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■人間の街にやって来た⑥
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■人間の街にやって来た⑥
「ソラ!!」
木々の間から見える、大きな身体に色白の肌。それから、短く切った俺の好きな髪が見えて、思わず叫んだ。俺が知ってる巨人で、あんな姿をしているのは、ソラ一人だけ。
だが移動を続けていたせいで、俺の喉を通った声は掠れたような声だった。言葉になっているかも怪しい。それでも、思い切り名前を呼べば、ソラがキョロキョロと辺りを見渡す仕草を見せた。
「ソラ……っ」
だがもう俺の体力は無い。流石に若くない、人によっては俺をおじさんと呼ぶ年齢の身体には、もうこれ以上の力は出せないらしい。上を見ていた顔は、下を向き。膝に手を置いてゼーハーと呼吸を整えることで精一杯。自分でも、こんなに必死になるなんてと驚くが、それがきっと「好き」だということなんだろう。
会いたくて仕方ない。置いて行かないで欲しい。
そんなドラマや漫画でしか、見たり聞いたりしたことないことを自分がやっている。
「も……っ、無理だ……っ」
ゼーハーと未だ息は荒いまま、膝に置いていた手をどかしヘタリと座り込んだ。
「すぐそこにソラがいるのに」
なんで、と悔しさが口から出てしまいそうになった時だった。晴れていた空が曇ったように、ヌッ……と天候が一気に暗くなる。先程まで、雲は無かった。急な雨なはずがない。
「……!」
バッ! と座り込んだまま顔を上げれば、予想通りの顔が俺を見つめていた。
「高見」
出会った時と同じ。綺麗な瞳をキラキラと輝かせながら、俺を見つめている巨人が一人。違うとすれば、俺の名前を知っていて、俺の好きな髪型をしていること。
「高見」
その目が穏やかに微笑んで、俺の名前を呼ぶ。
「……ソラ」
ははっ、と笑えばソラ手が伸びて来て俺の顔を指が撫でた。
「高見、髪の毛が僕より短くなったね」
ソラの大きな目尻が細くなり。器用に顔を撫でていた指が、今度は俺の首筋を撫でた。
「可愛い」
ソラの方が、どう見ても可愛いのに。首を撫でていた指が離れ、手の平になり俺の前にやってきた。その手の平に乗ろうと、座っていた身体を起こし歩き出す。ソラの手の平に乗れば、一気に急上昇。木々が今では俺の下に見えて、代わりにソラの顔がすぐ近くに見えた。
「おかえり、高見」
「ただいま、ソラ」
ソラの顔が、俺と同じでホッとした表情に変わる。向かいあったまま、思わずポロリと消えたと思った不安が漏れた。
「良かった。置いて行かれたと思った」
「そんな!……僕は、もう高見が戻ってこないんじゃないかって思ったよ」
なんだ。俺たち二人して、同じような不安を抱えて一日過ごしてたのか。
そう思うと、さっきまでの不安は何だっただろうと思ったし、ソラが一層大事に思えた。
********
「ソラ!!」
木々の間から見える、大きな身体に色白の肌。それから、短く切った俺の好きな髪が見えて、思わず叫んだ。俺が知ってる巨人で、あんな姿をしているのは、ソラ一人だけ。
だが移動を続けていたせいで、俺の喉を通った声は掠れたような声だった。言葉になっているかも怪しい。それでも、思い切り名前を呼べば、ソラがキョロキョロと辺りを見渡す仕草を見せた。
「ソラ……っ」
だがもう俺の体力は無い。流石に若くない、人によっては俺をおじさんと呼ぶ年齢の身体には、もうこれ以上の力は出せないらしい。上を見ていた顔は、下を向き。膝に手を置いてゼーハーと呼吸を整えることで精一杯。自分でも、こんなに必死になるなんてと驚くが、それがきっと「好き」だということなんだろう。
会いたくて仕方ない。置いて行かないで欲しい。
そんなドラマや漫画でしか、見たり聞いたりしたことないことを自分がやっている。
「も……っ、無理だ……っ」
ゼーハーと未だ息は荒いまま、膝に置いていた手をどかしヘタリと座り込んだ。
「すぐそこにソラがいるのに」
なんで、と悔しさが口から出てしまいそうになった時だった。晴れていた空が曇ったように、ヌッ……と天候が一気に暗くなる。先程まで、雲は無かった。急な雨なはずがない。
「……!」
バッ! と座り込んだまま顔を上げれば、予想通りの顔が俺を見つめていた。
「高見」
出会った時と同じ。綺麗な瞳をキラキラと輝かせながら、俺を見つめている巨人が一人。違うとすれば、俺の名前を知っていて、俺の好きな髪型をしていること。
「高見」
その目が穏やかに微笑んで、俺の名前を呼ぶ。
「……ソラ」
ははっ、と笑えばソラ手が伸びて来て俺の顔を指が撫でた。
「高見、髪の毛が僕より短くなったね」
ソラの大きな目尻が細くなり。器用に顔を撫でていた指が、今度は俺の首筋を撫でた。
「可愛い」
ソラの方が、どう見ても可愛いのに。首を撫でていた指が離れ、手の平になり俺の前にやってきた。その手の平に乗ろうと、座っていた身体を起こし歩き出す。ソラの手の平に乗れば、一気に急上昇。木々が今では俺の下に見えて、代わりにソラの顔がすぐ近くに見えた。
「おかえり、高見」
「ただいま、ソラ」
ソラの顔が、俺と同じでホッとした表情に変わる。向かいあったまま、思わずポロリと消えたと思った不安が漏れた。
「良かった。置いて行かれたと思った」
「そんな!……僕は、もう高見が戻ってこないんじゃないかって思ったよ」
なんだ。俺たち二人して、同じような不安を抱えて一日過ごしてたのか。
そう思うと、さっきまでの不安は何だっただろうと思ったし、ソラが一層大事に思えた。
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