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63】褒めて貰えると思っていたのに②

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63】褒めて貰えると思っていたのに②

火照るような熱の残る身体を起こし、朝を迎えた。もしかしたらレオ殿がいるかもしれないと、いつものように文官室を訪れてみるが、見知った後ろ姿が視界に入らない。残念ながら、今日は城にはいないとかと思いながら。急に相手の家を訪れるのも失礼だろうと、今日は一日部屋に閉じ籠っていようと思った時だった。
「大丈夫ですか? 俺が介抱しますよ」


姿を見るよりも早く、聞き覚える声に安堵した。それから私の肩を、グイッと抱いたレオ殿に身を任せる。見上げた先にある顔に、良かったと思いながら動く唇を見た。

「医者は嫌ですか?」

「はい」

だって病気じゃないから。ただイケそうでイケない熱が籠っているだけだから。

「分かりました。じゃあ、俺の家に連れて行きます。距離が長いですが、大丈夫ですか?」

「熱は無いので、大丈夫です……」

はぁっ……♡と息を吐けば、僅かにレオ殿の眉間に皴が寄った。

「賢者様、ですがアラン様は熱があるんじゃ……」

「本人が医者は嫌だと言っていますし……。この様子だと、火照り程度で熱ではないでしょう。それにアラン様自身も、医者に見られては困ることがあるかもしれません。医者には劣るかもしれませんが、俺も一応賢者です。この程度の熱なら、俺でも対処出来ます」

「文官殿。ご心配尾有難うございます。私もレオ殿に介抱して頂いた方が、安心できますので」

「分かりました。では、賢者様。アラン様を宜しくお願いします」

「ええ、勿論。じゃあ、行きますよ。……っと。その前に、俺のローブを着て下さい」

「……?」

レオ殿が着ているローブを脱いで、私にかける。大きな帽子が顔を隠して、見えないと言ったが歩けるでしょうと言いくるめられた。
結局ローブを来たまま城を出て、レオ殿の家へと向かう。レオ殿と二人きりになれると安堵して、身体が幾分軽くなった気がした。

それから人目に付かないように歩いてレオ殿の家へ。今では見慣れた家のドアが開いて、レオ殿が私を中に入れてくれたのは、機嫌が悪くなる少し前のことだった。

*****

 ガチャリと開いた扉に、急いで家の中に入る。かけられたローブから、どこかレオ殿の香りがするような気がして、ドキドキと胸が鳴っていた。せっかく引いていた火照りが、ぶり返している。

「アラン様」

「はいっ……!」

「とりあえず、落ち着いて下さい。大丈夫ですか?」

「はい、大丈夫なんですが……そのっ……」

着ていたローブをいつもの場所に掛けて、いつもの席に座る。レオ殿と二人きりになると、騎士団長らしい振る舞いが出来なくなって、モジモジとしながら小さな声で呟いた。

「……イカせて下さい……」


**********

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