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Case4.捻れた正義
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その言葉は彼の正義感のように思われた。しかし、彼は決して良い顔をしていない。事件の結果を前にしての表情だとは思うけれど、それだけではないのだろう。
正義を語りつつも暗い彼の表情を見ると、出会った時の言葉を思い出す。
あの時も、今も、強さの中に眠る悲しみが、彼の横顔には宿っていた。
ーカイリ『捻れた正義』終章ー
※
「もう1つの根拠?」
月波は眉間に皺を寄せた。海里は頷く。
「はい。こんなこともあろうかと、東堂さんの部下に頼んでいました。ありますか?」
「こちらに」
刑事が机にパソコンを置いた。海里は素早くキーボードを叩き、画面を月波に見せる。
「これは事件当日の防犯カメラの映像です。あなたと高岡さんの姿がきっちり映っています。ご覧になられましたか?」
「・・・・それが何じゃ」
「もう1度ご覧になってください。東堂さんも」
「俺も?」
「はい。そうすれば、私の言葉の意味が分かるかと」
龍は首を傾げながら映像を見た。月波は既に目を逸らし、冷や汗を掻いている。
明らかに不審な挙動を無視しつつ、映像を見ていた龍は、突然ハッとして目を丸くした。海里は龍が理解したことを察し、口を開く。
「お分かりですか?
まず1つ、月波さんと高岡さんが歩いて来た方向です。高岡さんは画面右から現れ、以後映っていません。事件現場は画面右端より奥ですから、彼女がこれ以降映っていないということは、既に被害者を誘導し終え、友人の家に行ったということでしょう。
対して、月波さんは画面左から現れ、画面右へ移動し、以後映っていません」
「・・・・だから何だと言うんじゃ。道くらい、いくらでも・・・・」
「はい。しかしこの場所では、右側に行ったまま戻って来ないことが殺人の証拠になるんです。
事件現場より奥の道は、市の決まりで午前3時以降には封鎖されますから」
月波の喉が上下した。龍は息を吐き、海里の言葉を継いだ。
「帰る道は左しかなかったのに、左側を通らなかった。そして、事件現場付近に抜け道は存在しない。抜け道を含んで、封鎖されるから」
「はい。犯人の逃走ルートは事前に東堂さんが解決していますし、間違いないでしょうね」
海里はゆったりと椅子から立ち上がった。月波の前に手を置き、尋ねる。
「ここまで来てもまだ、自分たちは犯人では無いと断言しますか?」
「・・・・凶器・・・凶器の話はどうなる?」
それは悪あがきだった。海里はすぐに答える。
「凶器はあなたの杖です。それ、仕込み杖でしょう? 上等な杖に見えますが、どこか歪な形です」
月波の肩が震えた。龍は机に立てかけられた杖を手に取り、持ち手の部分を強く引く。
「確かに鋸だ。しかも血が付いている。乾いてはいるが、比較的新しいものだな」
「鑑識に回せば被害者の血液と一致するでしょう。そして、あなたがこんな物を持っている事も、立派な殺人の証拠です」
「いつ仕込み杖だと気付いた?」
「映像を見た時に妙だと思いました。持ち手の部分とそれより下の部分に、少しズレが生じていましたから。普通の杖でないことは何となく」
長い沈黙が流れた。沈黙の間に、他の刑事が行っていた捜査によって、現場に落ちていた髪の毛が高岡奈々美のものである事も判明し、2人の共犯が明らかになった。
「・・・・娘を、死なせたくなかった。あの男は・・・・疫病神・・いや、人間の屑じゃ。人を殺し、踏みつけにし、それを悪びれることもない・・・あの男は、生きていてはならない存在だったんじゃ」
全てが明らかになった後、月波は消え入るような声で呟いた。海里は何も言わなかったが、それを聞くなり、龍は声を上げた。
「例えそうだとしても、同じように殺人に手を染めたあんたに、その言葉を言う権利はない」
縋るような声を切り捨てた発言に、海里はわずかに驚いた。部下が止めようとするが、彼は構わず続ける。
「あんたたちは“悪”という名の存在を殺すことで、皆本孝一に殺された被害者の仇を討ったつもりか? もしくは、自分たちは正義だと声高々に告げるつもりか?
