23 / 49
23.平凡令嬢、民の結束を固める。
しおりを挟む
民衆と共に行進してから一週間が経ちました。
王都までの道のりも、もう半分と言った所でしょうか。
ただ歩いて王都へ向かうだけでも、問題は山積みでした。
何万という人が集まれば、当然諍いは起こります。
最初の頃は「打倒王家!」と叫んでいたものの、時間が経つにつれ、段々と無言になっていきました。
「おい、てめぇ何しやがんだ!!!」
「そっちから仕掛けてきたんだろ! やんのか!?」
私は頭を抱えました。
一度ケンカが起こるたびに、行進を中断し、仲裁をしなければなりません。
小さな溝かもしれませんが、ほうっておけば、それはやがて大きな溝となります。
所々で大小のグループや、派閥のようなものが出来上がったりと、少しづつですが皆の心がバラバラになっていく感覚を覚えます。
王家に対する恨みは、皆一緒なはずなのに……。
今の所、国の軍と衝突はありません。本来は無駄な血が流れずに済んだと喜ぶべきことなのですが……はぁ。
このまま、何も大きな問題が起こらなければ良いのですが。
段々と日が沈み始め、野営する場所を探していた時でした。
少々寂れた感じの村が見えて来たのです。
地図と照らし合わせてみますが、その村は地図にはありません。
地図に無い村というのは怪しいです。ですが、ここ数日は野営続き。
鍛え上げた軍人ならいざ知らず、元は一般市民。皆少なからずストレスを抱えてきている頃です。
ここで一度村に立ち寄り、人の営みに触れる。それだけでもストレスはいくらか和らぐでしょう。
ですが、もし、ここで誰かが強盗などを犯した場合、きっと他の者も続いてしまう……。
そんな事をしたら、私達は義勇軍から暴徒になってしまいます。コントロールの効かなくなった暴徒は、やがて他の町や村を襲ってしまう。
その時は、私達の手で彼らに処罰をくださなければならなくなります。
「リカルド様。今晩はあそこに見える村で野営をしたいと思うのですが、如何でしょうか?」
「そうだね。賢い君なら分かってると思うが、もし何か起きれば一瞬で暴徒と化してしまうだろう。彼らが変な真似をしないか、入念に目を光らせよう」
私達は村の入り口まで来ましたが、何やら様子は変です。
「や、やめてください!」
「おうおう、姉ちゃん、俺らが誰か分かってんのか? 国から雇われた傭兵団様だぞ?」
「やめてください? 違うだろ? もっと可愛がってくださいだろ?」
助けを求めるような声と、卑下た声。
もはや見なくても状況が理解できます。
「何をしているのですか!」
急いで声のする方へ向かうと、数十人の男グループが女性の腕を掴んでいる所でした。
「ヒュー。こいつは上玉じゃねぇか。姉ちゃんもこっちに来て俺らの相手してくれよ。へっへっへ」
「こっちは男が沢山居るからよりどりみどりだぜ?」
彼らはうす汚れた武具を身にまとい、不快になるようなゲスな笑みを浮かべた男達でした。
「先ほど、国から雇われた傭兵団と言っていましたよね?」
「おう。そうだぜ! へっへっへ、相手する気になってくれたか?」
「そうですね。国に雇われた傭兵団でしたら、お相手するしかありませんね」
ええ、貴方たち全員でお相手してもらいましょう。
民のストレス発散の為にですが!
「皆の者! 彼らは国から雇われた傭兵団。我々の敵だ!」
ウオオオオオォォォォォォォッ!!!!
