上 下
1 / 1

ラストクリスマス

しおりを挟む
 人類は一度滅びかけた。地球の外からやってきた謎の生き物によって、それでもいろんな奇跡と偶然と神様の気まぐれで人類は生き残った。たとえその数をほぼ全滅とまで減らされたとしても、まだ滅んでいない、滅んでいないのだ。やっと落ち着いた世界で必要になったのは次世代だった。またいつ来るかもしれない脅威に対して、という意味でも、この平和を味わいたいという意味でもかなり出産は奨励された。それはもはや、強制と言っても差し支えないほどに。

「おい!!ミク!アスカ!!どこにいるんだ!!出てこい!!」
 外から怒鳴り声が聞こえてくる。誰が出ていくもんか、という強い意志はあるけれど、隣にいる愛する彼女の姿を見ると自然と笑みも零れる。お互いに唇に指を当てて、しーっなんてすればもう笑いをこらえるほうが大変だ。
「今日こそは相手を選んでもらうからなーー!!」
 誰が選ぶかクソ親父め。声が遠くなっていくのを聞きながら、指を絡めた秘密の恋人と耳を澄ませる。ずいぶんと離れたのを感じて、やっと声を出す。
「誰が行くかっての」
「あはは・・・、私もミクちゃん以外は、その、嫌かなぁ」
「私だってアスカ以外なんて死んでも嫌」
 人口を増やすことが急務となったこの時代ではパートナーを持つことが責任の一端となった。でもそれは子供を産むことができる男女だけのことで私たちみたいな同性のパートナーは含まれていない。生まれた時から一緒、育ったのも一緒、今さら碌に知らない男とパートナーなんて絶対に嫌。
「昔は同性でも何も言われなかったらしいのにね」
「40だか50年前の話でしょ?羨ましいけど、その時代に生きてたら今ごろ死んでる可能性もあるのか・・・」
「微妙なところだねぇ」
「微妙なところですねぇ」
 大人は不思議だ。ただ必要だからという理由で好きな人を愛することすら禁止しようとする。そんなだから滅びかけるんじゃないの、とは流石に言えない。本当に冗談抜きで鉄拳制裁を食らうことになる。
「「くしっ」」
 隙間の沈黙を破るのですら二人同時だった。それにしても寒い。雪がそれなりに降り始めたこの頃では廃墟の中はやっぱり寒い。そろそろ戻ろうか、なんて言葉は恋人の言葉で遮られる。
「あっちにしっかりした建物あったよ、行ってみない?」
 アスカがそんなことを言い出すのは珍しい。こういうのは大体私が言い出しっぺで私がふり回すことが多い。だからこそ、今日みたいにアスカから誘われるととてつもなく嬉しい。アスカの気持ちが変わる前にそのしっかりとした建物に行ってみることにした。

 その建物はおそらくはホテルとして使われていたと思われるものだった。入口は朽ちているし、当然ながら受付らしき場所にも人がいない。というかあんなサイズじゃ手しか出せなくない?同じ疑問はアスカも持っていたらしい。
「なんか、受付小さいね・・・?」
「ね、鍵だけ出すとか?」
「わかんない、上行ってみよ」
 階段を上っていくとやっぱりただのホテルだ。さっきの謎の受付はなんかそういうウリのだろう。昔は色々なものが色々な種類あったって聞いたことがある。鍵はやっぱりどこも開いていた。とりあえず一番近場の部屋に入ってみる。
「「わぁ・・・」」
 思わず二人で感嘆の息が漏れる。それほど綺麗な部屋だった。そして真ん中には大きなベッドが鎮座している。二人どころか、三人、いや、私たちみたいに小柄なら四人ぐらいは寝れそうな大きなベッドだ。なんだか気後れしてしまって二人そろってベッドの端に腰を落ち着ける。
「いい場所だね・・・」
「・・・」
 アスカが無言で頭を預けてくる。アスカは恥ずかしがりやだからこうやって動作で気持ちを表そうとすることが多い。大人たちは嫌いみたいだけど、別に一人ぐらいそういう子がいてもかわいいと思う。そして、アスカがこうやって頭を預けるときは・・・。

 部屋は思ったよりも暖かくて、服を脱いでも特段寒かったりはしなかった。アスカの服を脱がすと細い肢体が出てくる。白くて、細くて、綺麗な体。その中に一筋走る大きな傷跡は、私たちを繋ぐ絆の痕でもある。彼女は見られるのを嫌そうにするけど、私は嫌いじゃない。
「・・・えっち」
 そうは言われても、傷口に舌を這わせた時に耳が赤くなってるのは隠せてない。
「そんな嫌そうにしなくてもいいじゃん。こんなにエッチなのに」
「そんなこと言うのミクだけだもん・・・」
 ツツと這わせた体の温度が上がっていくのが舌で感じる。少しづつ火照っていく彼女はきっと今生きている全部の人よりも綺麗で艶やかだった。
「ひゃっ」
 彼女の体を味わっていると、いつの間にか彼女の手が私の下腹部に触れる。使う予定もない場所だけど、こういう時に一番最初に反応するのはやっぱりここだ。疼くのは彼女に対してだけ、ほかの有象無象では不快感しかないのに。
 彼女の指が私の中に入ってくるたびに思わず中が痙攣してしまう、彼女は全く気にしていないようだけど。というかアスカは私が初めてだから当然といえば当然かもしれないけど。
「ミク、かわいいね・・・」
 耳元で細い声がゆっくりと浸透してくる。じっくりと浸透する言葉はどんどんと私の理性を溶かしていって、にやける口元を隠すことすら怪しくなってくる。
 アスカの指が私の割れ目をゆっくりと撫でる。まるでそれ自体が楽しいとでもいうかのように上に、下に、と指が往復する。そのたびに溢れて零れる愛液が彼女の指を汚しながら卑猥な音を立てる。私の手はポーズだけでも彼女の腕を止めようとしているけど、結局添えるだけになって、逆に彼女の手が動くことを助け始めている。
「すごい・・・。これ、すごいよ」
 真っ白に汚れた指を眺めながら感想を言うのは正直恥ずかしすぎて顔が燃える。
「ミク、はい」
 彼女の指が私の口の中に入ってくる。私がそれを止めることができるはずもなく、入ってくる指に舌を這わせる。これは調教されたわけじゃない、されたんじゃなくて彼女が一番喜んでくれるだけだ。指に這わせた舌からは自分の味がする。何度も舐めた味だけど美味しくはない、でも彼女が嬉しそうに指を動かしているのを見ると何度でも、何度でも綺麗にしてあげたくなる。
「アスカ、お願い」
 自分でも驚くほど甘ったるい声が出た。この部屋だとなんとなく気分が高ぶってしまっている、気がする。
「ふふ、はい、はい」
 彼女の指が、さっきまで執拗に撫でるだけだった指が、割れ目を開いて中に入ってくる。水に濡れた紙を無理やり開くような音を出しながら、指がゆっくりと奥まで入ってくる。ぞりぞりと私の弱点を撫でながら、外にある彼女の親指は私の弱点を的確に指で弾いた。
「んひっ」
 視界が白く濁るほどの快感は最近二人でスる暇がなくて、感度が上がっている私の快楽中枢を簡単に燃え上がらせる。快感を受け入れることにすべてのリソースを使った私の体は荒い息を漏らすことが精一杯だった。


 隅にある時計が正しいのは部屋に入った時に確認済みだ。まだまだ宵の口と言っても差し支えない時間だ。そういえば、今日は確か・・・。
「今日ってクリスマスってやつじゃなかったっけ」
 同じことを考えていたらしい。名前も知らない神様が生まれただか復活だか、とにかくめでたい日らしい。平和な時はプレゼントをもらったりしたらしいけど。
「・・・じゃあ、ここは神様がくれたのかな」
 思ったよりも掠れた声は少し恥ずかしかったけど、アスカはそんなこと気にしないだろう。
「そうかもね、あ」
「どうしたの?」
「めりーくりすます」
「・・・なにそれ」
「わかんない、なんか見たことあるなって」
 とにかく今日はめでたいらしい。
しおりを挟む

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

冴えない「僕」がえっちオナホとして旦那様に嫁いだ日常♡

nanashi
BL
タイトルのまま/将来的にラブラブになるCPのすれ違い肉体関係部分 R18エロlog・♡喘ぎ・BDSM 【内容】(更新時、増えたら追加) 体格差・調教・拘束・野外・騎乗位・連続絶頂・スパンキング・お仕置き・よしよしセックス・快楽堕ち・ストリップ 結腸・アナルビーズ・ちんぽハーネスで散歩・鞭 尿道開発・尿道プレイ・尿道拡張・疑似放尿・ブジー・カテーテル 強制イラマチオ・嘔吐(少し)・ 攻めの媚薬・受の号泣・小スカ・靴舐め 婚前調教編:ストリップ・竿酒・土下座・床舐め・開発・ぺニス緊縛・イラマチオ・オナ禁 【今後書きたい】種付けプレス・体格差のあるプレイ・ピアッシング・鼻穴射精・喉奥開発・乳首開発・乳首ピアス・おちんぽ様への謝罪・ハメ懇願土下座・異物挿入・産卵・貞操帯 (らぶらぶ軸で書きたい)フィスト・アナルホール 内容が分かりやすいよう更新日とプレイがタイトル。基本繋がってない。 モチベのために、応援や感想waveboxにいただけるととても嬉しいです♡

僕のえちえち婚約者、美咲。

ちろる
恋愛
僕の婚約者、美咲はとてもえちえちな子。 これは小説、と云うより美咲の実体験を細部まで何度もヒアリングし それを文字起こしした体験談になります。 より一層、読者様にイメージして戴けるように長時間掛けて モデリングした美咲が表紙の女の子で髪型から顔立ち、体形から それこそアンダーヘアまでと、本人にそっくりです。 YouTubeチャンネルhttps://www.youtube.com/channel/UCVSnjezbVX5wXKKALn3cvGA iwaraチャンネルhttps://www.iwara.tv/profile/misaki-mmd にはこの3dモデルの美咲をmmdにて踊らせている動画を載せていますので こちらの小説と合わせて御覧戴くと妄想に活用して興奮出来るかと思います。

転生したら死にそうな孤児だった

佐々木鴻
ファンタジー
過去に四度生まれ変わり、そして五度目の人生に目覚めた少女はある日、生まれたばかりで捨てられたの赤子と出会う。 保護しますか? の選択肢に【はい】と【YES】しかない少女はその子を引き取り妹として育て始める。 やがて美しく育ったその子は、少女と強い因縁があった。 悲劇はありません。難しい人間関係や柵はめんどく(ゲフンゲフン)ありません。 世界は、意外と優しいのです。

もうなんか大変

毛蟹葵葉
エッセイ・ノンフィクション
これしか言えん

さよなら、英雄になった旦那様~ただ祈るだけの役立たずの妻のはずでしたが…~

遠雷
恋愛
「フローラ、すまない……。エミリーは戦地でずっと俺を支えてくれたんだ。俺はそんな彼女を愛してしまった......」 戦地から戻り、聖騎士として英雄になった夫エリオットから、帰還早々に妻であるフローラに突き付けられた離縁状。エリオットの傍らには、可憐な容姿の女性が立っている。 周囲の者達も一様に、エリオットと共に数多の死地を抜け聖女と呼ばれるようになった女性エミリーを称え、安全な王都に暮らし日々祈るばかりだったフローラを庇う者はごく僅かだった。 「……わかりました、旦那様」 反論も無く粛々と離縁を受け入れ、フローラは王都から姿を消した。 その日を境に、エリオットの周囲では異変が起こり始める。

虫 ~派遣先に入って来た後輩が怖い~

銀色小鳩
恋愛
彼氏と別れて暗い気持ちで働く中、入ってきた派遣の後輩、はるか。同性は恋愛対象ではなかったのに。

日本

桜小径
エッセイ・ノンフィクション
我々が住む日本国、どんな国なのか?

ヒメサマノヒメゴト2〜殺し屋の姫、孕むまで終わらぬ臣下との交情〜

こうしき
恋愛
「毎日必ず三度は交わって、跡継ぎを成せ──」 殺し屋の治める国 ファイアランス王国では、国王エドヴァルドをはじめ、多くの者たちが失明した後に命を失う「血眼病(けつがんびょう)」という病に罹患していた。 片目が失明し、最早これまでと死後を悟ったエドヴァルドは、次期国王にして第二王女のアンナに一刻も早く子を成すよう命令を下す。 アンナの婚約者 エリックが長期出張で不在の中、アンナの相手にと抜擢されたのは、彼女の臣下で従兄のシナブルだった。 長年、アンナを思い続けていたシナブルと、彼のことを男として意識をしてこなかったアンナが交わるのを、「きちんと膣に射精しているかどうか」監視するよう命じられたのはシナブルの兄 ルヴィス。 主と臣下、期限付きの性交期間。日に三度も交わり続ける二人の関係は、歪なものに形を変えてゆく──。 全5話+おまけ予定です ──────── この作品は、「英雄と呼ばれた破壊者の創るこの世界で」のヒロイン アンナと、臣下シナブルの56話以降に出てきた過去設定を書いたものです(英はかの1話時からは10年前の出来事で、華々の乱舞1話時からは12年後のお話です)。「華々の乱舞」でこの前後の話が出てきますが、まだそこにまで至っておりません。 作者が書きたかった為、先に出してしまうこととなりました……。

処理中です...