言っとくが、それは大きな間違いだ。あんたたちがやったことは、皆本孝一がやったことと何も変わらない。殺人を犯し、遺体を遺棄し、仇討ち・復讐と称して悪びれなかった。
この行動のどこに、“正義”なんてものが存在するんだ?」
海里は黙って龍の言葉を聞いていた。月波が何か言おうとするが、龍は止まらない。
「そもそも殺人自体が“悪”だ。娘を死なせたくない、無事にいて欲しいと願うなら、なぜ関わらせた? なぜ警察に言わなかった? あんたの情報が正しいかどうかは、俺たちが判断する。そしてそれが正しければ、俺たちは必ずあんたの娘を助けたよ」
「その間に・・・・」
「殺されていたかもしれない? そうだとしても保護すれば済んだ。違うか?」
月波の表情が強張る。龍は心なしか声を大きくして続けた。
「殺人という思考の前に、“娘を守る”という気持ちがあったんだろ? だったら、娘と相談して、DVの被害を訴えるのが先じゃないのか? そうすれば、先にその線から皆本を逮捕できる。そこから身元を洗えば、過去の事件にも行き着いたはずだ。
あんたたちは結局、正義という言葉を盾にして、自分勝手な殺人を行ったに過ぎないんだよ」
再び沈黙が流れた。龍は黙って部屋を出て行き、部下の1人が手錠を出した。
「20XX年4月15日午後16時3分。月波清玄、殺人罪で逮捕します」
手錠をかけられた月波の顔は、驚くほど穏やかだった。そしてその数時間後、娘の高岡奈々美もまた、殺人罪で逮捕されたという。法定での申し開きは短く、両者共に、5年の懲役刑が課された。
※
「どうも」
過去と現在のバラバラ殺人が解決した数週間後、海里は突然警視庁にやって来た。龍は怪訝な顔をする。
「・・・・またお前か。今は事件なんてないぞ」
龍はキーボードを叩きながらそっけなく口にした。海里は頷く。
「分かっています。ただ、これの感想を聞かせて頂きたくて」
そう言いながら、海里は1冊の本を差し出した。表紙には『捻れた正義』と印刷されており、白いカバーに反した真っ黒な文字が目立っている。本の下部に付けられた赤い帯は、照明を浴びて光っていた。
龍は本に鋭い視線を投げかけ、海里を見上げる。
「何度も言ってるだろ。俺は、お前が書く小説が嫌いだ。事件を肌で感じた人間と、そうでない人間では感じ方が違う。そんな事も分からずに、何で俺に差し出してくる?
