21 / 38
21(コンラート目線)
しおりを挟む
伯爵家から帰る際、俺に続いて馬車に乗り込んだアルノーが黒い笑みを浮かべる。
「で?もうどうするか決めたの?」
物心ついた頃から周りと上手くやれなかった俺と違って、出会った時からアルノーはいつも笑顔で周りからも好かれていた。でも素直だけが取り柄の薄っぺらな貴族令息じゃなくて、それは計算された外面の良さだった。実は俺より腹黒いんじゃないかと前々から思っているが、本人は頑として認めない。
「その真っ黒な顔、ラーラに見せたことあるのか?」
「まさか。姉さんは未だに僕のことを『のんびりゆったりした弟』だって、何なら心配してるくらいなんだから。もちろん、リリアナにも見せてないよ。守るべき相手に見せていい顔じゃないし、見せる必要もないしね」
「ーーー気に留めておく」
皮肉で聞いたのに、まさか諭されるとは。ちょっと腑に落ちない気持ちもあるが、今優先すべきはそれじゃない。
「とりあえず、探りは入れてある」
簡潔に言うと、アルノーはすぐに頷いた。
王子として生まれた者は、当然ながら周囲に危険が付きまとう。それを避けるために、もしくは躱すために身の回りの世話をする人間に護衛を兼ねた者が配置され、その人物は生涯に渡って王子を守り支えていく存在になる。光の当たらないの部分も含めて。
俺にも普段は侍従として仕え、有事の際には影として動いてくれる人間が数名いる。それは表立って側近として仕える貴族とは違いプライベートでも働いてくれて、信頼できる存在だ。
今回も公爵家からの使者が来て、すぐに動いている。俺とずっと親しいアルノーはその辺の事情も全部承知しているので話が早い。
「で?影からの報告を受けて、作戦を練るつもり?」
「そうだな。向こうの出方が分からない状態で無理に動けば不利になる可能性もあるし」
「そうだね……って言いたいところだけど、本当は大体察しがついてるんじゃない?」
「まぁな」
ホント、こいつはくえない。
なのに「ゆったりのんびり」な奴だと騙されている貴族が大多数なんて、この国は大丈夫だろうか?
どうにも納得出来ないのをため息で抑え込んだ。
今、優先すべきはそれじゃないんだ。
「で?もうどうするか決めたの?」
物心ついた頃から周りと上手くやれなかった俺と違って、出会った時からアルノーはいつも笑顔で周りからも好かれていた。でも素直だけが取り柄の薄っぺらな貴族令息じゃなくて、それは計算された外面の良さだった。実は俺より腹黒いんじゃないかと前々から思っているが、本人は頑として認めない。
「その真っ黒な顔、ラーラに見せたことあるのか?」
「まさか。姉さんは未だに僕のことを『のんびりゆったりした弟』だって、何なら心配してるくらいなんだから。もちろん、リリアナにも見せてないよ。守るべき相手に見せていい顔じゃないし、見せる必要もないしね」
「ーーー気に留めておく」
皮肉で聞いたのに、まさか諭されるとは。ちょっと腑に落ちない気持ちもあるが、今優先すべきはそれじゃない。
「とりあえず、探りは入れてある」
簡潔に言うと、アルノーはすぐに頷いた。
王子として生まれた者は、当然ながら周囲に危険が付きまとう。それを避けるために、もしくは躱すために身の回りの世話をする人間に護衛を兼ねた者が配置され、その人物は生涯に渡って王子を守り支えていく存在になる。光の当たらないの部分も含めて。
俺にも普段は侍従として仕え、有事の際には影として動いてくれる人間が数名いる。それは表立って側近として仕える貴族とは違いプライベートでも働いてくれて、信頼できる存在だ。
今回も公爵家からの使者が来て、すぐに動いている。俺とずっと親しいアルノーはその辺の事情も全部承知しているので話が早い。
「で?影からの報告を受けて、作戦を練るつもり?」
「そうだな。向こうの出方が分からない状態で無理に動けば不利になる可能性もあるし」
「そうだね……って言いたいところだけど、本当は大体察しがついてるんじゃない?」
「まぁな」
ホント、こいつはくえない。
なのに「ゆったりのんびり」な奴だと騙されている貴族が大多数なんて、この国は大丈夫だろうか?
どうにも納得出来ないのをため息で抑え込んだ。
今、優先すべきはそれじゃないんだ。
7
お気に入りに追加
544
あなたにおすすめの小説
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
私達、政略結婚ですから。
黎
恋愛
オルヒデーエは、来月ザイデルバスト王子との結婚を控えていた。しかし2年前に王宮に来て以来、王子とはろくに会わず話もしない。一方で1年前現れたレディ・トゥルペは、王子に指輪を贈られ、二人きりで会ってもいる。王子に自分達の関係性を問いただすも「政略結婚だが」と知らん顔、レディ・トゥルペも、オルヒデーエに向かって「政略結婚ですから」としたり顔。半年前からは、レディ・トゥルペに数々の嫌がらせをしたという噂まで流れていた。
それが罪状として読み上げられる中、オルヒデーエは王子との数少ない思い出を振り返り、その処断を待つ。
愛のゆくえ【完結】
春の小径
恋愛
私、あなたが好きでした
ですが、告白した私にあなたは言いました
「妹にしか思えない」
私は幼馴染みと婚約しました
それなのに、あなたはなぜ今になって私にプロポーズするのですか?
☆12時30分より1時間更新
(6月1日0時30分 完結)
こう言う話はサクッと完結してから読みたいですよね?
……違う?
とりあえず13日後ではなく13時間で完結させてみました。
他社でも公開
君は妾の子だから、次男がちょうどいい
月山 歩
恋愛
侯爵家のマリアは婚約中だが、彼は王都に住み、マリアは片田舎で遠いため、会ったことはなかった。でもある時、マリアは、妾の子であると知られる。そんな娘は大事な子息とは、結婚させられないと、病気療養中の次男との婚約に一方的に変えさせられる。そして次の日には、迎えの馬車がやって来た。
伝える前に振られてしまった私の恋
メカ喜楽直人
恋愛
母に連れられて行った王妃様とのお茶会の席を、ひとり抜け出したアーリーンは、幼馴染みと友人たちが歓談する場に出くわす。
そこで、ひとりの令息が婚約をしたのだと話し出した。
貴方もヒロインのところに行くのね? [完]
風龍佳乃
恋愛
元気で活発だったマデリーンは
アカデミーに入学すると生活が一変し
てしまった
友人となったサブリナはマデリーンと
仲良くなった男性を次々と奪っていき
そしてマデリーンに愛を告白した
バーレンまでもがサブリナと一緒に居た
マデリーンは過去に決別して
隣国へと旅立ち新しい生活を送る。
そして帰国したマデリーンは
目を引く美しい蝶になっていた
【短編完結】記憶なしで婚約破棄、常識的にざまあです。だってそれまずいって
鏑木 うりこ
恋愛
お慕いしておりましたのにーーー
残った記憶は強烈な悲しみだけだったけれど、私が目を開けると婚約破棄の真っ最中?!
待って待って何にも分からない!目の前の人の顔も名前も、私の腕をつかみ上げている人のことも!
うわーーうわーーどうしたらいいんだ!
メンタルつよつよ女子がふわ~り、さっくりかる~い感じの婚約破棄でざまぁしてしまった。でもメンタルつよつよなので、ザクザク切り捨てて行きます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる