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2.ファーストコンタクト
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(まさか、あちらから接触してくるとはね。)
長い階段を上りながら、クラリスはこれから会いにいく相手について考えた。カミラとは同じクラスだが、お世辞にも仲がいいとはいえない。何においても一番を好む彼女にとって、天才的な魔法のセンスを持つクラリスは、目の上のたんこぶであった。クラリスも、事あるごとにつっかかってくるカミラにうんざりしており、両者の間には深い溝が存在した。
直近で魔法学のテストがあったわけでもないし、そもそもその程度のことでわざわざ別室に呼び出すほど陰湿な女ではない。となると、やはり先日の食堂での件だろうか?もしかしたら、カミラはクラリスがわざととぼけたことを見透かしているのかもしれない。
あの事件以来、「氷の魔女はど天然」という噂がまことしやかに囁かれた。氷の魔女とはクラリスのことであり、彼女の魔力が強すぎて、得意の水魔法で氷を生み出せること、また、表情が乏しく冷たい印象を与えることからついた二つ名だ。クラリス自身、これをまんざらでもなく思っている。
成績優秀なクラリスがとんちんかんな回答をしたのが、生徒達にはとても可笑しかったらしい。昨日から陰でくすくす嘲われているのは自分でもよく分かった。こういう時、友達が少ない人間はひどく心細いものである。今日はこの後図書室に行って、ハワードに愚痴を聞いてもらおう。
(…ってダメじゃない!! またハワード頼りになってしまうわ!!)
どうやら自分が思っているよりもずっと、ハワードに依存してしまっているようだ。これではこの物語を操作するなんて、到底できそうにない。早急に自分のあり方も変えていかねばと、クラリスは気を引き締めた。
空き教室の扉をゆっくり開けると、窓際にカミラが立っていた。外を眺めていたようだ。
「遅かったわね。」
「教室前の廊下が混んでいまして、ごめんあそばせ。」
足早にカミラの元に向かう。窓際は、思っていたより直射日光で暑かった。もう六月だというのに、梅雨が来る気配が一向にない。しかしまあ、終礼からまだ十五分も経っていないというのに、この女は憎まれ口を叩かないと死んでしまうのだろうか。
「あなたを呼び出した理由だけど……先日は悪かったわね。要らぬ気を遣わせてしまって。もっとも、こっちとしてもお節介でしたけど。」
その言葉から、カミラがクラリスの道化を見透かしているのがわかった。圧倒的に足りない言葉と、半分以上嫌味で占められた謝罪に苛立ちを覚えたが。
(私が頭の回る女でよかったわね、カミラ様。普通の人が聞いても、何の話かちっとも分からなかったわよ!)
気持ちとは裏腹ににっこりと微笑みを浮かべる。さて、どうしたものか。このままとぼけ続けるか、それとも彼女の言葉に答えるべきか。とりあえずここはまだ様子を見たい。
「一体、何のことでしょう、カミラ様?」
笑顔のまま問いかける。クラリスはこのままとぼける方を選んだ。カミラがとても胡散臭そうにこちらを睨みつけてくるので、いたたまれずつい窓の方へ目を逸らしてしまった。ここからは中庭が見渡せる。手入れの行き届いた花壇の中央にちょっとした噴水が設けられていた。
やがてカミラは諦めたのか、一つ大きなため息をついた。
「私が貴方を買いかぶり過ぎていたみたいね、もういいわ。今日はわざわざこんなところまでおいでくださってありがとう。」
カミラは言い終えるや否や、もう用は終わったと言わんばかりに出口の方へ足を向けた。何とまあとんだ時間の無駄だろう、そう思いながら彼女が教室の扉を引いた時だった。
「あの女と張り合うのはやめた方がいいわ。」
カミラの足がぴたりと止まる。そのままゆっくりとクラリスの方に向き返った。
「少なくとも、真っ向からぶつかるのは愚策ね。ああ見えて、なかなかしたたかよ、あの子。」
「……誰の話をしているのかしら?」
「あら?聡いあなたならもう分かっているのでしょう?……フローラ=ミアーは危険よ、貴方が思っている以上に。」
一瞬にして空気が張り詰める。カミラは目の前のいまいち食えない女を睨みつけた。
「たかが庶民上がりの田舎娘じゃない。特殊魔法持ちとはいえ、さほど厄介には見えないわ。」
「いやねえ、そういう意味じゃなくってよ。」
茶化すような返事に苛立ちが増したのか、彼女はより顔を険しくさせてこちらの方へ近づいた。だが、クラリスはそれに構わず話を続ける。
「恋は恐ろしいわね。聡明なカミラ様まで狂わせてしまうのだから。」
「……随分な誤解ね。それに、食堂の件を蒸し返すのはよしていただけるかしら?」
「やめてしまえばいいじゃない。貴方ほど優れた人間なら、もっと相応しい人がいるわ。」
「…………」
「エリオット皇子は貴方が執着するほど価値のある男かしら?」
アメジストの瞳がかっと見開く。次の瞬間、クラリスの左頬に閃光のような刺激が走った。
「知った風な口をきかないで!!」
何が起こったか分からず、呆然とカミラを見つめる。怒りで肩が震えていた。彼女の右手が挙がってることから、どうやら自分ははたかれたのだと、この時やっと認識できた。
「……貴方に…何が分かるのよ……」
荒い呼吸の中で、声を絞り出すように一言告げると、カミラはハッと我に返った。自分でも己の言動が信じられないらしい。目を泳がせてモゴモゴと次の言葉を探している。
「し、失礼します!!」
かろうじて紡いだ別れの挨拶をすませると、足早に教室を去っていった。
じんじんと痛む左頬をそっと手で抑えると、急にクラリスの口から笑いが漏れてきた。
「ふっ…ふふ……」
「ふふ、うふふふふ……うふっ…あははは………っっ!!」
あの嫌みたらしい女があんな風に激情するなんて、なかなか可愛いところもあるじゃない。クラリスはなぜか、勝ち誇ったような愉快な気持ちでいっぱいだった。
急に舵を切ったのは、全部中庭で見た景色のせいだ。あそこは昇降口と面していないので、放課後に人がいることは少ない。だから、噴水のそばで仲睦まじそうにお喋りをするエリオットとフローラは、四階からでも嫌でも目に入った。
(私が来るまで、カミラ様は一体どんな気持ちで窓の外を眺めていたのかしら?)