命が消える前に事件を防げなかった時点で、警察官として恥ずべきことなんだ。お前の小説は、その思いを一層強くさせる」
言い終わるなり、龍はパソコンに向き直った。その様子を見ながら海里は尋ねる。
「正義って何だと思いますか?」
「は?」
すぐさま海里へ投げかけた視線も、声も、明らかに苛立っていた。お前がそんなものを語るのか、とでも言うかのように。
しかし、海里は気にせず続ける。
「先日、仰っていましたよね。殺人は悪だと。では殺人をせず、全てを警察に任せることが正義ですか? もし対応が遅れれば、親子共々殺害されるという、最悪な結果を招いたのではありませんか?」
「・・・・何が言いたい?」
質問に質問で返したことに、海里は不満のようだった。真面目な顔から少し不貞腐れた顔になり、彼は口を開く。
「言いたいのではなく、聞いているんです。“東堂さんの正義”を」
海里の言葉に龍は呆れながら、しかし、どこか悲しげな顔をして答えた。
「物は言いようだな。だが、そんなことを俺に聞いてどうする? 正しい答えなんて出やしない」
「そうかもしれません。しかし、あなたは人を助けることが正義と思っているのでしょう?」
警察官として、人として、龍を信用し信頼しているからこそ、海里は尋ねた。断言してくれることを望んで。
しかし、龍の答えは、海里の予想とは違っていた。
「・・・・警察官である以上な。ただ、いつもそれが叶うとは限らない。何度も見て来たし、感じたよ」
龍は苦笑した。どこか悲しみを含んだ笑みを浮かべ、体ごと海里の方を向く。
「お前がどういう人生を生きてきたのかは知らないが、早いうちに探偵なんてやめろ。いつか必ず、後悔する時が来る」
海里は目を丸くした。龍は手早く資料の作成を終え、息を吐きながらパソコンを閉じる。
そして直後、海里の手から本を抜き取って自分の鞄に仕舞った。
「え」
自然に驚きが漏れた。龍は海里の動揺を気に留めずに言う。
「俺は、お前の望む答えなんて持っていない。だから、“お前の答え”を、お前の小説を読んで探してやるよ。
今は、それで勘弁しろ」
「・・・・物は言いようですね」
皮肉のように聞こえる言葉だったが、海里はどこか嬉しそうだった。
その笑みを見届けるなり、突然龍は立ち上がり、「またな」と言って立ち去った。仕事中であることを不思議に思い、海里は龍の部下に声をかける。
「東堂さんはどこに行かれるんですか? 呼び出された、とかではないですよね?」
「おや、江本さんはご存知ないんですね」
「ご存知ない・・・?」
海里が首を傾げると、龍の部下は悲しげな表情を浮かべ、信じ難いことを口にする。
「今日は、東堂警部の奥さんと、2人のお子さんの月命日なんですよ」
言葉を発するのを忘れるほどの衝撃だった。龍の身の上話を聞いたことがなかったため、そんな喪失を経験していたことなど、全く知らなかったのだ。彼自身、お首にも出していなかった。
部下は続ける。
「ずっと、悔やんでいらっしゃるんです。人を守る仕事をしていながら、家族すら守れなかったと。
ご家族を亡くして以来、東堂警部は・・・自分の正義が信じられず、分からなくなってしまったんです」
正義を語りつつも暗い彼の表情を見ると、出会った時の言葉を思い出す。
あの時も、今も、強さの中に眠る悲しみが、彼の横顔には宿っていた。
ーカイリ『捻れた正義』終章ー
※
「もう1つの根拠?」
月波は眉間に皺を寄せた。海里は頷く。
「はい。こんなこともあろうかと、東堂さんの部下に頼んでいました。ありますか?」
「こちらに」
刑事が机にパソコンを置いた。海里は素早くキーボードを叩き、画面を月波に見せる。
「これは事件当日の防犯カメラの映像です。あなたと高岡さんの姿がきっちり映っています。ご覧になられましたか?」
「・・・・それが何じゃ」
「もう1度ご覧になってください。東堂さんも」
「俺も?」
「はい。そうすれば、私の言葉の意味が分かるかと」
龍は首を傾げながら映像を見た。月波は既に目を逸らし、冷や汗を掻いている。
明らかに不審な挙動を無視しつつ、映像を見ていた龍は、突然ハッとして目を丸くした。海里は龍が理解したことを察し、口を開く。
「お分かりですか?