私が叫ぶと同時に、地響きと雄たけびが轟きました。
「ヒィッ、なんだこいつら!?」
彼らが恐れるのは無理もありません。傭兵団を囲む民衆、その数は数万に及びます。
対する傭兵団は、50人にも満たない数です。もしかしたら村の中にまだ仲間がいるかもしれませんが、それでも戦力の差は絶望的です。
フラストレーションの溜まっていた民衆は、それまでの怒りを爆発させるかのように、傭兵団に襲い掛かりました。
先ほどケンカしていた二人組も、今は共に手を取り合って戦っています。
「ご、ごめんなさい。もうやめてください」
一瞬の内に決着がつきました。もはや戦いですらないただの蹂躙です。
縛り上げられ、ぼこぼこに顔を腫らした傭兵団が、必死に許しを請います。
「こいつら、どうしますか?」
どうしましょうと私に聞かれても、そうですね……。
正直、敵対関係と言うだけで、私自身は彼らに何の恨みは無いのですが……。
そうだ。ここは、彼らの流儀でいきましょう。
やめてくださいと言われたら。
「もっと可愛がってあげてください」
共通の敵を再度認識したことで、彼らの中の諍いも少しは緩和されたはずです。
私は村長に話し、一晩村の近くで野営をする許可を頂きました。
王都までの道のりも、もう半分と言った所でしょうか。
ただ歩いて王都へ向かうだけでも、問題は山積みでした。
何万という人が集まれば、当然諍いは起こります。
最初の頃は「打倒王家!」と叫んでいたものの、時間が経つにつれ、段々と無言になっていきました。
「おい、てめぇ何しやがんだ!!!」
「そっちから仕掛けてきたんだろ! やんのか!?」
私は頭を抱えました。
一度ケンカが起こるたびに、行進を中断し、仲裁をしなければなりません。
小さな溝かもしれませんが、ほうっておけば、それはやがて大きな溝となります。
所々で大小のグループや、派閥のようなものが出来上がったりと、少しづつですが皆の心がバラバラになっていく感覚を覚えます。
王家に対する恨みは、皆一緒なはずなのに……。
今の所、国の軍と衝突はありません。本来は無駄な血が流れずに済んだと喜ぶべきことなのですが……はぁ。
このまま、何も大きな問題が起こらなければ良いのですが。
段々と日が沈み始め、野営する場所を探していた時でした。
少々寂れた感じの村が見えて来たのです。
地図と照らし合わせてみますが、その村は地図にはありません。
地図に無い村というのは怪しいです。ですが、ここ数日は野営続き。
鍛え上げた軍人ならいざ知らず、元は一般市民。皆少なからずストレスを抱えてきている頃です。
ここで一度村に立ち寄り、人の営みに触れる。それだけでもストレスはいくらか和らぐでしょう。
ですが、もし、ここで誰かが強盗などを犯した場合、きっと他の者も続いてしまう……。
そんな事をしたら、私達は義勇軍から暴徒になってしまいます。コントロールの効かなくなった暴徒は、やがて他の町や村を襲ってしまう。
その時は、私達の手で彼らに処罰をくださなければならなくなります。
「リカルド様。今晩はあそこに見える村で野営をしたいと思うのですが、如何でしょうか?」
「そうだね。賢い君なら分かってると思うが、もし何か起きれば一瞬で暴徒と化してしまうだろう。彼らが変な真似をしないか、入念に目を光らせよう」
私達は村の入り口まで来ましたが、何やら様子は変です。
「や、やめてください!」
「おうおう、姉ちゃん、俺らが誰か分かってんのか? 国から雇われた傭兵団様だぞ?」
「やめてください? 違うだろ? もっと可愛がってくださいだろ?」
助けを求めるような声と、卑下た声。
もはや見なくても状況が理解できます。
「何をしているのですか!」
急いで声のする方へ向かうと、数十人の男グループが女性の腕を掴んでいる所でした。
「ヒュー。こいつは上玉じゃねぇか。姉ちゃんもこっちに来て俺らの相手してくれよ。へっへっへ」
「こっちは男が沢山居るからよりどりみどりだぜ?」
彼らはうす汚れた武具を身にまとい、不快になるようなゲスな笑みを浮かべた男達でした。
「先ほど、国から雇われた傭兵団と言っていましたよね?」
「おう。そうだぜ! へっへっへ、相手する気になってくれたか?」
「そうですね。国に雇われた傭兵団でしたら、お相手するしかありませんね」
ええ、貴方たち全員でお相手してもらいましょう。
民のストレス発散の為にですが!
「皆の者! 彼らは国から雇われた傭兵団。我々の敵だ!」
ウオオオオオォォォォォォォッ!!!!
