。それにこの皮膚病で貴族の人達がほとんど買い占めてて、町のみんなが買えないんだよね」
そうルカはなんとか薬を増やせる方法がないか、本を読み漁っていた。
でも、それはしょうがないわね。お金がないのが悪いんだもの、汚くしているのが駄目なのよ。清潔にして綺麗な水を飲んでいれば大丈夫なのに、貴族達は自分達もなるかもしれないと恐れて買い占めて、国民から不満が沢山声が上がっていたのよね。
それを僅か13歳になったルチータ殿下が医学に長けている者達を呼び、国民を救ったらしいけれど‥‥
「私はルカ達が無事であれば良いわ」
そうルカが淹れてくれた薄い味のミルクティーを飲んでいると、コンコンとドアを叩く音がした。
「やあ、やっぱりここにいたんだね。アデライトさん」
「‥‥‥」
またルチータ殿下だわ。王子というのは暇なのかしら?せっかくルカといたのに邪魔ね。
「チーター、どうしたの?最近忙しいから会えないって言ってたのに。ミルクティー飲む?」
「うん、そうだね。いただこうかな」
ルチータ殿下は私の目の前に座ってきたけれど、どうやらルカというより私に用があるみたいね。
ルチータ殿下はチラッとルカがミルクティーを用意しているのを見て、少し小さな声で私に問いかけた。
「アデライト・マカロン。君は一体何者なんだい?」
「質問の意図がよくわかりませんわ」
「君が少し前、私に流行り病がくると教えたよね」
「あら、そうでしたかしら?」
ルチータ殿下は腕を組みながら、考えて話した。
「最近の君はお茶会や学園にも行ってないからわからないのかもしれないけれど‥‥不思議な事に君と同じ事を言う令嬢が現れた。貴族達の中でその令嬢は『聖女』だと。正直その令嬢のせいで、混乱を招いている」
「‥‥私にどうしろというのかしら。体調がよろしくありませんの。あぁ、でもルカが学園の編入試験に受かれば学園に通うかもしれませんわ」
ニッコリとそう話すとルチータ殿下は呆れた顔をしていた。
「‥‥君の妹さん、ソフィア嬢が学園で何をされているか気にならないのかい?」
「ふふ、気になりませんわ。もし他の生徒達にやられっぱなしならば、それはそれでしょうがないですもの。やられっぱなしのマカロン家の者はマカロン家ではないわ」
そうルチータ殿下と話しているときに、外から争う声がした。
「ポルベア様!子供が皮膚病で熱を出しているのです!少しでもいいので、お薬を‥‥っ!お願いいたします!お薬をお譲りくださいませ!」
「えーい!離せ!!!」
黒い髭の貴族らしき男が女性を蹴っていた。あらまあ、醜いわね。そう窓から眺めていたら、ルカは騒ぎに聞きつけたのか、急いで外に出て女性を庇った。
「おじさん!やめてください!‥おばさん、僕も小さな店だけど、薬屋をしているんだ。もう数は少ないけれど、塗り薬と薬草あげる。早くお子さんにあげて」
「‥‥あ、あっ‥ありがとう。ぐす‥‥本当にありがとう」
私も外に出て、ルカのそばに行こうとした時、先程の男がルカを見て唾を吐いた。
「はっ!貧乏臭いやつが薬屋だと!?医者のほうが偉いというのに!そんな薬で治るわけない!」
「あら、貴方のお薬とやらのほうがまったく効き目がないから大丈夫よ」
「な、なんだと!?」
「‥‥ふふ、お馬鹿なほど吠えるわね」
「くっ!!とにかく邪魔するなよ!」
そう言いながら馬車に乗って去っていった。
‥‥‥あの男ポルベア家の者ね。殺しましょう。ルカに暴言を吐いた者はいらないわ。しかも、唾なんて吐き捨てて‥‥ポルベア男爵ってほぼ成金みたいなものなのよね。
「はあ、アディ、チーター‥‥悔しいね。僕はまだ薬を作る資格もないし、頭では知識があってもまだ何も出来ないのが‥悔しいや」
そうルカは私の手をぎゅっと握り締めながら話していた。私は少し溜息を出しつつ、先程の女性に声をかけた。
「そこの貴女。そう、貴女よ。ルカから貰った薬はあの男爵よりは効果は高いわ。それと‥‥体は清潔になさい。水はあの近くの用水路を使ってたり飲んではいけないわ。汚染されているから、少し遠いけれど森の水から汲み取りに行きなさい」
全ては王都周辺の小川が原因ですものね。そう教えると、女性は私に頭を下げて去っていった。
「やっぱりアディもそう考えてたんだね」
「そうね、この病は平民ばかりで、しかも、あの小川は以前から汚いと言われてたもの。あとは綺麗に体を洗うべきだけど」
実際この小川が汚いと気付いたのは本来は、ルチータ殿下なのだけど、美容に良くないから早く気づいて綺麗にしてほしいわ。
そうルカと話していると私はルチータ殿下の方を見ながら話した。
「ふふふ、本当、国は何をしているのかしら?薬だけでは駄目ですもの」
ルチータ殿下はただ笑っていた。‥‥嫌な笑顔ね。
ルカは、みんなに小川は使わないように呼びかけてみると、周りにいた人達は私やルカを囲んできて、色々と質問をしてきた。切羽詰まってたみたいね。
「‥‥子供の私に相談するなら、医者にすればよいものの‥‥」
「あはは、さっきの威勢の良いアディを見てみんな惚れ惚れしてたよ。ちょっとやけちゃった」
そうルカと話していると、ルチータ殿下が寄ってきて話しかけてきた。
「さて、先程のポルベア男爵が裏で色々と稼いでるようだね。あの男爵の家から遠い親戚の娘が聖女と呼ばれているんだよ」
まったく、聖女聖女なんて‥‥なんだかあの腹が立つ女を思い出すわ。
「確か名前は‥アイラ。アイラだったかな。私はまだ会ったことがないけれどね」
あらあら。これは‥‥ふふ。
何故太陽教会でシスター見習いをせず、どこかのご令嬢になっているなんて‥‥‥胡散臭いわ。色々と。とても‥‥。
「チーター様、私今度のルチータ殿下主催のお茶会に参加しようかしら」
「‥‥何故急に?」
「あら、国一番の王子様にお会いしたいですもの。きっとこの私をエスコートしてくれるはずだわ」
ルチータ殿下はその後何も言わず、ただ笑って帰っていった。
「アディ、どうしたの?」
「ふふ、ただね‥‥まだ、掃除しきれてないのに気づいただけよ。平和ボケしていたわ」
「???うん?でも掃除なら僕の方が出来るから言ってね?アディは窓拭きとかしないし」
「ルカ、私は拭き掃除より、後片付けのほうが得意よ。必要なもの、不必要なものの見分けはできるわ」
そうルカは私を心配そうにしていた。
アイラね。
やはりいたけれど‥‥私が不在していた中、色々とやらかしているようね?
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