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91】隣国からの客人⑤

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91】隣国からの客人⑤

 「ところでナイト殿。今日はどうされたのですか? 特に何か連絡はありませんでしたが……何か口外出来ないことが? それでしたら、レオ殿は席を外して貰いますが」

ナイト殿がお見えになり、とりあえずレオ殿とナイト殿の自己紹介は終わったようだ。談笑するのも、勿論良いがナイト殿は何か別に用件があったのでは? と冷静になる。同じ騎士団長という立場だ。私とて、似たような経験がある。事前連絡なしとはいえ、連絡を寄こせなかったのは、急を要すること。もしくは、表立って連絡出来ない事情で訪問されたのであれば……。

(何か重要な話があるのかもしれない)

先ほどは目配せ程度だったが、二度目はハッキリとした声でレオ殿に席を外して貰うと伝えた。私が真剣な顔でナイト殿に問えば、穏やかに微笑む。

「お気遣い下さり有難うございます、アラン殿。安心して下さい。急用で来たのでもなく、王命などの密命は承っておりません。ただの観光です。ほら、随分と軽装でしょう?」

ナイト殿がクルリと一回転し、最後にステップを踏むようにポーズを取った。確かに言われてみれば、ナイト殿は軽装だった。それこそ、私が休日に過ごすような。街中にこのままいれば、高貴な人とは思わず。顔を知らない者は、端正な顔立ちの旅人だと思うだろう。

「観光?」

「そうです。アラン殿も言われませんか? 働き過ぎだと。私は団員たちに言われてしまいまして。休んでくれと直談判されてしまって……」

「ナイト殿は、仕事熱心ですからね。私もナイト殿の団員だったら、一緒に直談判しているでしょうね」

「アラン殿まで、そんな……。まぁ、そういうわけで、暫く休むように言われてしまったんです。ですが、城にいてはつい仕事をしてしまうし、仕事をしているところを見つかって、子供のように叱られてしまいました」

「あははっ、まさかナイト殿を叱るだなんて」

「まぁ、私の身体を心配してのことだとは分かっているんですけどね」

「そうですね」

「で、どうしようと思ったところ、アラン殿に会いたいなと思いまして。こうして観光という名目で、アラン殿に会いに来たというわけです」

「そうだったんですね。安心しました。改めて、お会いできて嬉しいです」

「お忙しい中、お時間を割いて下さり有難うございます」

「いえ! そんなことは」

「ああ、忘れていました。失礼」

「ナイト殿……?」

ちゅっ。

「……ぁ」

「!」

「挨拶を忘れていました」

それは、ほんの数秒のこと。
ナイト殿が私の腰に触れたかと思えば、グッ……! と身体が引っ張られ。痛みこそないが、フワリと鼻孔にナイト殿の香りと共に頬に柔らかな感触を感じた。


*******
う~ん。たまに出そうかなぁ
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