私が叫ぶと同時に、地響きと雄たけびが轟きました。
「ヒィッ、なんだこいつら!?」
彼らが恐れるのは無理もありません。傭兵団を囲む民衆、その数は数万に及びます。
対する傭兵団は、50人にも満たない数です。もしかしたら村の中にまだ仲間がいるかもしれませんが、それでも戦力の差は絶望的です。
フラストレーションの溜まっていた民衆は、それまでの怒りを爆発させるかのように、傭兵団に襲い掛かりました。
先ほどケンカしていた二人組も、今は共に手を取り合って戦っています。
「ご、ごめんなさい。もうやめてください」
一瞬の内に決着がつきました。もはや戦いですらないただの蹂躙です。
縛り上げられ、ぼこぼこに顔を腫らした傭兵団が、必死に許しを請います。
「こいつら、どうしますか?」
どうしましょうと私に聞かれても、そうですね……。
正直、敵対関係と言うだけで、私自身は彼らに何の恨みは無いのですが……。
そうだ。ここは、彼らの流儀でいきましょう。
やめてくださいと言われたら。
「もっと可愛がってあげてください」
共通の敵を再度認識したことで、彼らの中の諍いも少しは緩和されたはずです。
私は村長に話し、一晩村の近くで野営をする許可を頂きました。
0
お気に入りに追加
1,400
あなたにおすすめの小説
漫画の寝取り竿役に転生して真面目に生きようとしたのに、なぜかエッチな巨乳ヒロインがぐいぐい攻めてくるんだけど?
みずがめ
恋愛
目が覚めたら読んだことのあるエロ漫画の最低寝取り野郎になっていた。
なんでよりによってこんな悪役に転生してしまったんだ。最初はそう落ち込んだが、よく考えれば若いチートボディを手に入れて学生時代をやり直せる。
身体の持ち主が悪人なら意識を乗っ取ったことに心を痛める必要はない。俺がヒロインを寝取りさえしなければ、主人公は精神崩壊することなくハッピーエンドを迎えるだろう。
一時の快楽に身を委ねて他人の人生を狂わせるだなんて、そんな責任を負いたくはない。ここが現実である以上、NTRする気にはなれなかった。メインヒロインとは適切な距離を保っていこう。俺自身がお天道様の下で青春を送るために、そう固く決意した。
……なのになぜ、俺はヒロインに誘惑されているんだ?
※他サイトでも掲載しています。
※表紙や作中イラストは、AIイラストレーターのおしつじさん(https://twitter.com/your_shitsuji)に外注契約を通して作成していただきました。おしつじさんのAIイラストはすべて商用利用が認められたものを使用しており、また「小説活動に関する利用許諾」を許可していただいています。
夜明け前 ~婚約破棄から始まる運命の恋~
冴條玲
恋愛
オプスキュリテ公国の第二公子ガゼルは、すべてに恵まれたような白馬の王子様。
けれど、大帝国の皇女様にその美貌を見初められ、婚約を強いられ、初恋の少女エトランジュとは引き裂かれてしまう。
十年後、帝国側からの婚約破棄に、ほっとしたのも束の間。
ようやく再会したエトランジュと結ばれるチャンスは、再会からわずか数日。
手が届かない世界に旅立ってしまう直前のエトランジュ、そうとは知らないガゼルは――
**――*――**
『悪役令嬢と十三霊の神々』シリーズの次世代編です。平和な世界で繰り広げられる乙女ゲーム。
世の中に 絶えて桜の なかりせば
春の心は のどけからまし
世界は平和でも、人の心まで平和だとは限らないようです。
短編まとめ
あるのーる
BL
大体10000字前後で完結する話のまとめです。こちらは比較的明るめな話をまとめています。
基本的には1タイトル(題名付き傾向~(完)の付いた話まで)で区切られていますが、同じ系統で別の話があったり続きがあったりもします。その為更新順と並び順が違う場合やあまりに話数が増えたら別作品にまとめなおす可能性があります。よろしくお願いします。
義妹を溺愛するクズ王太子達のせいで国が滅びそうなので、ヒロインは義妹と愉快な仲間達と共にクズ達を容赦なく潰す事としました
やみなべ
恋愛
<最終話まで執筆済。毎日1話更新。完結保障有>
フランクフルト王国の辺境伯令嬢アーデルは王家からほぼ選択肢のない一方的な命令でクズな王太子デルフリと婚約を結ばされた。
アーデル自身は様々な政治的背景を理解した上で政略結婚を受け入れるも、クズは可愛げのないアーデルではなく天真爛漫な義妹のクラーラを溺愛する。
貴族令嬢達も田舎娘が無理やり王太子妃の座を奪い取ったと勘違いし、事あるごとにアーデルを侮辱。いつしか社交界でアーデルは『悪役令嬢』と称され、義姉から虐げられるクラーラこそが王太子妃に相応しいっとささやかれ始める。
そんな四面楚歌な中でアーデルはパーティー会場内でクズから冤罪の後に婚約破棄宣言。義妹に全てを奪われるという、味方が誰一人居ない幸薄い悪役令嬢系ヒロインの悲劇っと思いきや……
蓋を開ければ、超人のようなつよつよヒロインがお義姉ちゃん大好きっ子な義妹を筆頭とした愉快な仲間達と共にクズ達をぺんぺん草一本生えないぐらい徹底的に叩き潰す蹂躙劇だった。
もっとも、現実は小説より奇とはよく言ったもの。
「アーデル!!貴様、クラーラをどこにやった!!」
「…………はぁ?」
断罪劇直前にアーデル陣営であったはずのクラーラが突如行方をくらますという、ヒロインの予想外な展開ばかりが続いたせいで結果論での蹂躙劇だったのである。
義妹はなぜ消えたのか……?