そう思うと、なんともやるせない気持ちになった。あの人を小馬鹿にしたような態度も、皮肉たっぷりの口調も、全部自分を守る為のなけなしの武装に思えてしまう。(実際そんなことはないのだろうが。)
加えて、今は自分も彼女と同じライバルポジションだという自覚がある為、校内で堂々と攻略対象とはしゃいでいるフローラに、見当違いな怒りを覚えた。せめてもう少し場所を選べないものだろうか。学園内ではいつどこで生徒に見られているか分からないというのに、たいした度胸である。仮に今日、ここではない別の場所でカミラと約束していたとして、明日には野暮な連中が中庭での様子をカミラに告げ口していただろう。結局、彼女が傷つくのは目に見えている。
(……いいわ。かなり難しそうだけど、私は貴女につくことにするわ、カミラ。)
本当はもう少し全体の様子を見てから立ち回り方を決めたかったのだが。今見る限り、フローラはエリオットルートに入っているようだし、そうなるとどのみちカミラとの接触は免れないだろう。
未だ熱を帯びている左頬を撫でながら、クラリスは一人、ゆっくりと今後の作戦を考えた。ただでさえ不穏な関係だったというのに、今日はそれを決定的にしてしまった。非常にまずい状況でありながら、クラリスはこれからのことを考えると、楽しくて仕方がなかった。
長い階段を上りながら、クラリスはこれから会いにいく相手について考えた。カミラとは同じクラスだが、お世辞にも仲がいいとはいえない。何においても一番を好む彼女にとって、天才的な魔法のセンスを持つクラリスは、目の上のたんこぶであった。クラリスも、事あるごとにつっかかってくるカミラにうんざりしており、両者の間には深い溝が存在した。
直近で魔法学のテストがあったわけでもないし、そもそもその程度のことでわざわざ別室に呼び出すほど陰湿な女ではない。となると、やはり先日の食堂での件だろうか?もしかしたら、カミラはクラリスがわざととぼけたことを見透かしているのかもしれない。
あの事件以来、「氷の魔女はど天然」という噂がまことしやかに囁かれた。氷の魔女とはクラリスのことであり、彼女の魔力が強すぎて、得意の水魔法で氷を生み出せること、また、表情が乏しく冷たい印象を与えることからついた二つ名だ。クラリス自身、これをまんざらでもなく思っている。
成績優秀なクラリスがとんちんかんな回答をしたのが、生徒達にはとても可笑しかったらしい。昨日から陰でくすくす嘲われているのは自分でもよく分かった。こういう時、友達が少ない人間はひどく心細いものである。今日はこの後図書室に行って、ハワードに愚痴を聞いてもらおう。
(…ってダメじゃない!! またハワード頼りになってしまうわ!!)
どうやら自分が思っているよりもずっと、ハワードに依存してしまっているようだ。これではこの物語を操作するなんて、到底できそうにない。早急に自分のあり方も変えていかねばと、クラリスは気を引き締めた。
空き教室の扉をゆっくり開けると、窓際にカミラが立っていた。外を眺めていたようだ。
「遅かったわね。」
「教室前の廊下が混んでいまして、ごめんあそばせ。」
足早にカミラの元に向かう。窓際は、思っていたより直射日光で暑かった。もう六月だというのに、梅雨が来る気配が一向にない。しかしまあ、終礼からまだ十五分も経っていないというのに、この女は憎まれ口を叩かないと死んでしまうのだろうか。
「あなたを呼び出した理由だけど……先日は悪かったわね。要らぬ気を遣わせてしまって。もっとも、こっちとしてもお節介でしたけど。」
その言葉から、カミラがクラリスの道化を見透かしているのがわかった。圧倒的に足りない言葉と、半分以上嫌味で占められた謝罪に苛立ちを覚えたが。
(私が頭の回る女でよかったわね、カミラ様。普通の人が聞いても、何の話かちっとも分からなかったわよ!)
