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第十章 呪力と言霊
第二節-03
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「藤崎さん達のチカラは、体内にある武器を具現化させるものだよね……?」
「まあ、平たく言えばそうだな」
「なら、伯父さんも武器を具現化出来るの?」
「オッサンに武器は必要ねえんだよ」
藤崎は諦めたように続けた。
「オッサンのチカラは、簡単に言っちまえば〈呪い〉だ。直接手を下さなくても、ちょっと念を飛ばせばヒトを操れる。――自然死のように見せかけてヒトを殺すことも、な……」
「呪い……」
口にしながら、美咲は自らの身体を両手で抱き締めた。
藍田はいわゆる〈呪力〉でヒトを簡単に操作出来る。そういえば、と美咲はハッと気付いた。南條の父親も藍田と関わったことで壮絶な最期を遂げた。対妖鬼の能力者としては最強でも、藍田の前ではそのチカラすら通用しなかった。
(南條さんが、危ない……)
自分よりも、南條の身が案じられた。美咲も充分、藍田の危険に晒されている。だが、藍田の様子から美咲は殺される危険性はまず薄い。それに対し、南條はいつ殺されてもおかしくない。しかも、呪力が使えるとなれば――
「あいつが心配か?」
藤崎の声に、美咲は弾かれたように顔を上げる。
藤崎は神妙な面持ちで美咲を見つめている。初めて逢った時に唇を塞がれ、襲われかけたことが嘘のようだ。
しかし、まだ完全に信用は出来ない。気にかけてくれているようでも、結局、藤崎は本家側の人間なのだ。とはいえ、南條が心配なのは本当だから、美咲はゆっくりと首を縦に動かす。
「そんなに、あいつがいい?」
「いいとかじゃなくて、本気で心配だから……」
「だからあいつが好きなんだろ?」
「好きだよ。悪い?」
「そんな突っかかんな」
藤崎は苦笑いしながら肩を竦めて見せた。
「どっちにしたって、美咲と南條の間には誰も割り込めそうにねえしな。ほんと、あン時は見せ付けてくれたし」
藤崎の言っていることはすぐに思い当たった。美咲の全身が急激に熱を帯びる。恥ずかしさのあまり俯くと、藤崎からクツクツと忍び笑いが聴こえてきた。
「ほんと変な奴だな、美咲って」
「――馬鹿にしてんの……?」
唇を尖らせながら藤崎を上目で睨むも、藤崎はそれがよけいにおかしかったのか、なおも笑い続けている。
「馬鹿にしてねえって。ますます興味は湧いたけど。あ、勘違いすんなよ? 俺はいつぞやのように変な真似はする気はねえし」
「――信用出来ない……」
「だろうな」
美咲の言葉をあっさり認めた。
「他人は疑ってなんぼだ。ちょっと気を許したところを、ってこともあり得なくねえ」
「最低だね……」
「お前も結構酷いこと言うな……」
藤崎はゆっくりを首を横に振り、「まあ、仕方ねえか」と溜め息交じりに漏らした。
「とりあえず、そろそろ部屋に戻れ。俺が着いてく」
「伯父さんが怖いからだね?」
「そ」
藤崎は、よっこらせと腰を上げた。美咲もそれに倣う。
藤崎のあとを歩きながら、美咲はまた、考えを巡らせる。藍田のチカラに対抗する術はあるのか。そもそも、藍田は何を企んでいるのか。
(私は、伯父さんのためにみんなが不幸になるなんて耐えられない……)
戦わなくては、と思った。ただ、美咲自身に何のチカラもないことが歯痒くて仕方ない。
(いざとなったら、桜姫……)
美咲の中の桜姫に問いかける。だが、桜姫からの返答はなかった。あえて無言でいるつもりなのか。
美咲は深呼吸を繰り返す。これから起こるであろうことを予測しながら、さらに気持ちを強く持とうと決意を固めた。
「まあ、平たく言えばそうだな」
「なら、伯父さんも武器を具現化出来るの?」
「オッサンに武器は必要ねえんだよ」
藤崎は諦めたように続けた。
「オッサンのチカラは、簡単に言っちまえば〈呪い〉だ。直接手を下さなくても、ちょっと念を飛ばせばヒトを操れる。――自然死のように見せかけてヒトを殺すことも、な……」
「呪い……」
口にしながら、美咲は自らの身体を両手で抱き締めた。
藍田はいわゆる〈呪力〉でヒトを簡単に操作出来る。そういえば、と美咲はハッと気付いた。南條の父親も藍田と関わったことで壮絶な最期を遂げた。対妖鬼の能力者としては最強でも、藍田の前ではそのチカラすら通用しなかった。
(南條さんが、危ない……)
自分よりも、南條の身が案じられた。美咲も充分、藍田の危険に晒されている。だが、藍田の様子から美咲は殺される危険性はまず薄い。それに対し、南條はいつ殺されてもおかしくない。しかも、呪力が使えるとなれば――
「あいつが心配か?」
藤崎の声に、美咲は弾かれたように顔を上げる。
藤崎は神妙な面持ちで美咲を見つめている。初めて逢った時に唇を塞がれ、襲われかけたことが嘘のようだ。
しかし、まだ完全に信用は出来ない。気にかけてくれているようでも、結局、藤崎は本家側の人間なのだ。とはいえ、南條が心配なのは本当だから、美咲はゆっくりと首を縦に動かす。
「そんなに、あいつがいい?」
「いいとかじゃなくて、本気で心配だから……」
「だからあいつが好きなんだろ?」
「好きだよ。悪い?」
「そんな突っかかんな」
藤崎は苦笑いしながら肩を竦めて見せた。
「どっちにしたって、美咲と南條の間には誰も割り込めそうにねえしな。ほんと、あン時は見せ付けてくれたし」
藤崎の言っていることはすぐに思い当たった。美咲の全身が急激に熱を帯びる。恥ずかしさのあまり俯くと、藤崎からクツクツと忍び笑いが聴こえてきた。
「ほんと変な奴だな、美咲って」
「――馬鹿にしてんの……?」
唇を尖らせながら藤崎を上目で睨むも、藤崎はそれがよけいにおかしかったのか、なおも笑い続けている。
「馬鹿にしてねえって。ますます興味は湧いたけど。あ、勘違いすんなよ? 俺はいつぞやのように変な真似はする気はねえし」
「――信用出来ない……」
「だろうな」
美咲の言葉をあっさり認めた。
「他人は疑ってなんぼだ。ちょっと気を許したところを、ってこともあり得なくねえ」
「最低だね……」
「お前も結構酷いこと言うな……」
藤崎はゆっくりを首を横に振り、「まあ、仕方ねえか」と溜め息交じりに漏らした。
「とりあえず、そろそろ部屋に戻れ。俺が着いてく」
「伯父さんが怖いからだね?」
「そ」
藤崎は、よっこらせと腰を上げた。美咲もそれに倣う。
藤崎のあとを歩きながら、美咲はまた、考えを巡らせる。藍田のチカラに対抗する術はあるのか。そもそも、藍田は何を企んでいるのか。
(私は、伯父さんのためにみんなが不幸になるなんて耐えられない……)
戦わなくては、と思った。ただ、美咲自身に何のチカラもないことが歯痒くて仕方ない。
(いざとなったら、桜姫……)
美咲の中の桜姫に問いかける。だが、桜姫からの返答はなかった。あえて無言でいるつもりなのか。
美咲は深呼吸を繰り返す。これから起こるであろうことを予測しながら、さらに気持ちを強く持とうと決意を固めた。
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