上 下
1 / 1

男は朦朧とした頭で雄臭い水分を悦ぶ

しおりを挟む
通気性が無く、エアコンはおろか扇風機も設置されておらず、それでいて天窓から陽光が差し込んでくる。その三つだけでも、倉庫の中は熱気に満たされている。ただそこに置き去りにされただけでも男は大量の汗を流しながら、暑さによる苦悶で絶えず追い詰められていただろう。
しかし、残酷な男達は捕らえた男にただの暑さによる責めなど施しはしなかった。男達は余計に暑さを加速させる拘束を何の躊躇いも無く男に与え、言葉と同時に熱の逃げ場を少しでも奪うためにと口にも栓を施した上で男を熱された倉庫に残しその場を去ったのだ。
当然、男はじりじりと肉体を蝕み心を憔悴させる暑さから逃れようと、一人きりの倉庫で必死にもがいた。だが、どんなにもがき、床の上でのたうち回ろうと男達が衣服の上から加えた拘束はビクともしない。幾重にも巻き付けられたラップと、ラップに重ねて巻き付けられた黒のガムテープによって気を付けの姿勢で固められた肉体をなりふり構わずに身悶えてさせても、拘束はぎちぎちと軋むのみで全く緩まない。
哀れな男がテープを貼り付けられた口で唸りながら半狂乱で暴れ、自由を奪い熱を封じ込める無慈悲な拘束から抜け出そうと試行錯誤を繰り返してもそれは無駄で。男は何一つとして状況を変えられぬまま、募る一方の熱と自らの足掻きがもたらした消耗によって疲弊させられ、意識を朦朧とさせながら倉庫の床にぐったりと横たわるだけの無様な姿となってしまった。

「んぅ……ふぐ、むうぅ……」

もう男は、無意味に汗塗れの肉体をよじらせラップとガムテープを鳴らすことさえ出来ない。人気の無い山奥の倉庫に男達以外の誰かが近寄るという奇跡に掛けて塞がれた口からくぐもった叫びを放つ気力さえ無い。それどころか、このままほったらかしにされ続けたらいずれは死に至ってしまうという事実に恐怖する思考能力すら、今の男には無い。
逃げ場の無い暑さに追い詰められ、心と身体をすり減らされた惨めな男。そんな男が放置されていた倉庫の扉が、突然に開く。
それは、非道な男達の帰還を示す音で。男達は山の麓の定食屋で膨らませた腹をさすり予想以上の熱気に驚きながら、予想を遥かに超える情けない衰弱姿を晒している男へと残酷に微笑みながら歩み寄った。

「刑事さん、ただいま。良い子にして待ってたかい?」
「ここを離れる前の反抗的な態度が嘘みたいにぐったりしてくれて……特製サウナを随分と堪能してくれたみたいだねぇ」

言いながら、男達は汗に濡れた刑事の頭部を押さえつつ刑事の口を閉ざしているテープを剥がしてやった。

「ぷぁっ、はぁ、く、はぁっ……」

自由を取り戻した口から、溜まっていた唾液と共に吐き出せずにいた苦悶の吐息が漏れる。けれど、言葉は一向に紡がれない。暑さを用いた拷問以外の何物でもない責め苦に打ちのめされた刑事は、怒りの言葉を発する以前に自分を苦しみの中に閉じ込めていった男達が帰ってきたことの認識すら叶わぬまま、霞む視界で男達を見つめつつ荒く乱れた呼吸を繰り返している。
その様子に笑みの黒さを深め、目を冷酷に細めた男達は、すでにボロボロとなっている刑事に淫らなとどめを刺すための準備を始めた。
男達は、あらかじめ倉庫に用意しておいた犬用の器を取り出し、全員で麓に向かう際に使用した車に搭載されている小さな冷蔵庫で冷やしておいた十数人分の、ペットボトル入りの精液を取り出した器に並々と注ぎ、冷やした精液で満たされた淫猥な器を刑事の眼前に置いたのだ。

「ほーら、刑事さん。喉渇いたでしょ、飲みなよ」
「ちょっとえぐみがあるだろうけど、よく冷えてて美味しいよー? さ、飲みなさい」
「うぅ、あぅっ……」

目の前に犬用の器が置かれていることも、その器が精液でいっぱいになっていることも、うつ伏せにさせた肉体をテープの上から押さえ髪を掴んで持ち上げさせた顔面の下に器を押して移動させる男達の表情が悪魔のように歪んでいることも、何もかも分からぬまま精液を飲めと要求された刑事は頭皮に走る痛みに呻きながら、引き結ぶ力も失った口からだらりと垂れた舌先をよく冷えた精液に付着させた。
その瞬間、刑事の目が輝きをわずかに取り戻す。希求していた水分が舌に触れている事実のみを把握した肉体は舌を夢中で動かして水分を口に運び、男達の目論見通りに精液の摂取を開始する。

「あっ、あぁ、あむっ、んむぁっ」

口に広がるえぐみと雄臭さも気にならない。与えられた水分をただただ本能で悦び、刑事は一心不乱に精液を飲んでいく。
夢中で舌を動かし、嬉しそうに精液を嚥下する刑事を愉しんでいる男達は、愉悦に満ちた表情をより残忍に歪ませながら、口の周りを白く汚している刑事に穏やかな口調を作って言った。

