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■王子は恋人の騎士団長を愛したい!■【王子×騎士団長】
1】
俺の名前はギルベルト。一国の騎士団長にして、年は30を過ぎたおっさんだ。ありがたくも、歴代の騎士団長の中で最年長で任を任され。俺が年を取るだけ騎士団長として長年勤めてきた。おっさんだといっても、まだ諸先輩に比べると人生は長い。許されるならお役御免と言われるまでは、騎士団長として職務を全うしたいと思っている。
さて。それと同じくらいの時間を、俺はこの国の王子。アーサー様と共に過ごした。
俺もまだ若く、赤ん坊のアーサー様を抱いたことだって覚えている。アーサー様が幼い頃から共に過ごし。聡明なアーサー様が、いつか立派な王に。そして、アーサー様が思われる相手と一緒になってくれれば。ただ、そう思っていたのに────。
『ギルベルト、好き』
『有難うございます』
幼少期に向けられた好意は、とても可愛らしく。一層この方を、この国を守らなくてはと思っていた頃が懐かしい。だがアーサー様は成長しても、変わらず俺に「好き」だと言い続け。
『ギルベルト、好きだよ』
好意の方向が親愛では無いと気付いたが、どうすることも出来ず。
見目麗しく、文武の面でも切磋琢磨する立派な王子へと成長された。アーサー様は、各国の姫君やご令嬢たちの間で人気になり恋文も沢山届いているがアーサー様の返事はいつだって同じ。「心に決めた人がいる」と、穏やかながら確かな芯を持ち。女性たちを傷つけないように接してきた。その心に決めた人が、悲しいかな。今ではおじさんの年齢に括られるようになった、俺というわけだ。
『申し訳ございませんが、俺はアーサー様の気持ちに応えられません』
『大丈夫。私は諦めないから』
(何も大丈夫ではないんだが……)
最初こそ、好意の延長上にある気持ちを俺に抱いているのと思っていた。だが違うらしい。国のため、アーサー様のためを思えば、俺よりも女性と結ばれる方が良いに決まっている。
隙あらば、好きだと伝えてくるアーサー様に、長い付き合いだからこそハッキリと気持ちに応えられないと伝えた。それでもアーサー様は諦めることなく。何度も何度も、俺に好きだと伝えてきた。
……結果。
俺とアーサー様の関係は、非常に不健全なものになり。アーサー様は俺に女性物の下着を贈ったり、洋服を贈ったり。かくゆう俺も、アーサー様には最後は甘く。二人だけの秘密だと、アーサー様と夜に二人。気持ちは断りつつも、人には話せないようなことをしていた────のは、もう過去のこと。
「ギルベルト。こんな大切な夜に、考え事かい?」
「あ、いえ。そういうわけでは」
ハッとした時には、アーサー様のご機嫌は少し斜めになってしまったようだ。こういう時のアーサー様の笑顔は怖いと、最近学んだ。
場所はアーサー様の部屋で、二人だけ。夜遅くにアーサー様の部屋を訪れたのは、他でもない俺自身。まぁ、なんだ。色々とここを訪れる前にあったわけだが、アーサー様に話せばご機嫌斜め以上に悪くなるのは想像も容易いので黙っておく。
「私の好きな、メイド姿なのに」
アーサー様の言う通り。俺は騎士団長として鍛えられた身体をしているのに、女性物のワンピースを着てアーサー様の部屋へとやって来た。今まで夜はアーサー様のメイドとして、厭らしいことをしていた時の格好。そしてこれからアーサー様に連れられて向かうのは、アーサー様のベッド。
「私に奉仕してくれるんだろう?」
その言葉は、間違えなく俺が言った言葉。好きだと伝える前に、奉仕すると伝えた。
(駄目だ。アーサー様と二人きりだと、普段通りに振る舞えない)
騎士団長としての俺なら、しっかりと答えられるのに。足腰だった、こんなに震えたりしないのに。俺は黙ったままコクンと首を縦に振り、そう長くないベッドまでの距離が、酷く遠く感じた。
******
更新しました。
【完結・BL】王子は騎士団長と結婚したい!【王子×騎士団長】の続きもののような形ですが、
こちら単品でもお読み頂けるかと思います。
短くえっっっなことをするだけの予定です。
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俺の名前はギルベルト。一国の騎士団長にして、年は30を過ぎたおっさんだ。ありがたくも、歴代の騎士団長の中で最年長で任を任され。俺が年を取るだけ騎士団長として長年勤めてきた。おっさんだといっても、まだ諸先輩に比べると人生は長い。許されるならお役御免と言われるまでは、騎士団長として職務を全うしたいと思っている。
さて。それと同じくらいの時間を、俺はこの国の王子。アーサー様と共に過ごした。
俺もまだ若く、赤ん坊のアーサー様を抱いたことだって覚えている。アーサー様が幼い頃から共に過ごし。聡明なアーサー様が、いつか立派な王に。そして、アーサー様が思われる相手と一緒になってくれれば。ただ、そう思っていたのに────。
『ギルベルト、好き』
『有難うございます』
幼少期に向けられた好意は、とても可愛らしく。一層この方を、この国を守らなくてはと思っていた頃が懐かしい。だがアーサー様は成長しても、変わらず俺に「好き」だと言い続け。
『ギルベルト、好きだよ』
好意の方向が親愛では無いと気付いたが、どうすることも出来ず。
見目麗しく、文武の面でも切磋琢磨する立派な王子へと成長された。アーサー様は、各国の姫君やご令嬢たちの間で人気になり恋文も沢山届いているがアーサー様の返事はいつだって同じ。「心に決めた人がいる」と、穏やかながら確かな芯を持ち。女性たちを傷つけないように接してきた。その心に決めた人が、悲しいかな。今ではおじさんの年齢に括られるようになった、俺というわけだ。
『申し訳ございませんが、俺はアーサー様の気持ちに応えられません』
『大丈夫。私は諦めないから』
(何も大丈夫ではないんだが……)
最初こそ、好意の延長上にある気持ちを俺に抱いているのと思っていた。だが違うらしい。国のため、アーサー様のためを思えば、俺よりも女性と結ばれる方が良いに決まっている。
隙あらば、好きだと伝えてくるアーサー様に、長い付き合いだからこそハッキリと気持ちに応えられないと伝えた。それでもアーサー様は諦めることなく。何度も何度も、俺に好きだと伝えてきた。
……結果。
俺とアーサー様の関係は、非常に不健全なものになり。アーサー様は俺に女性物の下着を贈ったり、洋服を贈ったり。かくゆう俺も、アーサー様には最後は甘く。二人だけの秘密だと、アーサー様と夜に二人。気持ちは断りつつも、人には話せないようなことをしていた────のは、もう過去のこと。
「ギルベルト。こんな大切な夜に、考え事かい?」
「あ、いえ。そういうわけでは」
ハッとした時には、アーサー様のご機嫌は少し斜めになってしまったようだ。こういう時のアーサー様の笑顔は怖いと、最近学んだ。
場所はアーサー様の部屋で、二人だけ。夜遅くにアーサー様の部屋を訪れたのは、他でもない俺自身。まぁ、なんだ。色々とここを訪れる前にあったわけだが、アーサー様に話せばご機嫌斜め以上に悪くなるのは想像も容易いので黙っておく。
「私の好きな、メイド姿なのに」
アーサー様の言う通り。俺は騎士団長として鍛えられた身体をしているのに、女性物のワンピースを着てアーサー様の部屋へとやって来た。今まで夜はアーサー様のメイドとして、厭らしいことをしていた時の格好。そしてこれからアーサー様に連れられて向かうのは、アーサー様のベッド。
「私に奉仕してくれるんだろう?」
その言葉は、間違えなく俺が言った言葉。好きだと伝える前に、奉仕すると伝えた。
(駄目だ。アーサー様と二人きりだと、普段通りに振る舞えない)
騎士団長としての俺なら、しっかりと答えられるのに。足腰だった、こんなに震えたりしないのに。俺は黙ったままコクンと首を縦に振り、そう長くないベッドまでの距離が、酷く遠く感じた。
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更新しました。
【完結・BL】王子は騎士団長と結婚したい!【王子×騎士団長】の続きもののような形ですが、
こちら単品でもお読み頂けるかと思います。
短くえっっっなことをするだけの予定です。
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