33 / 87
第4章
3
しおりを挟む
そんなこんなで行われた豊穣の女神はーーーエルフリーデ先輩が選出された。ゲーム的にも順当な結果だ。
じゃあ私が出る必要なくない?とも思うし、そりゃぽっと出て選ばれるわけないよな、とも冷静に思う。だってクライブ殿下の秘書として認識されている程度の私の名前を知っている学生も少ないのだし、普通に考えて容姿も品格も家柄も女神になるには足りないのだから。元々モブだしね。
それでもどうにか終わってほっとした今、考えることはエルフリーデ先輩が攻略対象として選んだ相手が誰か、だ。
クライブ殿下ルートでもロランさんルートでも(友達情報で)豊穣の女神に選ばれた直後にイベントが起こる。学内の一大イベントなことを考えれば、他の攻略対象のルートでもイベントがあるのは当然だろう。
クライブ殿下とは出会いのイベントがあったし、さっきはロランさんルートの悪役令嬢から守られるイベントがあった。どちらのルートにも可能性があるし、私が知らないところで知らないイベントが起こっていればそのルートもあり得るのだから、気を抜かずに先輩の周辺に気を配る必要があった。
「先輩、そろそろ殿下のご挨拶の時間です。私たちも移動しましょう」
「そうね。あぁ、リディアは殿下にエスコートしてもらうのだから絶対に遅れてはダメね。ふふっ」
「ーーーそうですね」
なのに、私にはもっと緊急の任務があるのだ。しかも史上最大に気が重い。
「そんな顔しないで。殿下のことだから経験も豊富だし、きちんとエスコートしてくださるわ」
「そんな気軽に言わないでください!って言うか、エルフリーデ先輩が変わってくれてもいいんですよ?」
「あら、いやよ。それに私学園ではどなたにもエスコートはしてもらわないって決めているんだもの」
八つ当たり気味に愚痴をこぼしていた筈があり得ない言葉に動きが止まる。
「せせせせ先輩!?エスコートですよ?だって半年後には卒業パーティだってあるんですから、エスコートなしなんて無理じゃないですか!」
相手が誰であれ好感度がどうであれ、ヒロインが選んだ攻略対象にエスコートされて登場することで卒業パーティは始まる。そしてエンディングに繋がるのだ。
女神に選ばれた今、誰とどんなイベントを迎えてもエンディングに繋がる卒業パーティに一緒に参加しないなんて。そしたら、どんな結末になるのか想像もつかない。
思いもよらない可能性に慌てる私に、先輩は気品高く微笑んだ。
じゃあ私が出る必要なくない?とも思うし、そりゃぽっと出て選ばれるわけないよな、とも冷静に思う。だってクライブ殿下の秘書として認識されている程度の私の名前を知っている学生も少ないのだし、普通に考えて容姿も品格も家柄も女神になるには足りないのだから。元々モブだしね。
それでもどうにか終わってほっとした今、考えることはエルフリーデ先輩が攻略対象として選んだ相手が誰か、だ。
クライブ殿下ルートでもロランさんルートでも(友達情報で)豊穣の女神に選ばれた直後にイベントが起こる。学内の一大イベントなことを考えれば、他の攻略対象のルートでもイベントがあるのは当然だろう。
クライブ殿下とは出会いのイベントがあったし、さっきはロランさんルートの悪役令嬢から守られるイベントがあった。どちらのルートにも可能性があるし、私が知らないところで知らないイベントが起こっていればそのルートもあり得るのだから、気を抜かずに先輩の周辺に気を配る必要があった。
「先輩、そろそろ殿下のご挨拶の時間です。私たちも移動しましょう」
「そうね。あぁ、リディアは殿下にエスコートしてもらうのだから絶対に遅れてはダメね。ふふっ」
「ーーーそうですね」
なのに、私にはもっと緊急の任務があるのだ。しかも史上最大に気が重い。
「そんな顔しないで。殿下のことだから経験も豊富だし、きちんとエスコートしてくださるわ」
「そんな気軽に言わないでください!って言うか、エルフリーデ先輩が変わってくれてもいいんですよ?」
「あら、いやよ。それに私学園ではどなたにもエスコートはしてもらわないって決めているんだもの」
八つ当たり気味に愚痴をこぼしていた筈があり得ない言葉に動きが止まる。
「せせせせ先輩!?エスコートですよ?だって半年後には卒業パーティだってあるんですから、エスコートなしなんて無理じゃないですか!」
相手が誰であれ好感度がどうであれ、ヒロインが選んだ攻略対象にエスコートされて登場することで卒業パーティは始まる。そしてエンディングに繋がるのだ。
女神に選ばれた今、誰とどんなイベントを迎えてもエンディングに繋がる卒業パーティに一緒に参加しないなんて。そしたら、どんな結末になるのか想像もつかない。
思いもよらない可能性に慌てる私に、先輩は気品高く微笑んだ。
37
お気に入りに追加
996
あなたにおすすめの小説
【完結済】私、地味モブなので。~転生したらなぜか最推し攻略対象の婚約者になってしまいました~
降魔 鬼灯
恋愛
マーガレット・モルガンは、ただの地味なモブだ。前世の最推しであるシルビア様の婚約者を選ぶパーティーに参加してシルビア様に会った事で前世の記憶を思い出す。 前世、人生の全てを捧げた最推し様は尊いけれど、現実に存在する最推しは…。 ヒロインちゃん登場まで三年。早く私を救ってください。
公爵令嬢 メアリの逆襲 ~魔の森に作った湯船が 王子 で溢れて困ってます~
薄味メロン
恋愛
HOTランキング 1位 (2019.9.18)
お気に入り4000人突破しました。
次世代の王妃と言われていたメアリは、その日、すべての地位を奪われた。
だが、誰も知らなかった。
「荷物よし。魔力よし。決意、よし!」
「出発するわ! 目指すは源泉掛け流し!」
メアリが、追放の準備を整えていたことに。
クラヴィスの華〜BADエンドが確定している乙女ゲー世界のモブに転生した私が攻略対象から溺愛されているワケ〜
アルト
恋愛
たった一つのトゥルーエンドを除き、どの攻略ルートであってもBADエンドが確定している乙女ゲーム「クラヴィスの華」。
そのゲームの本編にて、攻略対象である王子殿下の婚約者であった公爵令嬢に主人公は転生をしてしまう。
とは言っても、王子殿下の婚約者とはいえ、「クラヴィスの華」では冒頭付近に婚約を破棄され、グラフィックは勿論、声すら割り当てられておらず、名前だけ登場するというモブの中のモブとも言えるご令嬢。
主人公は、己の不幸フラグを叩き折りつつ、BADエンドしかない未来を変えるべく頑張っていたのだが、何故か次第に雲行きが怪しくなって行き────?
