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婚約破棄は想定内
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金色の髪に明るい青の瞳が印象的。全体的にキラキラしいその顔と高い身長が令嬢達から憧れられて、本人もそれをよく解っているから自信にも満ち溢れている。
その人、アディール・クラフェス侯爵子息はいつも通り自分が注目されているのを確認してから高らかに宣言した。
「ラーラ・レイランス!私はここで君との婚約の破棄を宣言する」
正直、とうとうやってきたかと思った。
5年前に婚約が決まった時から平凡な私なんかが婚約者では申し訳ないと思っていたし、アディール様自身もそう思っているのを隠しもしなかったから。
その容姿と侯爵家嗣子の立場から社交界ではモテモテ。未婚、既婚を問わず沢山の女性から声をかけられていたし、その内の数人と親密な付き合いをしてるのも公然の秘密で。
私が婚約者としてあり続けることが気に食わない令嬢から、そのことで当て擦りを言われたこともいっぱいあるし、中には早く別れろと迫られたこともある。
でもそんな状態でも彼が私との婚約を破棄しなかったのは、都合が良かったからだと思う。
彼は遊びのつもりでも本気になった女性から結婚を迫られた時に、私との婚約を理由にできるから。
それもこれも全部分かって、でも立場的に私から婚約破棄はできなくて。って言うのは言い訳だけど、まぁとにかく名目だけの婚約者として5年経って、今日突然に婚約破棄を宣言されたのだ。
ビシッと私を指差すアディール様の顔は自分の言動に酔っている人特有のそれだ。少し鼻の穴が膨らんで、頬の色も高揚している。
で、その斜め後ろには胸の前で両手を組み、うっとりと彼を見上げる女性。
「なるほど」
うっかりと声が漏れてしまった。が、その言葉はアディール様には届かなかったようだ。
「君は侯爵家後継の婚約者としてなんの努力もせず、俺に恥をかかせるような言動を繰り返した。寛容な俺は君の成長を待ったが、何年も一緒に夜会に出席することもままならない今、それも限界だ。本当に残念だが、今日限りで君との婚約はなかったことにする」
尊大な態度を崩さずに一方的に、しかも滔々と周囲に聞かせるようなそれはまるで演劇の一場面みたい。
本当に寛容で優しい人は私との約束をすっぽかして他の女性をエスコートして夜会に行かないし、大体こんな場所で断罪するように婚約破棄を告げたりもしないだろう。
言いたいことは全部飲み込んで、私はふぅっと小さく息を吐いて淑女の礼を取った。
「かしこまりました」
頭を下げたはずみで私の真っ直ぐな髪がさらりと顔の横に垂れる。
光を受けると色が変わる鳶色の髪は人に褒められる私の唯一の自慢だけど、この髪もアディール様は「まだらで汚い色だ」って言ってたっけ。
仕方ないのだ。きっと私の何もかもが気に入ってもらえないくらい、彼は興味も好意もなかったって事だもの。
その人、アディール・クラフェス侯爵子息はいつも通り自分が注目されているのを確認してから高らかに宣言した。
「ラーラ・レイランス!私はここで君との婚約の破棄を宣言する」
正直、とうとうやってきたかと思った。
5年前に婚約が決まった時から平凡な私なんかが婚約者では申し訳ないと思っていたし、アディール様自身もそう思っているのを隠しもしなかったから。
その容姿と侯爵家嗣子の立場から社交界ではモテモテ。未婚、既婚を問わず沢山の女性から声をかけられていたし、その内の数人と親密な付き合いをしてるのも公然の秘密で。
私が婚約者としてあり続けることが気に食わない令嬢から、そのことで当て擦りを言われたこともいっぱいあるし、中には早く別れろと迫られたこともある。
でもそんな状態でも彼が私との婚約を破棄しなかったのは、都合が良かったからだと思う。
彼は遊びのつもりでも本気になった女性から結婚を迫られた時に、私との婚約を理由にできるから。
それもこれも全部分かって、でも立場的に私から婚約破棄はできなくて。って言うのは言い訳だけど、まぁとにかく名目だけの婚約者として5年経って、今日突然に婚約破棄を宣言されたのだ。
ビシッと私を指差すアディール様の顔は自分の言動に酔っている人特有のそれだ。少し鼻の穴が膨らんで、頬の色も高揚している。
で、その斜め後ろには胸の前で両手を組み、うっとりと彼を見上げる女性。
「なるほど」
うっかりと声が漏れてしまった。が、その言葉はアディール様には届かなかったようだ。
「君は侯爵家後継の婚約者としてなんの努力もせず、俺に恥をかかせるような言動を繰り返した。寛容な俺は君の成長を待ったが、何年も一緒に夜会に出席することもままならない今、それも限界だ。本当に残念だが、今日限りで君との婚約はなかったことにする」
尊大な態度を崩さずに一方的に、しかも滔々と周囲に聞かせるようなそれはまるで演劇の一場面みたい。
本当に寛容で優しい人は私との約束をすっぽかして他の女性をエスコートして夜会に行かないし、大体こんな場所で断罪するように婚約破棄を告げたりもしないだろう。
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「かしこまりました」
頭を下げたはずみで私の真っ直ぐな髪がさらりと顔の横に垂れる。
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仕方ないのだ。きっと私の何もかもが気に入ってもらえないくらい、彼は興味も好意もなかったって事だもの。
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