ヒロインは無事にクズ王太子達をざまぁできるのか……?
義妹の隠された真実を知ったクズが取った選択肢は……?
そして、不穏なタグだらけなざまぁの正体とは……?
そんなお話となる予定です。
残虐描写もそれなりにある上、クズの末路は『ざまぁ』なんて言葉では済まない『ざまぁを超えるざまぁ』というか……
これ以上のひどい目ってないのではと思うぐらいの『限界突破に挑戦したざまぁ』という『稀にみる酷いざまぁ』な展開となっているので、そういうのが苦手な方はご注意ください。
逆に三度の飯よりざまぁ劇が大好きなドS読者様なら……
多分、期待に添えれる……かも?
※ このお話は『いつか桜の木の下で』の約120年後の隣国が舞台です。向こうを読んでればにやりと察せられる程度の繋がりしか持たせてないので、これ単体でも十分楽しめる内容にしてます。
どうせ結末は変わらないのだと開き直ってみましたら
風見ゆうみ
恋愛
「もう、無理です!」
伯爵令嬢である私、アンナ・ディストリーは屋根裏部屋で叫びました。
男の子がほしかったのに生まれたのが私だったという理由で家族から嫌われていた私は、密かに好きな人だった伯爵令息であるエイン様の元に嫁いだその日に、エイン様と実の姉のミルーナに殺されてしまいます。
それからはなぜか、殺されては子どもの頃に巻き戻るを繰り返し、今回で11回目の人生です。
何をやっても同じ結末なら抗うことはやめて、開き直って生きていきましょう。
そう考えた私は、姉の機嫌を損ねないように目立たずに生きていくことをやめ、学園生活を楽しむことに。
学期末のテストで1位になったことで、姉の怒りを買ってしまい、なんと婚約を解消させられることに!
これで死なずにすむのでは!?
ウキウキしていた私の前に元婚約者のエイン様が現れ――
あなたへの愛情なんてとっくに消え去っているんですが?
浮気疑惑でオナホ扱い♡
掌
恋愛
穏和系執着高身長男子な「ソレル」が、恋人である無愛想系爆乳低身長女子の「アネモネ」から浮気未遂の報告を聞いてしまい、天然サドのブチギレセックスでとことん体格差わからせスケベに持ち込む話。最後はラブラブです。
コミッションにて執筆させていただいた作品で、キャラクターのお名前は変更しておりますが世界観やキャラ設定の著作はご依頼主様に帰属いたします。ありがとうございました!
・web拍手
http://bit.ly/38kXFb0
・X垢
https://twitter.com/show1write
「こんな横取り女いるわけないじゃん」と笑っていた俺、転生先で横取り女の被害に遭ったけど、新しい婚約者が最高すぎた。
古森きり
恋愛
SNSで見かけるいわゆる『女性向けザマア』のマンガを見ながら「こんな典型的な横取り女いるわけないじゃん」と笑っていた俺、転生先で貧乏令嬢になったら典型的な横取り女の被害に遭う。
まあ、婚約者が前世と同じ性別なので無理~と思ってたから別にこのまま独身でいいや~と呑気に思っていた俺だが、新しい婚約者は心が男の俺も惚れちゃう超エリートイケメン。
ああ、俺……この人の子どもなら産みたい、かも。
ノベプラに読み直しナッシング書き溜め中。
小説家になろう、カクヨム、アルファポリス、ベリカフェ、魔法iらんどに掲載予定。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる