BLエロ小説短編集

五月雨時雨

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自室に囚われた男は仲間を思いつつ得られぬ快楽を希求する

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見慣れた自宅の寝室で、男はベッドの上に仰向けとなった裸体を絶え間無くよじらせていた。
明かりが消されカーテンの向こうから差し込む陽の光が弱まる夜の到来に従って暗闇に覆われ始めた部屋の中で、男は焦りを募らせながら全裸に剥かれた肉体をもがかせ続けていた。
早く抜け出さなければ、取り返しの付かない事態が発生してしまう。自分に化けたあの男の手引きで、仲間達も捕らわれの身に堕とされる状況を生み出されてしまう。
そんな思いを抱きながら暴れても、男は一向に逃れられない。左右の手首と二の腕を背中で一括りにする縄を着せられ肘の部分を腹部へと別の縄で縫い付けられた腕を幾ら頑張らせても拘束は緩まず、左右の足首から太ももにかけてを数箇所に分けて一つにまとめる縄を加えられた足を必死に暴れさせても縛めは振り払えず、無防備にさらけ出させられた男根を間抜けに跳ね回らせつつ裸体を自身のベッドの上でじたばたとよじらせても手足の自由を奪う縄とベッドの上下に位置する柵や四本ある脚を厳重に結合する駄目押しの縄達から逃れられはしない。
自分の空間で、惨めにありとあらゆる行動を制限されている。そんな状態を覆したくても覆せない立場に置かれた男はもう、防音に優れた部屋を借りた過去の自分への恨みを覚えつつ更なる事態の悪化を為す術無くもたらされるしか無い。
正常な発声と大声の使用を不可能にさせている口枷に接続された非道な機構が自動で作動する地獄を迎えさせられた男はもはや、気が休まる場所であるはずの自宅に侵入し待ち伏せを行った敵達の思惑に沿った疲弊へと、どうすることも出来ずに導かれるしか無いのだ。

「うぅっ!? んふぅぅぅー……っ!!」

鼻と口を囲んで締め付け、内部に突き出た棒を使って口を喉近くまで満たす枷から伸びた蛇腹状をしたホースの先にある床に置かれた装置が、男の部屋のコンセントへと繋がれたコードを通して送り込まれる電力を糧にし自身を作り出した組織の者達が与えた設定に沿った責めを、抗えぬ男に叩き込み始める。
この責めを受け入れたら、ようやく拘束との格闘を行えるくらいに戻った裸体の自由がまた削り落とされてしまう。嫌という程にその身で理解させられた事実に戦慄しつつ、男が一層激しい動きで縄を軋ませ解放を手に入れようとする。
しかし、男の努力も虚しく縄はやはり解けはしない。背中で伸ばしきった形を維持させられた腕と左右を隙間無く密着させられた足を半狂乱になって悶えさせても、無様であることを承知で男根を踊り狂わせつつ裸体全体を左右に揺らしてみても、それは自身を縛る縄とそれなりに気に入っていたベッドを鳴らす効果しか有していない。
何をしても無駄。どんな手を尽くしても仲間に迫る危機を回避させられない。足掻けば足掻く程補強される絶望の事実を思い知らされる男は、呼吸を支配する物体となった枷を通して流し込まれるさっきまでとは全く違う空気に、吸入した者に意に染まぬ発情を引き起こし思考の鈍化と肉体の甘い痺れを誘発する淫薬混じりの空気に、悪の手に堕ちた裸体を蝕まれることしか出来はしないのだ。

「んーっ、ふぅぅーっ! うぐ、ふぶっ、もほおぉぉ……っ!!」

忍耐に忍耐を重ね、その忍耐が瓦解した際に行われる呼吸に合わせて体内に入り込む淫薬が、男の心と身体をまた狂わせていく。仲間を案じる思いを快楽を欲しがる本能に塗り潰され、縄からの脱出を試みている裸体の動きを自力では決して手繰り寄せられない刺激を希求する物へと上書きされる恐怖に怯えながら、男が助けが訪れる気配すら感じられない自室で再度理性を突き崩されていく。

「あ、おぉ……んふ、むぐうぅ……っ!」

日が完全に落ち夜になったら、予定されていた作戦が開始となる。その情報を思い出すことも困難になり始めた脳に最後の逃走のチャンスを物に出来なかった己に対する不甲斐無さを虚しく湧き上がらせながら、男は自分に成り代わった敵に向けた怒りと仲間への謝罪を胸の中へと、消えかけの正気で呟いていた。
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