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主は悪い子に絶対の命令を下す

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胴体の真横に密着させられた左右の腕は、どんなに命令を送ってもその位置から離れられない。隙間無くきっちりと揃えさせられた左右の足も、男が脳から飛ばす指示の勢いとは裏腹に全く動かせはしない。
肉体の制御権を外部から掌握し、自由を跡形も無く削ぎ落とす機械製の白い首輪を装着された男はもう、意に染まぬ気を付けの姿勢から抜け出したくても抜け出せない。幾ら焦りを込めた身悶えを繰り返そうとも、地下室の床に敷かれた分厚く黒いマットの上に転がされた仰向けの裸体は丸出しにさせられた男根を情けなくぷるぷると震わせる程度の変化しか引き寄せられない。
だが、そんな圧倒的に不利な立場に置かれながらも、男は反抗的な態度を保ち続けていた。手足の使用を封じられ、恥部を覆い隠すことさえ許されない状況に追いやられながらも、男は気丈さを維持し続けていた。それは、生まれつきの性質であると同時に、抗えぬ自分の元へと訪れたのが少年だったからだろう。

「スパイさん、お待たせ。良い子にして待っててくれましたか?」
「ふざけるなよ、クソガキ! 今すぐ俺を解放しろ!」

一回り以上年下の少年に無防備な裸体を見下ろされながら、スパイと呼ばれた男は怒気を込めた要求を問いに対する返事の代わりに叫ぶ。
何をされても拒めない姿へと追いやられている。それを理解しつつも、大きく年の離れた少年に舐められるのはプライドが許せない。捕らわれの身に堕とされたスパイの男は、穏やかな笑みで自分を観察する少年への苛立ちを露わにしつつ、寝返りを打つことさえ満足に出来なくされた仰向けの裸体を可能な限りに悶えさせている。

「スパイさん、悪い子ですね。そんないけない言葉遣いをしてると……お仕置きをしちゃいますよ?」
「黙れ、クソガキ! 大人を舐めるなよ……っ!!」

しゃがみ込み、罰を提示する少年。提示された罰に対して更なる怒気を膨らませ、鋭い反抗を紡ぐ男。
自身が取るべき正しい振る舞いがまだ分かっていないスパイの男の様子を愉しみ、躾け甲斐を感じながら、少年は罠に嵌めて生け捕りにしたスパイを遊び道具として贈ってくれた父への感謝を胸に抱きつつ、首輪を介した絶対的な命令という形で宣言通りの仕置きを加え始めた。

「黙りなさい、スパイさん。飼い主になる僕に、そんなこと言っちゃ駄目でしょう?」

自由を残されていた口が、まだしゃべろうとしていた男の意思に反して引き結ばれる。同時に唸りさえも発せなくされた男が身悶えと眼差しで抗議するのを鑑賞しながら、少年は拒否の選択肢を没収された無様なスパイに次々と新たな命令を下していく。

「身体を動かすのをやめなさい。飼い主を睨むのはやめなさい。僕を見る時は、可愛いペットらしく甘えるような目で見なさい」

マットの上でくねっていた裸体が、マネキンのように静止する。憎しみを込めて少年を射抜いていた目が蕩け、主に忠誠と敬愛を示す潤んだ瞳を作り始める。
この首輪に、自分は全てを握られている。絶望の事実を改めて思い知らせる命令達に気丈さを萎まされたスパイの男が潤んだ瞳の奥に怯えと恐怖を滲ませ出したのを確認した少年主は、自分の物となった男を父に見せても恥ずかしくないくらいにしっかりと調教したいという願望のままに、とどめの命令を与えていく。

「スパイさん、貴方はもう僕に苛められて、可愛がられて、弄ばれて悦ぶことだけが生き甲斐のペットなんだ。今からそれを、じっくりと教え込んであげる。身体中の感度をほんの少し撫でられただけでイっちゃうくらいに高めて、頭の中が気持ち良いことでいっぱいになるくらいに発情をしなさい。その状態でパンパンになったおチ○チンをたっぷり焦らして、二度と僕にさっきみたいな態度を取れないよう躾けてあげるよ」

肌を伝う自らの汗にすら快楽を認める。少年や自分を罠に嵌めた少年の父への憎悪を塗り潰す程に淫欲を湧き上がらせていく。
首輪の効力に屈して勝手に淫蕩な物へと仕上がっていく己の裸体と脳に打ちひしがれるスパイが無言で披露する悶絶を独占しながら、少年はマットの脇にしゃがんだ体勢を崩してマットに正座で座り込み、かすかな刺激を甘い至福と変換する状態となったスパイの張り詰めた男根を残酷な指先でもどかしくくすぐり始めるのだった。
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