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165】思い出だけでもというので②

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165】思い出だけでもというので②

 入団した頃のことも覚えている自身の可愛い部下に、告白されている。
それこそ、最初に聞こえた「好き」という言葉を、気の迷いだと思わせるためか。最近告白される機会があったからか。理解しかけた意味を、私はワザとはぐらかしてしまった。だが、相手。マークの気持ちは本物らしい。私の言葉に、すぐに口を開き。

「違います! 俺は、俺は……っ。アラン様を恋愛対象として好きなんです!」

その言葉は、静かな場所に大きく響いていた。まっすぐと私を見つめる瞳が、真剣な眼差しをしている。その瞳に似た眼差しを、最近見たことがあるのを思い出し……。それから、はぐらかそうとした自身が悪いことをしてしまったと悟った。

(私は、酷いことをしてしまったな)

素直に謝らなければいけないと思った。

「マーク。君の気持ちを素直に受け取らずにすまない。謝罪する」

「いえ。突然こんなこと言われたら、驚きますよね。すみません。しかも同じ男に……」

「マーク。それは違う。人のことを思う気持ちに、性別は関係ない。君が私に好意を抱いてくれていることは、嬉しい。だが、そのっ……私はどうも、そういった感情に疎くてな」

「アラン様が、今まで誰かとお付き合いしていたというお話は、聞いたことがありませんもんね」

「今まで騎士団員として、訓練ばかりしていたからなぁ……」

「分かっています。そりゃあ、思いが通じれば幸せでしょうけど、特別アラン様と恋人同士になれるとは思っていません。ただ、好きだと自覚してから毎日アラン様を見つめていると自分の気持ちが大きくなって。黙っておくのが良いと思いながらも、やっぱり好きだと言う気持ちが大きくなって。それなら、いっそ伝えてフラれた方が楽になれるんじゃないかって思ったりして……そしたら訓練にも身が入らなくなってしまって……」

「マーク……」

団員にも、自身の恋愛経験の無さを指摘されるとは。
それはさておき、やはり私はマークの気持ちに応えることは出来ない。可愛い部下としか思えない。だが、マークの好意は素直に嬉しい。

「私のことを、思い詰めるほど考えてくれたんだな。有難う」

「アラン様……っ、あのっ……!」

「なんだ?」

「フラれるのは、本当にいいんです。俺の気持ちの整理のために、好きだと伝えただけなんで。ただ、そのっ……俺の我がままだって分かってるんですけど……!」

困ったような。それでいて、どうしたら良いか分からない表情。助けて欲しいと訴えるように、マークが私を見つめた。

「マーク?」

「アラン様。俺に思い出をくれませんか?」

******
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