気持ちとは裏腹ににっこりと微笑みを浮かべる。さて、どうしたものか。このままとぼけ続けるか、それとも彼女の言葉に答えるべきか。とりあえずここはまだ様子を見たい。
「一体、何のことでしょう、カミラ様?」
笑顔のまま問いかける。クラリスはこのままとぼける方を選んだ。カミラがとても胡散臭そうにこちらを睨みつけてくるので、いたたまれずつい窓の方へ目を逸らしてしまった。ここからは中庭が見渡せる。手入れの行き届いた花壇の中央にちょっとした噴水が設けられていた。
やがてカミラは諦めたのか、一つ大きなため息をついた。
「私が貴方を買いかぶり過ぎていたみたいね、もういいわ。今日はわざわざこんなところまでおいでくださってありがとう。」
カミラは言い終えるや否や、もう用は終わったと言わんばかりに出口の方へ足を向けた。何とまあとんだ時間の無駄だろう、そう思いながら彼女が教室の扉を引いた時だった。
「あの女と張り合うのはやめた方がいいわ。」
カミラの足がぴたりと止まる。そのままゆっくりとクラリスの方に向き返った。
「少なくとも、真っ向からぶつかるのは愚策ね。ああ見えて、なかなかしたたかよ、あの子。」
「……誰の話をしているのかしら?」
「あら?聡いあなたならもう分かっているのでしょう?……フローラ=ミアーは危険よ、貴方が思っている以上に。」
一瞬にして空気が張り詰める。カミラは目の前のいまいち食えない女を睨みつけた。
「たかが庶民上がりの田舎娘じゃない。特殊魔法持ちとはいえ、さほど厄介には見えないわ。」
「いやねえ、そういう意味じゃなくってよ。」
茶化すような返事に苛立ちが増したのか、彼女はより顔を険しくさせてこちらの方へ近づいた。だが、クラリスはそれに構わず話を続ける。
「恋は恐ろしいわね。聡明なカミラ様まで狂わせてしまうのだから。」
「……随分な誤解ね。それに、食堂の件を蒸し返すのはよしていただけるかしら?」
「やめてしまえばいいじゃない。貴方ほど優れた人間なら、もっと相応しい人がいるわ。」
「…………」
「エリオット皇子は貴方が執着するほど価値のある男かしら?」
アメジストの瞳がかっと見開く。次の瞬間、クラリスの左頬に閃光のような刺激が走った。
「知った風な口をきかないで!!」
何が起こったか分からず、呆然とカミラを見つめる。怒りで肩が震えていた。彼女の右手が挙がってることから、どうやら自分ははたかれたのだと、この時やっと認識できた。
「……貴方に…何が分かるのよ……」
荒い呼吸の中で、声を絞り出すように一言告げると、カミラはハッと我に返った。自分でも己の言動が信じられないらしい。目を泳がせてモゴモゴと次の言葉を探している。
「し、失礼します!!」
かろうじて紡いだ別れの挨拶をすませると、足早に教室を去っていった。
じんじんと痛む左頬をそっと手で抑えると、急にクラリスの口から笑いが漏れてきた。
「ふっ…ふふ……」
「ふふ、うふふふふ……うふっ…あははは………っっ!!」
あの嫌みたらしい女があんな風に激情するなんて、なかなか可愛いところもあるじゃない。クラリスはなぜか、勝ち誇ったような愉快な気持ちでいっぱいだった。
急に舵を切ったのは、全部中庭で見た景色のせいだ。あそこは昇降口と面していないので、放課後に人がいることは少ない。だから、噴水のそばで仲睦まじそうにお喋りをするエリオットとフローラは、四階からでも嫌でも目に入った。
(私が来るまで、カミラ様は一体どんな気持ちで窓の外を眺めていたのかしら?)
そう思うと、なんともやるせない気持ちになった。あの人を小馬鹿にしたような態度も、皮肉たっぷりの口調も、全部自分を守る為のなけなしの武装に思えてしまう。(実際そんなことはないのだろうが。)
加えて、今は自分も彼女と同じライバルポジションだという自覚がある為、校内で堂々と攻略対象とはしゃいでいるフローラに、見当違いな怒りを覚えた。せめてもう少し場所を選べないものだろうか。学園内ではいつどこで生徒に見られているか分からないというのに、たいした度胸である。仮に今日、ここではない別の場所でカミラと約束していたとして、明日には野暮な連中が中庭での様子をカミラに告げ口していただろう。結局、彼女が傷つくのは目に見えている。
(……いいわ。かなり難しそうだけど、私は貴女につくことにするわ、カミラ。)
本当はもう少し全体の様子を見てから立ち回り方を決めたかったのだが。今見る限り、フローラはエリオットルートに入っているようだし、そうなるとどのみちカミラとの接触は免れないだろう。
未だ熱を帯びている左頬を撫でながら、クラリスは一人、ゆっくりと今後の作戦を考えた。ただでさえ不穏な関係だったというのに、今日はそれを決定的にしてしまった。非常にまずい状況でありながら、クラリスはこれからのことを考えると、楽しくて仕方がなかった。
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