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推しのお姫様抱っこは嬉しい

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ヒロインのアンナ姫が登場し、ゲーム開始から一週間。流石というべきかしら、ヒロインはやっぱりヒロイン!学園のみんな彼女の虜のようだわ。

「可愛らしい笑顔で健気に頑張っているアンナ様は素敵だな」

「この前レイラ様に叱られてしまった花を沢山咲かせるよう積極的に育てられてるわ。お優しいですわね!」

常に彼女の周りには友人に囲まれている。ここでゲームでは攻略対象者達は彼女に興味を持ち話かけるはずなのに…

「ダイアナ留学先で美容に良いとされている紅茶を持ってきたよ」

爽やかな笑顔で紅茶を勧めるメインヒーローのラウル。

「あ、ありがとう。美味しくいただくわ」

「なあ!ダイアナ!久しぶりにさ、また手合わせしようぜ!」

ニコニコとお菓子を美味しく食べているルクア。

「そうね、久しぶりにルクアと剣術の稽古をしたいわ」

「おまえが好きそうな本を留学先で見つけたんだ。よかったら読んでみてくれ」

眼鏡をくいっと直しながら本をくれたセイお兄様。

「とても興味がある分野ですわ。ありがとうございます…」

後ろを振り向くと推しのクラウドはいつも通りね。そう…本当にいつも通りだわ。攻略対象者達である彼らはアンナ姫に興味ないのかしら!!?

「ねえ、ラウル…ラウルはこの前アンナ様を校舎の案内をしたイベン…ではなくて、案内をして何か感じたことあるかしら?」

キョトンとした顔をしたラウルはクスッと笑いながら
「国の王子であるからね、義務として案内しただけだけど?ヘンリー王子の妹っていう認識で特に何か感じることは…どうして?」

「特に意味がないわ。ただみんなアンナ様に興味はー」

「「「ない」」」

みんな口を揃えてそう言うんだもの。まだ日にちは浅いからよね。


その後私は頭を冷やすかのように席から立ち上がり、クラウドと一緒に学園のバラ園へ足を運んだ。そこにはディール・アーロンとアンナ様だわ。ディールルートに入った…ってことかしら??それにしても早いわよね?

アンナ様は私の存在に気づき、可愛らしい笑顔で私の元へ駆け寄ってー

「やっぱり!貴方クラウド君よね!?」

ん????スッと私の横を通り過ぎて
私の後ろに控えていたクラウドの手を握って笑顔で挨拶するヒロイン。うっ…可愛らしいわね。これはまたイチコロだわ!!バッとクラウドの反応を見ていると、少しばかり眉をしかめていた。…これは照れているんだわ!

「失礼ですが…アンナ様とお会いした覚えは…」

「あるわ!一度だけ!三年ちょっと前にかなぁ、教会であったの…覚えてないかなあ?私はね、クラウド君覚えてるんだけどなあ」

しょんぼりとするアンナにクラウドは何となくピンときたのか「あぁ…あのときの…なるほど……姫だったんですね」
と納得していた。

って!え?!いつのまにフラグたっていたのかしら!!?三年前?教会!?!もしかしてクラウドがお世話になった教会!?二人は見つめ合っているわ…。

頭がぐるぐるとして考えていたら、ラウル達も来て
「ダイアナ、急に立ち上がって何処にーって…
あぁ、アンナ姫もいらしたのですか」

何故か…ニコッと優しい営業スマイルモードのラウルだわ。
ルクアもセイお兄様もアンナ様にお辞儀をしてアンナ様はニッコリ可愛いらしい笑顔で
「今ディールと薔薇を見ながら砂糖菓子を食べていたんです!みなさんもどうですか?」

砂糖たっぷりのお菓子をみんなに分けるアンナ姫。
フと見ると彼女の周りには攻略対象者達が囲んで仲良く話しているわ。

あぁ、ゲームの画面で見た感じ。みんなに愛されてるヒロインってこのことなんだわ。クラウドは…どんな表情で彼女を見ているのかしら…後ろにいるから振り向けば見れるけど…なんとなく見れないわね。
なんとなくみんなの様子を見つめていたら、アンナ様のそばにいたディールは私を見てニコッと笑いながら
「君まだいたの?」みたいな顔をしていた。少し腹が立つわね。私は彼にべーと、舌を出して勝ち誇った顔をしたら、ディールはキョトンとした。

「…私は少し用事あるので失礼しますね」

そう言ってその場から立ち去った。


ダイアナが立ち去った後、ラウル達はすぐにダイアナを追いかける。
「アンナ姫、砂糖菓子をありがとう。僕はこれにて失礼するよ」

「砂糖菓子は太るからなあーあんまり食べたくないや!ごめんな!」

「ダイエット中の妹のダイアナの前であまり甘いものは…では」



「え!?でもでも、せっかく…あ、クラウド君はーってもう…いなくなっちゃった」

しょんぼりするアンナに頭を撫でるディールは
「あはは、みんな忙しいんだよ!また仲良くなれるさ」

「うん…ねぇディール…」

「ん?なに?お姫様」

「私ね…クラウド君がとても欲しくなっちゃったなぁ」

少し虚な目で話すアンナを見るディールは少し困った顔をするものの
「……そっか。姫は欲張りな子だね」







「…ダイエットしなきゃ!そうよ!痩せなきゃ!」

一人でぶつぶつ考えながら歩いていると

「様…ダイアナお嬢様」

振り向くとクラウドがいた。

「え、あら、、いつのまに…」

「…?ずっとダイアナお嬢様のそばにいましたが…」

「…え、そうだったの?ごめんなさい、ボーとして…」

少し沈黙した後クラウドは私の顔を少し覗きこんだ後
「失礼…」

「えっ、あの」

クラウドは私を抱き抱えて
「やはり顔色が悪いようなので保健室へいきましょう」

推しのクラウドにお姫様抱っこは嬉しいわ!嬉しいけれど!!なんだか…恥ずかしいわね。

「わ、私歩けるわよ」

「はい」

「また体重増えちゃったのよ」

「はい」

優しく微笑みながら、少し私をからかうクラウド。

「………あ、あの…もう少しゆっくり歩いてちょうだい」

贅沢な願いかもしれないけれど…ほんの少しだけクラウドとの時間が欲しかった。

クラウドは何も言わずただゆっくりなペースで私を保健室へと運んでくれた。



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