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79】人には聞かず調べてみようとしたものの
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79】人には聞かず調べてみようとしたものの
私の名前はアラン。この国の騎士団長を務めている。
今日は書類関係の仕事を終え、別に調べ物をするために書庫へと来ている。
(誰かに聞くわけでもないし、私一人で調べる程度ならレオ殿も怒りはしないだろう)
この場にいないレオ殿に気を遣ったのは、レオ殿がエッ……性的な質問は自分に聞いて欲しいと言ったから。団員達に聞けば早く分かるかもしれないが、レオ殿に分かりましたと言ってしまっているので、約束を守っている。
だが、賢者のレオ殿までとはいかないが、私だって知的探求心はあるわけで。
(尻を狙われるとは、どういう意味なんだ?)
先日、レオ殿宅で食事をした際。初めて見るほどに酔ったレオ殿が、口走った言葉。団員達にすら尻を狙われると言われたが、一体どういう意味なのだろう?
「何か文学的表現か? 慣用句なのか?」
知らない言葉が、未だに引っかかり。結果、書庫で本を漁っているというわけだ。
「辞書を引いてみたが、なかなか検討がつかん。辞書で「し」のところに、それらしい表現はないし……」
本当に、尻を狙うとは一体何なんだ?
「モンスターなんかに背後を取られるなという意味なのか?」
フム、と考えてみたがこれでも騎士団長だ。流石にモンスターに関わることならば、私が知らないはずがない。それに、一応そこそこ良い成績で学業を修めてきた。一般教養的な言葉ならば、知らないはずがない。
「ということは、医学的なものか?」
尻という部位的解釈から、医学書のページも捲ってみる。人体について詳しく書かれた本にも尻の例え話は特になかった。
「うーん……」
「アラン様? 何か調べものですか?」
私が何度も本を取ったり直したりをしているため、書庫の管理をしている担当者が声をかけてきた。
「すまない。煩かったか?」
「いえいえ、そんなことは。ただ、随分と熱心に調べ物をしているご様子でしたので、お力添えが出来ればと思いまして」
「気遣い感謝する。だが、気にしないでくれ。たいした調べものではないんだ」
一瞬、「尻を狙われている」という言葉を知っているか? と聞きそうになったが、レオ殿の顔がチラついてすぐに止めた。約束したのだ。守らなくては。それに、もしまたレオ殿に他の人に聞いたとバレたら、何をされるか分からない。
「そうなのですか?」
「ああ! 本当に大丈夫だ。この後レオ殿に会う予定があるから、念のためにレオ殿にも聞いてみることにするよ」
「そうですが。賢者レオ様に聞かれるのでしたら、間違いありませんね」
はは、と笑った私の声は上ずっていなかっただろうか。会う予定も無いのに、レオ殿の名前を出して私は急いで出した本を片付けた。
「有難う。また来るよ」
「ええ、お待ちしています」
ニコリと笑って、書庫を出て。
私は暫く歩いた後、静かに自室へと戻って行った。
(あまり気が進まないが、解決しないのも気になる。仕方がない。今度レオ殿に聞いてみることにするか)
*******
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私の名前はアラン。この国の騎士団長を務めている。
今日は書類関係の仕事を終え、別に調べ物をするために書庫へと来ている。
(誰かに聞くわけでもないし、私一人で調べる程度ならレオ殿も怒りはしないだろう)
この場にいないレオ殿に気を遣ったのは、レオ殿がエッ……性的な質問は自分に聞いて欲しいと言ったから。団員達に聞けば早く分かるかもしれないが、レオ殿に分かりましたと言ってしまっているので、約束を守っている。
だが、賢者のレオ殿までとはいかないが、私だって知的探求心はあるわけで。
(尻を狙われるとは、どういう意味なんだ?)
先日、レオ殿宅で食事をした際。初めて見るほどに酔ったレオ殿が、口走った言葉。団員達にすら尻を狙われると言われたが、一体どういう意味なのだろう?
「何か文学的表現か? 慣用句なのか?」
知らない言葉が、未だに引っかかり。結果、書庫で本を漁っているというわけだ。
「辞書を引いてみたが、なかなか検討がつかん。辞書で「し」のところに、それらしい表現はないし……」
本当に、尻を狙うとは一体何なんだ?
「モンスターなんかに背後を取られるなという意味なのか?」
フム、と考えてみたがこれでも騎士団長だ。流石にモンスターに関わることならば、私が知らないはずがない。それに、一応そこそこ良い成績で学業を修めてきた。一般教養的な言葉ならば、知らないはずがない。
「ということは、医学的なものか?」
尻という部位的解釈から、医学書のページも捲ってみる。人体について詳しく書かれた本にも尻の例え話は特になかった。
「うーん……」
「アラン様? 何か調べものですか?」
私が何度も本を取ったり直したりをしているため、書庫の管理をしている担当者が声をかけてきた。
「すまない。煩かったか?」
「いえいえ、そんなことは。ただ、随分と熱心に調べ物をしているご様子でしたので、お力添えが出来ればと思いまして」
「気遣い感謝する。だが、気にしないでくれ。たいした調べものではないんだ」
一瞬、「尻を狙われている」という言葉を知っているか? と聞きそうになったが、レオ殿の顔がチラついてすぐに止めた。約束したのだ。守らなくては。それに、もしまたレオ殿に他の人に聞いたとバレたら、何をされるか分からない。
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「ああ! 本当に大丈夫だ。この後レオ殿に会う予定があるから、念のためにレオ殿にも聞いてみることにするよ」
「そうですが。賢者レオ様に聞かれるのでしたら、間違いありませんね」
はは、と笑った私の声は上ずっていなかっただろうか。会う予定も無いのに、レオ殿の名前を出して私は急いで出した本を片付けた。
「有難う。また来るよ」
「ええ、お待ちしています」
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