まず1つ、月波さんと高岡さんが歩いて来た方向です。高岡さんは画面右から現れ、以後映っていません。事件現場は画面右端より奥ですから、彼女がこれ以降映っていないということは、既に被害者を誘導し終え、友人の家に行ったということでしょう。
対して、月波さんは画面左から現れ、画面右へ移動し、以後映っていません」
「・・・・だから何だと言うんじゃ。道くらい、いくらでも・・・・」
「はい。しかしこの場所では、右側に行ったまま戻って来ないことが殺人の証拠になるんです。
事件現場より奥の道は、市の決まりで午前3時以降には封鎖されますから」
月波の喉が上下した。龍は息を吐き、海里の言葉を継いだ。
「帰る道は左しかなかったのに、左側を通らなかった。そして、事件現場付近に抜け道は存在しない。抜け道を含んで、封鎖されるから」
「はい。犯人の逃走ルートは事前に東堂さんが解決していますし、間違いないでしょうね」
海里はゆったりと椅子から立ち上がった。月波の前に手を置き、尋ねる。
「ここまで来てもまだ、自分たちは犯人では無いと断言しますか?」
「・・・・凶器・・・凶器の話はどうなる?」
それは悪あがきだった。海里はすぐに答える。
「凶器はあなたの杖です。それ、仕込み杖でしょう? 上等な杖に見えますが、どこか歪な形です」
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「いつ仕込み杖だと気付いた?」
「映像を見た時に妙だと思いました。持ち手の部分とそれより下の部分に、少しズレが生じていましたから。普通の杖でないことは何となく」
長い沈黙が流れた。沈黙の間に、他の刑事が行っていた捜査によって、現場に落ちていた髪の毛が高岡奈々美のものである事も判明し、2人の共犯が明らかになった。
「・・・・娘を、死なせたくなかった。あの男は・・・・疫病神・・いや、人間の屑じゃ。人を殺し、踏みつけにし、それを悪びれることもない・・・あの男は、生きていてはならない存在だったんじゃ」
全てが明らかになった後、月波は消え入るような声で呟いた。海里は何も言わなかったが、それを聞くなり、龍は声を上げた。
「例えそうだとしても、同じように殺人に手を染めたあんたに、その言葉を言う権利はない」
縋るような声を切り捨てた発言に、海里はわずかに驚いた。部下が止めようとするが、彼は構わず続ける。
「あんたたちは“悪”という名の存在を殺すことで、皆本孝一に殺された被害者の仇を討ったつもりか? もしくは、自分たちは正義だと声高々に告げるつもりか?
言っとくが、それは大きな間違いだ。あんたたちがやったことは、皆本孝一がやったことと何も変わらない。殺人を犯し、遺体を遺棄し、仇討ち・復讐と称して悪びれなかった。
この行動のどこに、“正義”なんてものが存在するんだ?」
海里は黙って龍の言葉を聞いていた。月波が何か言おうとするが、龍は止まらない。
「そもそも殺人自体が“悪”だ。娘を死なせたくない、無事にいて欲しいと願うなら、なぜ関わらせた? なぜ警察に言わなかった? あんたの情報が正しいかどうかは、俺たちが判断する。そしてそれが正しければ、俺たちは必ずあんたの娘を助けたよ」
「その間に・・・・」
「殺されていたかもしれない? そうだとしても保護すれば済んだ。違うか?」
月波の表情が強張る。龍は心なしか声を大きくして続けた。
「殺人という思考の前に、“娘を守る”という気持ちがあったんだろ? だったら、娘と相談して、DVの被害を訴えるのが先じゃないのか? そうすれば、先にその線から皆本を逮捕できる。そこから身元を洗えば、過去の事件にも行き着いたはずだ。
あんたたちは結局、正義という言葉を盾にして、自分勝手な殺人を行ったに過ぎないんだよ」
再び沈黙が流れた。龍は黙って部屋を出て行き、部下の1人が手錠を出した。
「20XX年4月15日午後16時3分。月波清玄、殺人罪で逮捕します」
手錠をかけられた月波の顔は、驚くほど穏やかだった。そしてその数時間後、娘の高岡奈々美もまた、殺人罪で逮捕されたという。法定での申し開きは短く、両者共に、5年の懲役刑が課された。
※
「どうも」
過去と現在のバラバラ殺人が解決した数週間後、海里は突然警視庁にやって来た。龍は怪訝な顔をする。
「・・・・またお前か。今は事件なんてないぞ」
龍はキーボードを叩きながらそっけなく口にした。海里は頷く。
「分かっています。ただ、これの感想を聞かせて頂きたくて」
そう言いながら、海里は1冊の本を差し出した。表紙には『捻れた正義』と印刷されており、白いカバーに反した真っ黒な文字が目立っている。本の下部に付けられた赤い帯は、照明を浴びて光っていた。
龍は本に鋭い視線を投げかけ、海里を見上げる。
「何度も言ってるだろ。俺は、お前が書く小説が嫌いだ。事件を肌で感じた人間と、そうでない人間では感じ方が違う。そんな事も分からずに、何で俺に差し出してくる?
命が消える前に事件を防げなかった時点で、警察官として恥ずべきことなんだ。お前の小説は、その思いを一層強くさせる」
言い終わるなり、龍はパソコンに向き直った。その様子を見ながら海里は尋ねる。
「正義って何だと思いますか?」
「は?」
すぐさま海里へ投げかけた視線も、声も、明らかに苛立っていた。お前がそんなものを語るのか、とでも言うかのように。
しかし、海里は気にせず続ける。
「先日、仰っていましたよね。殺人は悪だと。では殺人をせず、全てを警察に任せることが正義ですか? もし対応が遅れれば、親子共々殺害されるという、最悪な結果を招いたのではありませんか?」
「・・・・何が言いたい?」
質問に質問で返したことに、海里は不満のようだった。真面目な顔から少し不貞腐れた顔になり、彼は口を開く。
「言いたいのではなく、聞いているんです。“東堂さんの正義”を」
海里の言葉に龍は呆れながら、しかし、どこか悲しげな顔をして答えた。
「物は言いようだな。だが、そんなことを俺に聞いてどうする? 正しい答えなんて出やしない」
「そうかもしれません。しかし、あなたは人を助けることが正義と思っているのでしょう?」
警察官として、人として、龍を信用し信頼しているからこそ、海里は尋ねた。断言してくれることを望んで。
しかし、龍の答えは、海里の予想とは違っていた。
「・・・・警察官である以上な。ただ、いつもそれが叶うとは限らない。何度も見て来たし、感じたよ」
龍は苦笑した。どこか悲しみを含んだ笑みを浮かべ、体ごと海里の方を向く。
「お前がどういう人生を生きてきたのかは知らないが、早いうちに探偵なんてやめろ。いつか必ず、後悔する時が来る」
海里は目を丸くした。龍は手早く資料の作成を終え、息を吐きながらパソコンを閉じる。
そして直後、海里の手から本を抜き取って自分の鞄に仕舞った。
「え」
自然に驚きが漏れた。龍は海里の動揺を気に留めずに言う。
「俺は、お前の望む答えなんて持っていない。だから、“お前の答え”を、お前の小説を読んで探してやるよ。
今は、それで勘弁しろ」
「・・・・物は言いようですね」
皮肉のように聞こえる言葉だったが、海里はどこか嬉しそうだった。
その笑みを見届けるなり、突然龍は立ち上がり、「またな」と言って立ち去った。仕事中であることを不思議に思い、海里は龍の部下に声をかける。
「東堂さんはどこに行かれるんですか? 呼び出された、とかではないですよね?」
「おや、江本さんはご存知ないんですね」
「ご存知ない・・・?」
海里が首を傾げると、龍の部下は悲しげな表情を浮かべ、信じ難いことを口にする。
「今日は、東堂警部の奥さんと、2人のお子さんの月命日なんですよ」
言葉を発するのを忘れるほどの衝撃だった。龍の身の上話を聞いたことがなかったため、そんな喪失を経験していたことなど、全く知らなかったのだ。彼自身、お首にも出していなかった。
部下は続ける。
「ずっと、悔やんでいらっしゃるんです。人を守る仕事をしていながら、家族すら守れなかったと。
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