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無慈悲な主は捕らえた獲物達に無数の手を伸ばす

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石で造られた迷宮の奥深くで、耳障りな轟音が鳴り響いている。背後から迫るその音を耳にしながら、男達は焦りに歪んだ表情を絶望に支配されつつ、石壁を虚しく叩いていた。

「だっ、誰かぁっ! 助けてくれぇぇっ!!」
「い、嫌だ、死にたくない、出してくれぇぇっ!!」

恥を捨て、尊厳をかなぐり捨てた懇願に応える者はいない。宝の噂を嗅ぎ付けてやって来た二人の盗賊の叫びは、後方から近付いてくる石壁によってじょじょに狭まっていく空間にただただ反響するのみだ。
こんな迷宮に足を踏み入れるんじゃなかった。遅すぎる後悔を抱く余裕さえ無くし、喉が破れんばかりに喚き散らしながら盗賊の男達は得物であるナイフを振るうことすらままならなくなった狭い空間の中で石壁を必死に叩く。
魔術を用いた罠がそこかしこに張り巡らされていると気付いた時点で引き返すべきだった。手遅れの反省を募らせる思考も失った脳で命乞いを繰り返しながら、二人は行き止まりの通路に足を踏み入れた自分達を待ち受けていたかのように現れた石壁の圧迫を背面に感じさせられつつ無意味な身悶えを魔術製のランプを取り落とし暗闇に支配された空間で半狂乱になって繰り返す。
その無様で凄惨な最期を予感させる戦慄の時間が二人にとっては気が遠くなるくらいに長く続いた頃、不意に背後の壁はその移動を停止させた。

「っ……!? とまっ、た……?」
「助かった……のか……?」

もう少しで全身の骨が崩壊に向けて軋み出す。そんな状態でさっきまでの轟音が嘘のような静止を見せた背後の壁に困惑しつつ、盗賊達は安堵の言葉を零した。
まだ、ここからの脱出に繋がる手段は何一つとして手に入れられていない。それを理解した上で、二人は命を奪われずに済んだ事実を嬉しがる感情を膨らませ、涙が滲んでいた瞳に喜びの色を湧き上がらせた。
まんまと罠に掛かり捕食対象に選ばれた盗賊達を真の絶望が襲ったのは、そんな安堵の直後だった。

「ひぃっ!? な、何だ、これ……何処から……っ!?」
「う、嘘、だろ……? これ、壁じゃねぇ……魔物、んぶうぅ!?」

擬態を解き、石壁の質感から本来の柔らかな質感を露わにした巨大な魔物が逃げ場の無い場所に追い込んだ二匹の獲物に嬉々として手を伸ばす。肉々しい感触を伴った何十という触手が、抵抗さえ叶わない盗賊達の衣服の中へと滑り込み過敏な弱点を好き勝手に撫で回し、己の食料となるありとあらゆる体液の分泌を促していく。

「や、めろぉっ! 気持ち、悪いぃ……ふぎぃっ!? ひゃめ、チ○コ、触るな……あうぅ!?」
「んもっ、ご、ぼほぉっ! うー! うぶぅぅ! ふみゅぅぅぅっ!!」

人間の雄の弱点を熟知している触手達が生み出す巧みな責めに望まぬ快楽を覚えさせられながら、触手が纏う粘液が有する効力で早くも意に染まぬ発情を掻き立てられ始めた盗賊の男達は悦びの波に耐えきれずナイフを床に落とした手を無自覚に強く握り合いつつ、触手に塞がれていない口と触手に塞がれた口から漏れる二種類の喘ぎを自分達の主として君臨した魔物に、数えきれぬ程の触手で衣服の下の裸体を嬲り出した無慈悲な主に、食事を盛り上げる音楽として提供していくのだった。
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