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28】久保君じゃないお客さん②
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28】久保君じゃないお客さん②
僕に久保君以外のお客さんが来ていると言われ、職員室へ向かった。
部屋に入ってみれば、これまた成長し久保君と同じような制服を着ている女の子が一人。誰でしょう? なんて難易度の高いクイズを出されつつ、ポロリと出たヒントに僕の答えは導き出され。
「……山野百合ちゃん……?」
「正解です」
ぴえん、と泣きマネをした百合ちゃんを残し。また園長先生が「では、また若いお二人で」なんて言いながら職員室を後にした。職員室に、また僕と若人だけ。
「先生。圭介が言った通り、ほんと年とってないですね!?」
「百合ちゃん。僕もおじさんだからね?」
「いやいや、超若いですって!」
ニコニコと僕に笑いながら話しかけてくれる百合ちゃん。久保君は苗字で言ってしまうけど、百合ちゃんは今のクラスの子にいるのもあり名前呼びになってしまう。それに久保君てば、僕のことを話してるの? と少し焦った。
「久保君てば、変なこと言ってない? というか、まだ連絡を取ってるんだね」
「ううん。圭介、同じクラスなの。今じゃ腐れ縁てやつ?」
「あはは。二人とも、昔と変わらない感じで安心しちゃった。学校はどう?」
「まぁ、それなりに。圭介がやっと先生に会いに行ったから、私も我慢出来なくて来ちゃったけど、すみません。急に来ちゃって」
「大丈夫だよ。来てくれて嬉しいよ」
一度席に座り直し。こんな感じで、久保君の時のように談笑していた時だ。これまたデジャブのように百合ちゃんが、フッ……と静かになって僅かな沈黙。
「百合ちゃん?」
「先生、これオフレコでお願いしたいんだけどさ」
「うん?」
「圭介に、何か言われなかった?」
ジッ……と真偽を確かめるように僕を見つめる瞳に、思い当たる節がある。
「何か? うーん、また来て良いですかってことは言われたけど……」
「……」
僕は上手いこと誤魔化せているだろうか? と焦ったが、それと同時に気づいてしまったことがあったわけで。
「百合ちゃん、昔から久保君のこと好きだったもんね」
「は……はぁあああ!? 違うもん! おこちゃまの圭介のこと何か、全然好きじゃないですけど!?!?」
(ああ、これは好きだな)
疎い僕でも分かるくらい、百合ちゃんの慌てようは凄かった。顔だって一気に赤くなっていて、違う! と抗議する様子は久保君と百合ちゃんが昔喧嘩をした時の面影がある。
「百合ちゃんにすれば良いのに」
心の声が、ポロリと出てしまい。僕の言葉に何かを察したような百合ちゃんの表情が、慌てる様子から一変。冷静さを取り戻し、真剣な様子で「先生」と僕に言った。
「先生。それはちょっと私にも圭介にも失礼だよ」
何が、とは言わなかったが百合ちゃんは気づいているんだろう。確かに、向けられる好意を受け止めるよりも、僕なんかよりもと世間の枠組みに嵌めようとして。百合ちゃんだったら、何て勝手に押し付けようとして。
「……ごめんね。今のは僕が悪かったね」
僕が反省した後、百合ちゃんが「良いよ!」と言ってくれた。
「良いよ、先生。ちなみに私、圭介の味方だから」
「え?」
百合ちゃんは、久保君のことが好きなんでしょ? と言いかけたが、百合ちゃんがシーッというようなジェスチャーをした。
「私の恋は、もう失恋してんの。だから好きな男の恋くらい、応援したいんだよ」
その言葉は思いのほか大きく。
百合ちゃんは、そのまま帰って行った。
********
僕に久保君以外のお客さんが来ていると言われ、職員室へ向かった。
部屋に入ってみれば、これまた成長し久保君と同じような制服を着ている女の子が一人。誰でしょう? なんて難易度の高いクイズを出されつつ、ポロリと出たヒントに僕の答えは導き出され。
「……山野百合ちゃん……?」
「正解です」
ぴえん、と泣きマネをした百合ちゃんを残し。また園長先生が「では、また若いお二人で」なんて言いながら職員室を後にした。職員室に、また僕と若人だけ。
「先生。圭介が言った通り、ほんと年とってないですね!?」
「百合ちゃん。僕もおじさんだからね?」
「いやいや、超若いですって!」
ニコニコと僕に笑いながら話しかけてくれる百合ちゃん。久保君は苗字で言ってしまうけど、百合ちゃんは今のクラスの子にいるのもあり名前呼びになってしまう。それに久保君てば、僕のことを話してるの? と少し焦った。
「久保君てば、変なこと言ってない? というか、まだ連絡を取ってるんだね」
「ううん。圭介、同じクラスなの。今じゃ腐れ縁てやつ?」
「あはは。二人とも、昔と変わらない感じで安心しちゃった。学校はどう?」
「まぁ、それなりに。圭介がやっと先生に会いに行ったから、私も我慢出来なくて来ちゃったけど、すみません。急に来ちゃって」
「大丈夫だよ。来てくれて嬉しいよ」
一度席に座り直し。こんな感じで、久保君の時のように談笑していた時だ。これまたデジャブのように百合ちゃんが、フッ……と静かになって僅かな沈黙。
「百合ちゃん?」
「先生、これオフレコでお願いしたいんだけどさ」
「うん?」
「圭介に、何か言われなかった?」
ジッ……と真偽を確かめるように僕を見つめる瞳に、思い当たる節がある。
「何か? うーん、また来て良いですかってことは言われたけど……」
「……」
僕は上手いこと誤魔化せているだろうか? と焦ったが、それと同時に気づいてしまったことがあったわけで。
「百合ちゃん、昔から久保君のこと好きだったもんね」
「は……はぁあああ!? 違うもん! おこちゃまの圭介のこと何か、全然好きじゃないですけど!?!?」
(ああ、これは好きだな)
疎い僕でも分かるくらい、百合ちゃんの慌てようは凄かった。顔だって一気に赤くなっていて、違う! と抗議する様子は久保君と百合ちゃんが昔喧嘩をした時の面影がある。
「百合ちゃんにすれば良いのに」
心の声が、ポロリと出てしまい。僕の言葉に何かを察したような百合ちゃんの表情が、慌てる様子から一変。冷静さを取り戻し、真剣な様子で「先生」と僕に言った。
「先生。それはちょっと私にも圭介にも失礼だよ」
何が、とは言わなかったが百合ちゃんは気づいているんだろう。確かに、向けられる好意を受け止めるよりも、僕なんかよりもと世間の枠組みに嵌めようとして。百合ちゃんだったら、何て勝手に押し付けようとして。
「……ごめんね。今のは僕が悪かったね」
僕が反省した後、百合ちゃんが「良いよ!」と言ってくれた。
「良いよ、先生。ちなみに私、圭介の味方だから」
「え?」
百合ちゃんは、久保君のことが好きなんでしょ? と言いかけたが、百合ちゃんがシーッというようなジェスチャーをした。
「私の恋は、もう失恋してんの。だから好きな男の恋くらい、応援したいんだよ」
その言葉は思いのほか大きく。
百合ちゃんは、そのまま帰って行った。
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