「うんうん、美味しいね。良かったね、刑事さん」
「このペットボトルが空になっても、まだまだおかわりは用意してあるからな? 好きなだけ飲んで、精液の味をしっかり覚えるんだぞー?」
「んむっ、あぁ、んぐっ、んちゅ……っ」

自分達の声も聞こえないくらいに精液を飲むことに集中している刑事を眺める男達は、何度味わっても飽きない捕らえた男を淫らに壊し常識を塗り替えていく快感が生み出す幸福に打ち震えながらその幸福が誘発する興奮の感情で肉体を火照らせ、倉庫に漂う熱で噴き出した汗の分泌量を更に引き上げていた。
しおりを挟む

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

五人の少年はカプセルの中で惨めに身をよじる

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

続きは第一図書室で

蒼キるり
BL
高校生になったばかりの佐武直斗は図書室で出会った同級生の東原浩也とひょんなことからキスの練習をする仲になる。 友人と恋の狭間で揺れる青春ラブストーリー。

狂宴〜接待させられる美少年〜

はる
BL
アイドル級に可愛い18歳の美少年、空。ある日、空は何者かに拉致監禁され、ありとあらゆる"性接待"を強いられる事となる。 ※めちゃくちゃ可愛い男の子がひたすらエロい目に合うお話です。8割エロです。予告なく性描写入ります。 ※この辺のキーワードがお好きな方にオススメです ⇒「美少年受け」「エロエロ」「総受け」「複数」「調教」「監禁」「触手」「衆人環視」「羞恥」「視姦」「モブ攻め」「オークション」「快楽地獄」「男体盛り」etc ※痛い系の描写はありません(可哀想なので) ※ピーナッツバター、永遠の夏に出てくる空のパラレル話です。この話だけ別物と考えて下さい。

【完結】そっといかせて欲しいのに

遊佐ミチル
BL
「セックスが仕事だったから」 余命宣告を受けた夜、霧島零(21)はひったくりに合い、エイト(21)と名乗る男に助けられる。 彼は東京大寒波の日なのになぜか、半袖姿。そして、今日、刑務所を出所してきたばかりだと嘘とも本気とも付かない口調で零に言う。 どうしても人恋しい状況だった零はエイトを家に招き入れる。 過去を軽く語り始めたエイトは、仕事でセックスをしていたと零に告げる。 そして、つけっぱなしのテレビでは白昼堂々と民家を襲い金品を奪う日本各地で頻発している広域強盗犯のニュースが延々と流れていて……。

蓮の30歳恋人が、突然子供化した後、大人になる

寺蔵
BL
どんな恋人でも大好きな子

この行く先に

爺誤
BL
少しだけ不思議な力を持つリウスはサフィーマラの王家に生まれて、王位を継がないから神官になる予定で修行をしていた。しかし平和な国の隙をついて海を隔てた隣国カリッツォが急襲され陥落。かろうじて逃げ出したリウスは王子とばれないまま捕らえられてカリッツォへ連れて行かれて性奴隷にされる。数年間最初の主人のもとで奴隷として過ごしたが、その後カリッツォの王太子イーフォの奴隷となり祖国への思いを強めていく。イーフォの随行としてサフィーマラに陥落後初めて帰ったリウスはその惨状に衝撃を受けた。イーフォの元を逃げ出して民のもとへ戻るが……。 暗い展開・モブレ等に嫌悪感のある方はご遠慮ください。R18シーンに予告はありません。 ムーンライトノベルズにて完結済

変態♂学院

香月 澪
BL
特別保養所―――通称『学院』と呼ばれる施設。 人には言えない秘密の嗜好、―――女装趣味、それもブルマやレオタードなどに傾倒した主人公「マコト」が、誰憚る事無くその趣味を満喫する場所。 そこに通う様になってから、初の長期休暇を利用して宿泊する事にした「マコト」は、自覚も無く周囲を挑発してしまい、予想を超える羞恥と恥辱に晒され、学友にはエッチな悪戯を仕掛けられて、遂には・・・。

明け方に愛される月

行原荒野
BL
幼い頃に唯一の家族である母を亡くし、叔父の家に引き取られた佳人は、養子としての負い目と、実子である義弟、誠への引け目から孤独な子供時代を過ごした。 高校卒業と同時に家を出た佳人は、板前の修業をしながら孤独な日々を送っていたが、ある日、精神的ストレスから過換気の発作を起こしたところを芳崎と名乗る男に助けられる。 芳崎にお礼の料理を振舞ったことで二人は親しくなり、次第に恋仲のようになる。芳崎の優しさに包まれ、初めての安らぎと幸せを感じていた佳人だったが、ある日、芳崎と誠が密かに会っているという噂を聞いてしまう。 「兄さん、俺、男の人を好きになった」 誰からも愛される義弟からそう告げられたとき、佳人は言葉を失うほどの衝撃を受け――。 ※ムーンライトノベルズに掲載していた作品に微修正を加えたものです。 【本編8話(シリアス)+番外編4話(ほのぼの)】お楽しみ頂けますように🌙 ※こちらには登録したばかりでまだ勝手が分かっていないのですが、お気に入り登録や「エール」などの応援をいただきありがとうございます。励みになります!((_ _))*

処理中です...