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11】眠れなかったので⑤

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11】眠れなかったので⑤

 脱衣場で、二人。身体が密着した。北斗の身体は俺の身体を引き寄せて、更には下半身を押し当てた。

ググッ……!

そのまま、また耳元で囁く。

「圭、頼む。気持ち良くするから」

「~~~~~~っ!」

こういう関係は良くないと頭では分かっているのに。それでも気持ちの半分は、北斗が好きな俺はこの囁きに簡単に陥落してしまうのだ。

「圭、駄目……?」

「ぐぅうう゛……」

(そんな声で。そんな言い方で)

俺がお前に弱いと分かっているくせに。それこそ、長い付き合いで北斗は俺がどうすれば断れないかを身をもって知っているんだ。だから今も、この方法がベストだと踏んでいるのだから本当に質が悪い。(ドンピシャで弱いわ!)

「圭……」

ちゅっ、とまた頬にキスをして、最悪なことに囁く耳穴をチロリと舐めた北斗。

「ん゛っ! ぁ、あ゛っ……!♡」

ビクッ! と震えた身体は腰を抜かし。尻もちをつきそうになった身体を、北斗が支えた。

「圭」

「ぁあああ、もう……! 分かった! 分かったから……!」

「していい?」

「俺は明日、昼からだけど。北斗は?」

明日の授業は昼からだ。午前は自由で、寝坊したって大丈夫。北斗のことだから、俺と違って午前からでも寝坊はしないだろうが、一応確認。

「俺も昼から」

「しょうがねぇな。なら北斗」

「うん?」

「絶対気持ち良くしてくれよ?」

なんたって、俺は今イケてないんだからな。

「圭、どこでする? 俺の部屋くる?」

「ああ、うん」

「じゃあ、行こうか」

北斗が俺の返事を聞くと、眠たそうな顔は何処へ。どこか嬉しそうな表情すら浮かべながら、俺の手を引いていくわけで。

(ん? 待てよ?)

流されるまま、一番大事なことに気づいた俺。

(俺、下着履き替えてないよな??)

歩く度に、どこかヌメつく感覚が現実を知らせる。

(不味い……!)

「北斗! 待ってくれ」

「やだ。その言い方だと、圭やめるって言いたそうじゃん」

「やめない! やめないから! 先に部屋行ってろって! すぐ北斗の部屋に行くから!」

引っ張る北斗と反対方向に体重をかける俺。細身だというのに、どこに力があるのか。北斗がそのままグイグイと前に進んで行く。

「北斗、本当に待てってば!」

俺が大きな声を出せば、ピクリと止まる北斗。俺が北斗に弱いように、俺が本当に嫌がることはしない。

「……本当に俺の部屋に来る? 部屋で寝ない?」

ショゲッ……なんて効果音が見えそうなくらい急に落ち込むうえに、いつもリードするような頼もしい瞳が、まるで小さな子供のようになるから、本当に北斗ときたら!!

「あ~~もう! ほら! 部屋、行くんだろ!」

「うん。圭、優しい」

俺が止まっていたのに、ズンズンと北斗を引っ張っていくことになっていたわけで。

この数分後、やってしまったと後悔するのは紛れもない。俺自身だった。

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