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1】最悪の目覚め

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1】最悪の目覚め

 今朝の目覚めは、今まで生きてきた中で一番最悪の目覚めかもしれない。いや、きっとそうに違いない。

「ん……、ん……?」

もう朝だと頭では分かり始め、起きようとした頃だった。頭が覚醒するよりも早く、ギシリと何故かベッドが軋んだかと思えば、自身の唇が塞がれた。ちゅっ、と柔らかな感触を感じたかと思えば、ゆっくりと入り込んでくる何か。

「ん、ぁ……っ、あ゛……っ?」

(何か入ってきている……?)

何かと思えば、このヌロリ動くコレは恐らく舌だ。なぜだか舌が入り込んできている。
気持ち良く寝ていたというのに起きて早々、口が塞がれ頭がクラクラする。おまけに、身体に力も入らない。抵抗しなくては、そう頭では分かっていても、何をどうしたら口内に侵入した舌を。私の身体に覆いかぶさる身体を、どうやったら、どかせることが出来るだろう? 

(このっ……!)

心の中で、思わず悪態をつくが状態は変わらない。未だ瞼は重たく、開いて相手を睨むことも出来ない。

「ん……ふ、ぅ゛……♡」

ちゅっ♡ ちゅっ♡ ちゅぷっ♡ レロォッ……♡

舌先を合わせたかと思えば、そのまま舌先を絡ませる。それから私の舌先と唾液を吸い上げて、自分の唾液を送り込んで飲ませてようとしてくる。苦しさを感じつつ、どうにか精一杯の抵抗に力が入り始めた腕で相手の胸元を押せば、ゆっくりと口内から舌が出て行った。

レロォッ……ちゅっ♡

最後に触れるだけのキスを一つ、頬にして。

「は……っ、はぁっ……!」

頭と身体に酸素を送るために、大きく深呼吸をする。濡れた口元を手の甲で拭き取って、覚醒し開いた瞳でキッ……! と相手の方を、思わず睨んだ。

(一体誰だ!?)

この家には、私一人しかいない。そもそも、この家には昨日越してきたばかり。強盗か? と思ったが強盗が、寝ている男にキスなんかするだろうか。
相手────名前をろくに知らない男性がそこには立っていた。身長は高く、漆黒の髪に所作はどこか上品さを感じる人物。それでも人の寝込みを襲うような人。

「君は……っ、君は朝から一体何を……っ!?」

そう言えば、私の言葉を聞いた相手は怒る私と異なり。随分と落ちついた様子で、私が怒っていることなど知らぬとばかりに、平然とした様子で言った。

「何って、食事ですよ? 人間でいうところの朝ごはんってやつです」

(キスが食事……?)

「なら、ちゃんと食事を取れば……」

「まぁ人間の食事で取れないこともないですが、俺は淫魔なので。それに食べるなら、美味しい方がいいでしょう?」

「な……にも言って……」

(淫魔? いや、淫魔がどうして私の家に? いや、待て。そういえば彼は昨日……)

どこかで見覚えがあるような……と思えば、私よりも早く相手がオーバーなリアクションをしながら言った。

「やだなぁ、忘れたんですか? 昨日も俺に食事をくれたじゃないですか。ねぇ……神父様?」

ニコリと綺麗に微笑んだ彼に、私は何も言えなかった。

(一体どういうことだ……!?)

*****
新しく始めました(^^)
今度は騎士団長じゃない…!(笑)
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