上 下
41 / 41

【終】■すきだらけのなのは当たり前■

しおりを挟む
■すきだらけのなのは当たり前■

「水野って、本当に隙だらけだな?」

先輩の言葉に、「は?」と思いながら顔を見上げたら確かに。その言葉を、今は甘んじて受けましょう。なぜか? 顔の良い先輩の、手の平以外に見ることのない素肌が見えたから。一瞬で俺は、キャパオーバー。

「うわあああああ!?」

刺激が強い! 強すぎる! おまけに何か、不思議と良い匂いがする!
俺の煩い悲鳴を聞いたところで、先輩はどこ吹く風。気にしないどころか、今こそ攻め時とでもいうように、言葉を続けた。

「水野。俺はずっと恋なんて知らなかったし、特別誰かに固執したりしなかった。告白されるたびに、好きですって何だろう? って」

先輩の瞳に映る俺の顔は、どう見ても焦っていた。それに色は分からないにしても、きっと真っ赤なんだろう。囁かれた耳が熱いし、何も無いのに乾いたように唾を飲み込んでばかりだ。

「そうですか、分かりました。ちゃんと話を聞くので、あのっ、体勢をですね……っ」

グググッ、と押し返そうとしてみたが無意味。またギシッ、とソファーを軋ませて、先輩が俺の耳元で囁いた。

「水野、好きだ」

「先輩っ、ちょっ……! 本当にやめっ……!」

「嫌だ」

「我儘!」

ふっ、と小さく笑った後。「知っているだろう?」と聞こえた。

「水野に言われた時は、分からなかっただけじゃなくて、本当は少し怖かったんだ。もし恋人になったら? 一線を越えたら? って思うと、嬉しいと思うのと駄目になった時に元に戻れない気がして怖かったんだ」

「そ……んなこと……」

今さらだ。俺は、「あの時」先輩の好きが欲しかった。特別になりたかったのに。

「今さらだって思うよな? 勝手だって思うよな? 俺もそう思う。だけどさ。やっぱり好きだから。水野に再会したら、もう今度こそ好きだって言うって決めたんだよ、俺」

「…………」

ドッドッドッドッ。

心臓は煩いし、先輩の耳元の囁きで、熱でもあるんじゃないかと思うくらい身体も熱い。理由は、至近距離だからじゃない。先輩の言葉を聞いたから。嬉しいと思っている俺がいるから。それからやっぱり…………俺も先輩が好きだから。

「水野、もう一度言うぞ」

先輩がようやく少し離れてくれた。といっても、俺たちは変わらずソファーの上で向かいあったまま。俺の心臓の音が、外に漏れてるんじゃないかと思うくらい、心臓が煩いまま。

「水野、好きだ」

「…………~~~~っ! おっ……俺も……好きです……」

最後の言葉は段々と小さくなってしまったけれど、この距離だ。問題なく聞こえただろう。俺の中にいた、高校生の俺がまたチラリと顔を出す。幻覚のように、俺の頭の中に出て来ては、「やったじゃん! 俺!」とエールを送っていた。

■すきだらけのなのは当たり前■

(だって、俺も先輩もどっちも両想いなんだから)

好きだらけにもなるわけで。
愛でたく恋人同士か? と考える俺に、もう一度先輩が言った。

「あー……そのっ、何だ。今後のことを話すとだな……笑うなよ? 俺……そういう経験無いからな……?」

「大丈夫です。俺も無いですし。まぁ、二人して魔法使いにギリならなくて良かったですね?」

「魔法使い?」

「こっちの話しです」

クスクスと笑いながら、俺達の時間は過ぎて行った。

■俺をフッた初恋相手が、転勤して上司になったんだが?■

*********
これで一応こちらは完結です!
見切り発車で始めましたが、放棄せずちゃんと終わらせられて良かったです
拍手ありがとうございました。気づいた際、嬉しかったです
感想頂けると嬉しいです(強欲)
次回作などは特に今のところ考えていません><
オリジナルはやっぱり難しいですね。チマチマ別の年齢制限を単発でたまに更新していくかなぁという感じです。
しおりを挟む
感想 2

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(2件)

やさしいのど飴

初めましてー!
面白かったです😘
二人のその後も是非読みたいです~。
そのうちお願い致します!

彩華
2023.05.15 彩華

初めまして!(^-^)
お読み下さり、またコメント下さり有難うございます!
とっても嬉しいです
現代の話も初めてで見きり発車で不安でしたが、本当にそういって頂けて嬉しいです!
何か浮かべば……!
たぶんしれっと指輪あたりプレゼントしてますよ←

解除
瀬川
2023.02.19 瀬川

完結おめでとうございます!
面白かったです

彩華
2023.02.19 彩華

わ~~!コメント有難うございます!
また、おめでとうと面白かったまで!とっても嬉しいです!(∩´∀`)∩

解除

あなたにおすすめの小説

【完結】義兄に十年片想いしているけれど、もう諦めます

夏ノ宮萄玄
BL
 オレには、親の再婚によってできた義兄がいる。彼に対しオレが長年抱き続けてきた想いとは。  ――どうしてオレは、この不毛な恋心を捨て去ることができないのだろう。  懊悩する義弟の桧理(かいり)に訪れた終わり。  義兄×義弟。美形で穏やかな社会人義兄と、つい先日まで高校生だった少しマイナス思考の義弟の話。短編小説です。

【BL】男なのになぜかNo.1ホストに懐かれて困ってます

猫足
BL
「俺としとく? えれちゅー」 「いや、するわけないだろ!」 相川優也(25) 主人公。平凡なサラリーマンだったはずが、女友達に連れていかれた【デビルジャム】というホストクラブでスバルと出会ったのが運の尽き。 碧スバル(21) 指名ナンバーワンの美形ホスト。博愛主義者。優也に懐いてつきまとう。その真意は今のところ……不明。 「僕の方がぜってー綺麗なのに、僕以下の女に金払ってどーすんだよ」 「スバル、お前なにいってんの……?」 冗談? 本気? 二人の結末は? 美形病みホスと平凡サラリーマンの、友情か愛情かよくわからない日常。

君のことなんてもう知らない

ぽぽ
BL
早乙女琥珀は幼馴染の佐伯慶也に毎日のように告白しては振られてしまう。 告白をOKする素振りも見せず、軽く琥珀をあしらう慶也に憤りを覚えていた。 だがある日、琥珀は記憶喪失になってしまい、慶也の記憶を失ってしまう。 今まで自分のことをあしらってきた慶也のことを忘れて、他の人と恋を始めようとするが… 「お前なんて知らないから」

モテる兄貴を持つと……(三人称改訂版)

夏目碧央
BL
 兄、海斗(かいと)と同じ高校に入学した城崎岳斗(きのさきやまと)は、兄がモテるがゆえに様々な苦難に遭う。だが、カッコよくて優しい兄を実は自慢に思っている。兄は弟が大好きで、少々過保護気味。  ある日、岳斗は両親の血液型と自分の血液型がおかしい事に気づく。海斗は「覚えてないのか?」と驚いた様子。岳斗は何を忘れているのか?一体どんな秘密が?

まさか「好き」とは思うまい

和泉臨音
BL
仕事に忙殺され思考を停止した俺の心は何故かコンビニ店員の悪態に癒やされてしまった。彼が接客してくれる一時のおかげで激務を乗り切ることもできて、なんだかんだと気づけばお付き合いすることになり…… 態度の悪いコンビニ店員大学生(ツンギレ)×お人好しのリーマン(マイペース)の牛歩な恋の物語 *2023/11/01 本編(全44話)完結しました。以降は番外編を投稿予定です。

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

そばにいられるだけで十分だから僕の気持ちに気付かないでいて

千環
BL
大学生の先輩×後輩。両片想い。 本編完結済みで、番外編をのんびり更新します。

僕のために、忘れていて

ことわ子
BL
男子高校生のリュージは事故に遭い、最近の記憶を無くしてしまった。しかし、無くしたのは最近の記憶で家族や友人のことは覚えており、別段困ることは無いと思っていた。ある一点、全く記憶にない人物、黒咲アキが自分の恋人だと訪ねてくるまでは────

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。