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5(コンラート目線)

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アルノーの恋人であるリリアナは素敵な令嬢である上に王家の血を引いているので縁談がひきも切らなかったのだ。

勿論、素敵なのはラーラの次にだけど。

そんな彼女を置いて、俺と一緒に二年も留学なんてアルノーが承知する訳がない。もっと言えば、王子としての責任がなければ俺も留学しなかった。

「そもそも、ラーラが婚約したのも気に入らなかったんだ。あと一年でも待ってくれたら、おれも国王オヤジにラーラとの縁談を願いでたし」

「んー、多分それが原因だと思うよ?ほら、うちの家族って代々野心もないし、ひっそりのんびり暮らしたい派だからさ。娘に王子妃なんて荷が重い、そんな大役務まらないって君からの話が出るまでに婚約させたんだと思うんだよね」

「なっ……」

「僕もさ、ちゃんと両親に聞いた訳じゃないんだけどね。今回、僕が好きな人がいるって話した時も『王家と縁続きになるのはなぁ……』ってちょっと渋ってたから、多分そう」

予想外の話に頭がくらりとした。

俺の好意がバレていたせいで、ラーラは六年もクソ野郎アディールの婚約者をしていたのか。

「くっ……それならば、もっと早くに俺との縁談を進めていればよかった。いっそ多少の既成事実を作ってしまっていれば……いや、今からでも」

「おいおいおい……だから拗らせ過ぎだってば。ってか既成事実作る計画、弟の前でしないでくれる。流石に姉さんが襲われる悪巧み片棒は担げないよ」

「馬鹿だな。俺がラーラを襲うなんて、そんか最低な事する訳ないだろうが。ただ幼馴染オレは異性なのだと意識させるだけだ。元々好意はあるのだし、後はどうとでもなる」

「好意って……それ、友人もしくは弟みたいなものとしてだよ」

「分かっている。だが好意を持つ相手が異性で自分を誰よりも愛しているとなれば、優しい彼女ラーラは確実に絆される。そうなれば一気に結婚まで持ち込んで、甘やかして溺愛して溶かせて幸せにするだけの話だ。だろ?」

「うーん、まあそうだけどさぁ」

一応同意はするが納得は出来ないらしい。アルノーは「姉さんも好かれた相手がこれだから可哀想に」とか何とかボソボソと言っているが、知ったことか。

さっさと婚約して、今度こそ確実にラーラを俺のものにするのだ。
だからその前に、一刻も早くアディールとの婚約腹立たしい現状を変えなければならない。奴の不誠実さにのんびりと期待してはいられないのだ。

その為の策を練り出した俺はしかし、翌日の夜にとんでもない幸運がやって来る事をまだ知らなかった。
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