「────婚約破棄? 何故俺がお前との婚約を破棄しなきゃいけないんだ? ああ、そうだ。この肩書きも煩わしいな。いっそもう式をあげてしまおうか。ああ、心配はいらない。必要な事は俺が全て────」
「…………(わ、私はどこで間違っちゃったんだろうか)」
これは、どうにかして己の悲惨な末路を変えたい主人公による生存戦略転生記である。
拾った宰相閣下に溺愛されまして。~残念イケメンの執着が重すぎます!
枢 呂紅
恋愛
「わたしにだって、限界があるんですよ……」
そんな風に泣きながら、べろべろに酔いつぶれて行き倒れていたイケメンを拾ってしまったフィアナ。そのまま道端に放っておくのも忍びなくて、仏心をみせて拾ってやったのがすべての間違いの始まりだった――。
「天使で、女神で、マイスウィートハニーなフィアナさん。どうか私の愛を受け入れてください!」
「気持ち悪いし重いんで絶対嫌です」
外見だけは最強だが中身は残念なイケメン宰相と、そんな宰相に好かれてしまった庶民ムスメの、温度差しかない身分差×年の差溺愛ストーリー、ここに開幕!
※小説家になろう様にも掲載しています。
ついうっかり王子様を誉めたら、溺愛されまして
夕立悠理
恋愛
キャロルは八歳を迎えたばかりのおしゃべりな侯爵令嬢。父親からは何もしゃべるなと言われていたのに、はじめてのガーデンパーティで、ついうっかり男の子相手にしゃべってしまう。すると、その男の子は王子様で、なぜか、キャロルを婚約者にしたいと言い出して──。
おしゃべりな侯爵令嬢×心が読める第4王子
設定ゆるゆるのラブコメディです。
悪役王女に転生しました。でも、パパは何故か私を溺愛してきます。
下菊みこと
恋愛
父親からの激しい虐待の末死に至った少女、空道伶奈は大好きだった乙女ゲームの世界に異世界転生!しかし転生したのは悪役王女で!?あれ、なんで私を毛嫌いするはずのパパが私を溺愛してるの?
これは愛されなかった少女が愛されまくるよくある?異世界転生の話。
小説家になろう様でも掲載しています。
完璧(変態)王子は悪役(天然)令嬢を今日も愛でたい
咲桜りおな
恋愛
オルプルート王国第一王子アルスト殿下の婚約者である公爵令嬢のティアナ・ローゼンは、自分の事を何故か初対面から溺愛してくる殿下が苦手。
見た目は完璧な美少年王子様なのに匂いをクンカクンカ嗅がれたり、ティアナの使用済み食器を欲しがったりと何だか変態ちっく!
殿下を好きだというピンク髪の男爵令嬢から恋のキューピッド役を頼まれてしまい、自分も殿下をお慕いしていたと気付くが時既に遅し。不本意ながらも婚約破棄を目指す事となってしまう。
※糖度甘め。イチャコラしております。
第一章は完結しております。只今第二章を更新中。
本作のスピンオフ作品「モブ令嬢はシスコン騎士様にロックオンされたようです~妹が悪役令嬢なんて困ります~」も公開しています。宜しければご一緒にどうぞ。
本作とスピンオフ作品の番外編集も別にUPしてます。
「小説家になろう」でも公開しています。
転生したらただの女子生徒Aでしたが、何故か攻略対象の王子様から溺愛されています
平山和人
恋愛
平凡なOLの私はある日、事故にあって死んでしまいました。目が覚めるとそこは知らない天井、どうやら私は転生したみたいです。
生前そういう小説を読みまくっていたので、悪役令嬢に転生したと思いましたが、実際はストーリーに関わらないただの女子生徒Aでした。
絶望した私は地味に生きることを決意しましたが、なぜか攻略対象の王子様や悪役令嬢、更にヒロインにまで溺愛される羽目に。
しかも、私が聖女であることも判明し、国を揺るがす一大事に。果たして、私はモブらしく地味に生きていけるのでしょうか!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる