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37】帰って来たら何となく拗ねていた

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37】帰って来たら何となく拗ねていた

 「ただいま」

ガチャリと北斗と暮らす家へ。
玄関のドアを開けば、俺のじゃない靴が一足置いてあった。

(北斗、家にいるんだ)

部屋の奥から、段々と此方に近づいて来る足音。それが誰かなんて知っているが、一人暮らしとは違って誰かと一緒に住んで良い所は、「お帰り」の声が聞こえたりすることだと思う。

「お帰り。圭、機嫌良さそうだね」

「ああ。今日蛍と会っててさ。読みたかった漫画を貸して貰えたんだ」

「……ふーん」

「北斗?」

穏やかそうに俺を迎えた北斗が、蛍の名前を聞くと僅かに口を尖らせた。まるで拗ねているようにも見えて、何だ? と思うが、俺の勘違いだろうか。

「北斗、機嫌悪い?」

「悪くないよ」

まどろっこしい聞き方は出来ない俺は、靴を脱ぎながら単刀直入に聞いてみる。だが返って来た返事は、違うというものだった。

「蛍と二人っきりだったの?」

「ただカフェで喋ってパフェ食べただけだよ。北斗も食べたかったのか? お前、甘いもの苦手だろ?」

「苦手だけど……」

「なら無理しなくて良いんだよ」

俺としては、蛍としか出来ない話があるわけだし。主に北斗のことばっかだけど。

「蛍と、どんな話してきたの?」

(この前の配信、ちゃんとカップルっぽく見えた? だとか、まぁ色々話してきたなんて言えるか!)

「色々だなぁ……」

靴を脱いで、手洗いうがいをしに行った。その間も北斗が俺の後ろをついてくる。一通り帰宅してすることが終わって、北斗の方を見ればまた少し唇が尖っていた。

(やっぱり機嫌悪いな? ていうか、やっぱ拗ねてるのか)

「北斗も蛍に会いたかったのか?」

「いや、別に」

「違うのかよ」

てっきり自分も蛍に会いたくて拗ねたと思ったのに。真顔で言われれば、この表情は本当のことだろう。じゃあ何で拗ねているんだ? と思ったがが、俺には分からなかった。

「圭」

北斗が俺の名前を呼んで、頬に触れる。そのまま俺の顏の角度を変えたかと思えば、少し屈んだ北斗の顔が近づいて来た。

────ちゅっ。

(やっぱり頬だな)

頬に、優しく触れるだけのキスを一つ。それから、ちゅっ、ちゅっと頬、鼻、瞼。顔中にキスをしてくる北斗。

「や、やめろよ……!」

(それでも、口にだけはキスしないんだよな)

冷静に思いながらも、北斗に声をかける。

「圭、したい。駄目?」

「だっ……!」

「だ?」

「駄目だ」

「何で?」

「今帰って来たばっかだし。もしかしたら汗臭いかもだし、それに借りて来た漫画読むから! じゃあ、北斗あとでな!」

理由を述べて、俺は借りて来た漫画を抱え。逃げるように部屋へと向かったのだった。

******
更新しました!お気に入り有難うございます(^^)
また、イイネ有難うございます! いつもよりイイネあって嬉しかったです!
このあと少しえっっっな感じにするか迷ってます。ぬるいRか、健全か…ぐぬぬ
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