BLエロ小説短編集

五月雨時雨

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無慈悲な暗闇で男は拒んでいた至福を淫らに貪る

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外界から隔絶された狭い空間に、逃げ場などありはしない。立てば天井に頭頂部が触れそうになり、あぐらをかけばどこかしらの部分が嫌でも壁にぶつかる。暗闇に支配されたそんな空間に閉じ込められた男はもう、絶え間無く無慈悲に襲い掛かる淫猥な地獄からどう足掻いても抜け出せはしない。
天井に用意された無数の穴から常に滴る液体状の媚薬という残酷な責め苦に為す術無く衣服を剥ぎ取られた無防備な裸体を嬲られている男はもはや、強まる一方の発情と肉体全体の感度の上昇という苦悶に何もかもを打ちのめされながら、憎き敵への怒りを思い出すことすらもままならなくなっていく思考を甘く跡形も無く蝕まれるしか無いのだ。

「あぁ……あひ、はぁ……っ!」

敵に捕らわれた直後の男であったら、望まぬ火照り程度など気高き精神でねじ伏せていた。意識を奪われている間に放り込まれていた闇の中で反抗の意思を滾らせながら、膨らむ一方の欲望を抑え込んでいた。
しかし、乱れきった自らの吐息と垂れ落ちる媚薬が生み出す加虐以外の情報が存在しない牢獄に長時間放置され、理性をじょじょに削ぎ落とされた今の男にそんな気丈な態度は一切垣間見えない。
自分しかいないならば、誰も見ていないならばと己に言い訳を寄せ、この火照りを解消する選択肢を取らなければという至極まともな理由を免罪符としながら淫蕩に熟成させられた自身の裸体を責め立てる行動を取り始めた男には、元あった気高さなど欠片も残されてはいない。

「乳首、乳首ぃ……あっ、きもひぃ……イぐ、イぐうぅ……んっ!」

だらしなく舌を垂らした口で快感を嬉しがる鳴き声を上げながら左右の乳首を夢中になって捏ねる男は、その行動が無様であると気付く思考能力を完全に失っている。決して呼吸を阻害することは無いが床に腰を下ろせば恥部がすっぽりと沈む、そんな水位に固定されている媚薬の海に浸からせた尻穴と男根を恥を捨てた腰振りを使って引き寄せた水流で甘くいたぶり己を射精に導いている男は、体力が続く限りに立った姿勢を保ち恥部を媚薬の海から逃がしていた過去の様子とは真逆な痴態を自分だけの空間で間抜けに繰り広げている。
自身の正気が壊れている自覚も抱けない。このまま自慰を重ねれば敵の手から仮に救出されたとしても戦いはおろか元の日常にも戻れなくなるという危機さえも覚えられない。
これまでの自分の破壊が確約された残酷な空間で悦楽の追求を最優先にしている哀れな男は、正義の使命を忘れ憎んでいたはずの悪の思惑に沿った堕落へと幸せに進む一匹の淫獣以外の何者でも無いのだ。

「あん、はっ、ふぁぁんっ! イぐ、ひぎゅぅぅ、イっ、きゅぅぅぅ……っ!!」

必死に遠ざけていた悦びに堕ち、あれだけ拒んでいた媚薬を積極的に全身で吸収し口で啜る。そうした陥落の様を一人きりの空間で迷い無く晒しながら、男は一際強く左右の乳首を捻り腰の前後運動を小さく早め、絶頂に至ったばかりの裸体を次の絶頂へと幸福に追い詰めていくのだった。
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