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Chapter.4 触れて、側にいて
Act.3-04
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「これでいい?」
高遠さんが出したお皿は、手の平サイズの小皿と両手であまるぐらいの中皿だった。
「いいですよ」
頷きながら、ちょっと偉そうだったかな、と少し反省する。もちろん、高遠さんは全く意に介していない。
「箸は?」
「割り箸持ってきましたから」
「じゃあ、それでいいか」
ひとりでうんうんと首を縦に動かし、お皿を億の部屋へと持って行った。それからまた戻って来て、冷蔵庫を開け出した。
「飲み物、烏龍茶でいい?」
そこまで気を遣わなくていいのにと思ってしまう。でも、そんなところも私は嬉しかったから、「はい」とさらに笑顔で答えた。
「すみません。あと、お弁当も出してくれますか?」
「もちろん」
高遠さんもまた素直に応じてくれる。意気揚々とトートバッグからお弁当の包みを取り出し、それを持って行ってくれた。
筑前煮も、いい具合に温まった。部屋に持って行き、お弁当と一緒に並べてみれば一気にコタツの上が賑わった。
「ピクニックみたいですね」
自分で作ったものを広げてワクワクしている。ただ、室内というのがちょっと残念だ。
「春になったら行く?」
ふたりで並んで座ってから、高遠さんが言った。
「さすがにこれからだと厳しいからね。暖かくなったら、弁当持って。花見とかいいかもね」
「花見! 行きたいです!」
自分でも驚くほどのはしゃぎ方をしてしまった。でも、元々花は好きだから花見は行きたい。
「珍しいこともあるもんだ」
そう言いながら、高遠さんが笑いを堪えている。
「でも、そこまで楽しみにしてくれるんなら、ちゃんとプランを練っておかないとね。もちろん、行きたいトコとかあるなら遠慮なく言って、絢」
あれ、と思った。今、最後に下の名前で呼ばれたのは気のせいだろうか。
「あの、高遠さん……?」
私はおずおずと訊ねた。
「今、私の名前を、下の方……」
「ごめん!」
咄嗟に謝られてしまった。
「つい、呼び捨てで君の名前を……。不愉快、だった……?」
私は何度も首を横に振った。
「いえ、全然。私の名前、好きなように呼んで下さい。高遠さんには、『絢』って呼ばれたいです……」
好きなように、と言いながら、〈絢〉と呼ばれたいなどと何気なくわがままを口にしてしまった。
高遠さんの両手が、私の頬を挟んできた。また、キスをされてしまうのかな、と思ったけれど、違った。
「じゃあ、遠慮なくこれからも呼ぶよ。絢」
手が頬から離れ、今度は身体ごと包み込まれる。首筋に、高遠さんの温かい吐息を感じた。
「絢……」
また、私の名前を口にする。友達や家族にも下の名前で呼ばれているのに、高遠さんに呼ばれると特別なものを感じる。
幸せとはこういうことを言うのだろうか。高遠さんといると心が温かくなるし、とても安心出来る。やはり、私は高遠さんに恋しているのだ。
「――好きです……」
ほとんど無意識に告白していた。
高遠さんの腕に力が入り、さらに強く抱き締められた。
「ありがとう。俺も絢が好きだよ」
高遠さんも私に応えてくれた。
――私は、最高の幸せ者なのかもしれない……
そんなことを思いながら、私も高遠さんの背中にゆっくりと両腕を回した。
【Chapter.4-End】
高遠さんが出したお皿は、手の平サイズの小皿と両手であまるぐらいの中皿だった。
「いいですよ」
頷きながら、ちょっと偉そうだったかな、と少し反省する。もちろん、高遠さんは全く意に介していない。
「箸は?」
「割り箸持ってきましたから」
「じゃあ、それでいいか」
ひとりでうんうんと首を縦に動かし、お皿を億の部屋へと持って行った。それからまた戻って来て、冷蔵庫を開け出した。
「飲み物、烏龍茶でいい?」
そこまで気を遣わなくていいのにと思ってしまう。でも、そんなところも私は嬉しかったから、「はい」とさらに笑顔で答えた。
「すみません。あと、お弁当も出してくれますか?」
「もちろん」
高遠さんもまた素直に応じてくれる。意気揚々とトートバッグからお弁当の包みを取り出し、それを持って行ってくれた。
筑前煮も、いい具合に温まった。部屋に持って行き、お弁当と一緒に並べてみれば一気にコタツの上が賑わった。
「ピクニックみたいですね」
自分で作ったものを広げてワクワクしている。ただ、室内というのがちょっと残念だ。
「春になったら行く?」
ふたりで並んで座ってから、高遠さんが言った。
「さすがにこれからだと厳しいからね。暖かくなったら、弁当持って。花見とかいいかもね」
「花見! 行きたいです!」
自分でも驚くほどのはしゃぎ方をしてしまった。でも、元々花は好きだから花見は行きたい。
「珍しいこともあるもんだ」
そう言いながら、高遠さんが笑いを堪えている。
「でも、そこまで楽しみにしてくれるんなら、ちゃんとプランを練っておかないとね。もちろん、行きたいトコとかあるなら遠慮なく言って、絢」
あれ、と思った。今、最後に下の名前で呼ばれたのは気のせいだろうか。
「あの、高遠さん……?」
私はおずおずと訊ねた。
「今、私の名前を、下の方……」
「ごめん!」
咄嗟に謝られてしまった。
「つい、呼び捨てで君の名前を……。不愉快、だった……?」
私は何度も首を横に振った。
「いえ、全然。私の名前、好きなように呼んで下さい。高遠さんには、『絢』って呼ばれたいです……」
好きなように、と言いながら、〈絢〉と呼ばれたいなどと何気なくわがままを口にしてしまった。
高遠さんの両手が、私の頬を挟んできた。また、キスをされてしまうのかな、と思ったけれど、違った。
「じゃあ、遠慮なくこれからも呼ぶよ。絢」
手が頬から離れ、今度は身体ごと包み込まれる。首筋に、高遠さんの温かい吐息を感じた。
「絢……」
また、私の名前を口にする。友達や家族にも下の名前で呼ばれているのに、高遠さんに呼ばれると特別なものを感じる。
幸せとはこういうことを言うのだろうか。高遠さんといると心が温かくなるし、とても安心出来る。やはり、私は高遠さんに恋しているのだ。
「――好きです……」
ほとんど無意識に告白していた。
高遠さんの腕に力が入り、さらに強く抱き締められた。
「ありがとう。俺も絢が好きだよ」
高遠さんも私に応えてくれた。
――私は、最高の幸せ者なのかもしれない……
そんなことを思いながら、私も高遠さんの背中にゆっくりと両腕を回した。
【Chapter.4-End】
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