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4】悩みを打ち明けてみた②
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4】悩みを打ち明けてみた②
「アラン様?」
二度目の微笑は、どこか圧を感じた。隠し事は出来ないぞ? というような圧。
戦いに身を投じる騎士団長として団員を率いる時は、こんなこと無いのに。戦場でも鍛錬でもない今この時。着ている鎧を脱がされ、ただ一人の人間として逃げ場のない状況に、私は初めて白旗を上げた。
「…………いんです」
「ん?」
「そのっ……一人で自慰するときに上手く達せないんです……」
「へぇ……」
ああ、言ってしまった。
一気に身体を羞恥が襲い、レオ殿と視線を合わせておくことが出来ず。私の視線は、紅茶の入っていたカップと、テーブルへ。
そういえば、大人になって悩みを打ち明けたことも、性的な話をしたことも初めてだ。一体どんな顔をすれば良いか分からず、私は顔を上げることが出来ない。
(せめて何か言って欲しい)
そうすれば、この何とも言えない空気を払拭できるかもしれないのに。僅かな時間の沈黙だろうが、私にとってはとても長く感じた。その時だ。
「アラン様、顔を上げて下さい」
「……」
レオ殿が私の名前を呼んで、下げていた顔をゆっくりと上げた。それから私を視線を合わせ、確認するようにもう一度。私の言葉を復唱した。
「アラン様の悩みは、一人で上手く自慰行為。つまりオナニーが出来ないと?」
「オナ……ッ! そうです……」
フム、とレオ殿が考える声がする。恥ずかしがる私に対し、レオ殿の表情は揶揄うでもなく真剣に考えていて、何もいえなくなってしまった。
(レオ殿は、真剣に私の悩みを聞いてくれているのか)
人の性事情など、知りたくもないだろうに。逆に申し訳ないと思っていると、考え事をしていたレオ殿が「じゃあ」と再び口を開いた。
「じゃあ、アラン様。今から俺に、どんな風に自慰しているか見せて貰えますか?」
「──────え?」
今から俺の前で、どんな風に自慰しているか見せて貰えますか?
頭の中に、聞いた言葉が復唱されるが、ポカン……と思わず口を開いたまま。レオ殿の言葉の意味が理解できなかった。
そんな私の隣に、ガタンとレオ殿が椅子を持って来て腰を下ろす。固まったままの私の腰に掛かっている剣を器用に外し、一度立ち上がってローブの傍へ。そのまま戻って来たレオ殿が、もう一度私の隣に座って言った。
「念のために、鍵も閉めて来ました。さぁ、どうぞ」
「え、あの……レオ殿?」
ゆっくりと意味を理解し始めた頭が、それは流石にと思い出す。だが、それよりも早く。隣にいたレオ殿が一層私に近づいて、手に触れ。「さぁ」と耳元で囁いたものだから、既に白旗を上げた私は言われるがまま。ゆっくりとズボンの前を開くしか出来なかった。
**********
「アラン様?」
二度目の微笑は、どこか圧を感じた。隠し事は出来ないぞ? というような圧。
戦いに身を投じる騎士団長として団員を率いる時は、こんなこと無いのに。戦場でも鍛錬でもない今この時。着ている鎧を脱がされ、ただ一人の人間として逃げ場のない状況に、私は初めて白旗を上げた。
「…………いんです」
「ん?」
「そのっ……一人で自慰するときに上手く達せないんです……」
「へぇ……」
ああ、言ってしまった。
一気に身体を羞恥が襲い、レオ殿と視線を合わせておくことが出来ず。私の視線は、紅茶の入っていたカップと、テーブルへ。
そういえば、大人になって悩みを打ち明けたことも、性的な話をしたことも初めてだ。一体どんな顔をすれば良いか分からず、私は顔を上げることが出来ない。
(せめて何か言って欲しい)
そうすれば、この何とも言えない空気を払拭できるかもしれないのに。僅かな時間の沈黙だろうが、私にとってはとても長く感じた。その時だ。
「アラン様、顔を上げて下さい」
「……」
レオ殿が私の名前を呼んで、下げていた顔をゆっくりと上げた。それから私を視線を合わせ、確認するようにもう一度。私の言葉を復唱した。
「アラン様の悩みは、一人で上手く自慰行為。つまりオナニーが出来ないと?」
「オナ……ッ! そうです……」
フム、とレオ殿が考える声がする。恥ずかしがる私に対し、レオ殿の表情は揶揄うでもなく真剣に考えていて、何もいえなくなってしまった。
(レオ殿は、真剣に私の悩みを聞いてくれているのか)
人の性事情など、知りたくもないだろうに。逆に申し訳ないと思っていると、考え事をしていたレオ殿が「じゃあ」と再び口を開いた。
「じゃあ、アラン様。今から俺に、どんな風に自慰しているか見せて貰えますか?」
「──────え?」
今から俺の前で、どんな風に自慰しているか見せて貰えますか?
頭の中に、聞いた言葉が復唱されるが、ポカン……と思わず口を開いたまま。レオ殿の言葉の意味が理解できなかった。
そんな私の隣に、ガタンとレオ殿が椅子を持って来て腰を下ろす。固まったままの私の腰に掛かっている剣を器用に外し、一度立ち上がってローブの傍へ。そのまま戻って来たレオ殿が、もう一度私の隣に座って言った。
「念のために、鍵も閉めて来ました。さぁ、どうぞ」
「え、あの……レオ殿?」
ゆっくりと意味を理解し始めた頭が、それは流石にと思い出す。だが、それよりも早く。隣にいたレオ殿が一層私に近づいて、手に触れ。「さぁ」と耳元で囁いたものだから、既に白旗を上げた私は言われるがまま。ゆっくりとズボンの前を開くしか出来なかった。
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